本拠地でのタイガース戦。試合前にスコアボード横のモニターに、イチローの過去6年半にわたる活躍を紹介するビデオが流れた。最後に「イチローは2012年までマリナーズの選手です」と表示されると場内から大拍手。それに合わせてイチローが現れると、ファンは総立ちとなった。
「あんなに喜んでもらったらうれしい」。帽子を取って声援に応えると、深々と頭を下げた。
マリナーズと新たに来季から5年契約を結んだ。金額など詳細は明らかにされていないが、AP通信などは総額9000万ドル、500万ドルの契約ボーナス分も含むと年平均1800万ドルの大型契約と報じた。今季で4年契約が終わり注目されていたその去就。球団史上最高、また日本選手では06年から4年5200万ドル(年平均1300万ドル)を結んだヤンキース・松井秀喜外野手(33)を抜き最高。大リーグ全体でも年平均では史上5位という高い評価でシーズン半ばで異例の契約更新をした。
試合前の会見では、大きな決断を終えてイチローはすっきりとした表情で臨んだ。「アウエーのファンが『来年はうちのチームに来てくれ』と言ってくれたんですね。正直、心が動いた時期もありました。『日本に戻ってくれ』ともたくさん聞きました。でも、最終的には、『シアトルに残ってくれ、来年も』という声が僕にとっては一番重かった」。残留を決意した最大の理由を地元ファンの存在、と説明した。
来季から5年間、イチローは今と同じようにチームを先頭で率いていく。契約満了時には39歳。むろん、イチローは今の実力を維持する自信はある。「パフォーマンスに関してはもちろん、その自信があります」
続けてオリオールズでデビューから引退までプレーを続けたカル・リプケン氏(46)のように、一つのチームで全うすることの素晴らしさをこう例えた。
「そういう選手はアメリカでは少ない。茶髪の人が増えた中で黒髪が美しく見えるように、僕には彼らがすごく格好良く見えた」
生涯マリナーズ。天才が大きな決断を下した。