同病の方が、秋田大学の最新のヘパリン研究についての記事をシェアしてくださいました。

ありがとうございます😊


読んでいるうちに、
「そういえば秋田大学、好酸球研究をたくさん発表してるよな?」


と思い、あれこれ検索。
すると私は案の定、寄り道を始めました。


辿り着いたのが、今年5月に発表されたC5a研究です。


そして論文を掘り始める。

ええ。
突きつめないと気が済まない性分です。

ご興味のある方は、よかったらお付き合いください。

なお、長いです。



今回の研究で注目されていたのが
C5a(シーファイブエー)」という物質です。


最初に見た時は、
「また難しそうなアルファベットが出てきた…なんなんだ?」
というのが感想でした。


ところが調べてみると、これがなかなか興味深い。


好酸球性副鼻腔炎は、これまでIL-5などのサイトカインが好酸球を活性化して起こる病気として研究が進められてきました。


一方、今回の研究では、補体系という生体防御システムから生まれる「C5a」が、好酸球をさらに暴走させる重要な役割を担っている可能性が示されました。


C5aはサイトカインではありません。


もともと体内に存在する「補体」というタンパク質が分解されてできる、小さなタンパク質の断片です。


例えるなら、

「敵襲だー!全員集合!」

と叫ぶ緊急放送のようなもの。


この放送を聞いた好酸球たちは炎症の現場へ集まり、さらにIL-5などの刺激が加わることで、より興奮した状態になります。



今回の研究で注目されたのは、その先です。


興奮しすぎた好酸球は、「ETosis(エトーシス)」という特殊な細胞死を起こします。

簡単に言うと、自爆です。

しかも静かに死ぬのではなく、自分のDNAや顆粒タンパク質を周囲に放出しながら散っていきます。


その結果、DNAの網のような構造が作られ、そこへ粘液やフィブリン(血液を固める成分)が絡みつくことで、粘り気の強い粘液や鼻茸形成につながると考えられています。


エトーシスそのものは以前から知られていました。


好酸球が自爆し、その残骸が病気を悪化させる。


この部分については、実はそれほど驚きではありませんでした。


今回私が興味を持ったのは、その引き金としてC5aが関与している可能性が示されたことです。



もう一つ興味深かったのは、好酸球性副鼻腔炎の見え方そのものが少し変わるかもしれないことです。


これまで好酸球性副鼻腔炎は、IL-4、IL-5、IL-13といったTh2サイトカインが中心となって起こる病気として研究が進められてきました。
  

実際、デュピクセントやヌーカラなどの生物学的製剤は、この経路を標的にしています。


しかし今回の研究は、それだけでは説明できない病態が存在する可能性を示しています。
 

つまり好酸球性副鼻腔炎は、

Th2サイトカインだけの病気
ではなく、

補体系(C5a)まで巻き込んだ病気
なのかもしれない。

そう考えると、生物学的製剤で十分な効果が得られない患者さんがいる理由についても、新たな視点が生まれてくるように思いました。



そしてもう一つ。

論文では、このC5aーエトーシス経路がステロイド抵抗性に関わっている可能性にも触れられていました。


ここも個人的にとても興味深く感じました。


プレドニンはもう2〜3年飲んでいないので記憶が曖昧ですが、私はリンデロン点鼻を使っている時でも鼻の痛みは残ることがあります。


鼻カメラで診てもらうと、
「粘膜はきれいですね✨️」
と言われる。


確かにステロイドで炎症は抑えられているのだと思います。


でも、自分の感覚としては、

「何かがまだ続いている」 

そんな違和感がありました。


鼻が痛む度に私は

「エトーシスが起きているのかもしれん…。好酸球自爆しよるよね?」

と思っていましたが、今回の論文を読んで、C5aーエトーシス経路という考え方が、その感覚と少し重なるような気がしました。


もちろん私の症状だけで説明できる話ではありませんし、あくまで個人的な感想です。
 

ただ、
「炎症を抑える」 

ことと、

「エトーシスを止める」

ことは、必ずしも同じではないのかもしれません。



そして論文を読みながら、もう一つ思ったことがあります。


こういう基礎研究を見るたびに、

「実用化される頃には私はおばあちゃんになっとるやんか🥲」

と思うのです。


新薬開発には10年以上かかることも珍しくありません。


ところが今回は少し話が違います。


どうやらC5aの働きを抑える薬は、すでに別の病気の領域で開発されています。


ANCA関連血管炎などで使用されているC5a受容体阻害薬や、開発中の抗C5a抗体です。


つまり今回の研究は、
まったく新しい薬をゼロから作る話ではなく、

すでに存在する薬を好酸球性副鼻腔炎にも応用できないか?

という可能性につながる研究でもあります。


医学の世界では、こうした既存薬の新しい使い道を探すことを「ドラッグリポジショニング」と呼ぶそうです。


もちろん、まだ基礎研究の段階です。
すぐに治療へ結びつくわけではありません。
 
それでも、

好酸球が悪い

で終わるのではなく、

好酸球を暴走させている共犯者は誰なのか

という視点で病気を見ると、また違った景色が見えてきます。



今回の研究は、その共犯者候補としてC5aにスポットライトを当てた研究なのかもしれません。


そしてもし本当にC5aが重要な役割を担っているのなら。


いつか、

「ステロイドが効かない」
 

「効いている間はいいけれど、減らすとまた悪化する」


「生物学的製剤でも十分ではない


そんな患者さんに向けた、新しい選択肢が生まれる日が来るのかもしれません。

研究者の皆さんには、ただただ頭が下がるばかりです。



 おわりに


こうして最近の研究を眺めていると、少し面白いことに気付きます。
 

秋田大学が今年発表した2つの研究は、実は違う方向から同じ病気にアプローチしています。


5月21日に発表されたC5a研究は、
「そもそも好酸球にエトーシス(自爆)を起こさせないためにはどうするか」という、新たな治療標的につながる研究。


一方、6月19日に発表されたヘパリン類の研究は、
「すでに好酸球が自爆し、カチカチのネバネバになってしまった粘液をどうほぐすか」という、より直接的な治療につながる研究です。

作らせない。
そして、できてしまったものは片付ける。


同じ病気を違う角度から見ているのが興味深いところです。


さらに福井大学からは、好酸球性副鼻腔炎患者の約2割で「アルテルナリア」というカビが検出され、その患者群では術後再発率が高いという報告も出ています。

なぜ再発する人としない人がいるのか。なぜ同じ病気でも経過が違うのか。

そんな疑問に対して、少しずつ答えが見つかり始めているように感じます。


興味深いです。
とても。

こうして研究を続けてくださる先生方がおられることは、本当に心強く感じます。


私たち患者は、
「なんで再発するん?」
「なんで今日は匂うん?」
「なんで昨日まで平気だったのに急に詰まるん?」

と、日々鼻に振り回されています。

そんな謎だらけの世界に、研究者の先生方が少しずつ灯りをつけてくれている。

犯人は好酸球なのか。
ネバネバ野郎なのか。
カビなのか。
それともC5aなのか。

今のところ全員ちょっと怪しい。

でも、こうして一つずつ捜査が進んでいるのを見ると、未来は案外明るいのかもしれません。

なお私は論文を読み終えた後、鼻の奥で何かが痛み始めたので、

「おいC5a、お前か?それともアルテルナリアか?」

と思いながら鼻うがいをしました。