■映画見てから小説■

 「ウィッシュ」は典型的《風刺/スクリューボール・ コメディ(奇妙な事件で予想不可能な展開に笑う)》―展開早く、それに輪をかけて超ハイテーションなマグニフィコに飲まれて、各人物の言動を吟味する余裕もなく、アーシャたちの王への態度に不条理感感じながら劇場を後にするー

 マグニフィコ王のセリフ一つ一つに潜む、過去への思いと誰も成し遂げられない尊き理想が、映画のムードと彼のアクの強さでかき消されてしまいますーそこで、小説の登場。

 小説では、ゆっくり物語を感じながら読んでいけるので、この作品の登場人物たちのおかしさに気づきます。

 

■マグニフィコ王とロサス市民の関係■

 この関係は、私からすると日本アニメ第1号「鉄腕アトム」の《ロボット市長》に、感じられます。

 

 《ロボット市長》とは

【ロボット市長に招待されるアトム兄妹ー市長は、市民がロボットを尊敬しないと言ったり、調子が悪いのを気遣う女性秘書に手を挙げるなどおかしいのに、市民は全く市長を疑う所が市長に対して無礼と、アトムたちに歯向かうー結局、市長が壊れて倒れた時に市民はやっと市長が狂っていた事に気づく】

という物で、まさにロサス市民は王に頼る余り判断ができなくなり、王が完全に闇落ちしたのを見てやっと目を覚ますーアトムの方はロボットだったのですが、マグニフィコ王は人-自分たちが王を追い込んだのも気づかず、アーシャに付いて行ってしまいました。

 ロサス市民をそこまでしてしまったのがマグニフィコ王本人・・・《人々の願いを叶う》為に、長年魔術修業をした王は、《叶えられない願いを抱える苦しみ》を取り除くために、願いを持っていた事すら忘れさせていたのが仇にー《叶えらない願いなら自分で頑張る》と、アーシャが叶う気のない願いをため込む王に対して抗議していましたが、王はその頑張る思考すら奪っていたために、ロサスの人たちは王に立ちつくアーシャに傾いてしまった、と思います。

 スターも、全くの《トリックスター》という立ち位置―そう、マグニフィコ王はこのスターで人生踏み外してしまったのです・・・

 

■マグニフィコ王の苦悩■

 マグニフィコ王も賊に国と家族を壊された被害者で、その経験で彼は消しようもない大きな闇を抱えー魔術修業で各国をめぐる中で、様々な願いや苦しみを持つ民を見て、《誰でも安心して暮らせる国造り》の理想を持つようになったのではないでしょうかー 

 そのために、妻と共に辿り着いたロサス島を整え、来る人には住宅と仕事を与え、困っていれば手を差し伸ばし、助けて続けていたのでしょうーそうでなければ、建国10年も経たない内に、あんな大きな都市にはならないでしょうから・・・マグニフィコ王は気付いていなかったかもしれませんが、ロサス王国はまさに福祉国家で、アーシャの友達で最年少が13歳なのに宮仕えをしていて、地下に秘密の部屋造っても注意する大人もいなく、完全子供たちで切り盛りしているのはすごいです。

 一つは、マグニフィコ王の妻が大変市民を思っているので、もしかして王妃主導で内政―社会福祉がなされているかもしれませんが、それでも王の度量の深さはすごいです。

 だからこそ、裏切り者や自分の政に不満を持つ市民に怒りを持つのは、当然だと思いますーまさに、《恩を仇で返された》最後―本当に感謝の一言もないアーシャと市民⚓

 事が収まり、王妃が女王として王国を切り盛りしていますが、それができるようにしたのは紛れもなくマグニフィコ王ですけどーー王妃も、王が集めた魔導書を諳んじて、多少魔法使えるそうで💦

 

■マグニフィコ王:ディズニー版リチャード3世?!■

 こうなったら、アーシャが「ロストキング」してほしいーまじ、そんな有様なマグニフィコ王💦

 このままだと、本気にひどいーマグニフィコ王も理想に燃える御仁だったのに、余りに色々経験して闇が深くなってしまったのですね(´;ω;`)。
 もしかして、マグニフィコ王はディズニーでは珍しい《理想を追いかけすぎて理性を見失った》悪役?