再生速度を0.75、字幕形式はカジュアルで視聴―これは、翌年に劇場公開を控える連続活劇映画に合わせて、1935年(昭和10年)4月22日~10月26日まで全26話放送―タブロイド紙の毎週日曜に掲載される32頁の原作をドラマ化し、ゴードン一行が地球に戻りゴードンとデールの結婚した所で終了。

 その後、週4日形式の全60話でアトランティスでの冒険が翌年2月6日まで放送され、1966年(昭和41年)にオーディオラジオで新作2本が発表、

 

1,1~2話までの粗筋

1話「惑星モンゴで」

 謎の惑星接近により、ゴードンが乗る旅客機は乱気流に巻き込まれ、乗り合わせたデールと落下傘で脱出するが、見知らぬ土地に降りてしまう。

二人は、近くにある鉄塔に助けを求めに行くと、そこにいたザルコフにスパイだと勘ぐられる。

 ザルコフに、

「未知の惑星接近で地球は危機に陥っている。そのために、接近する惑星を調査行かねばならない」

と、二人をロケットに載せて出立。

 目的地に到着すると、奇妙な兵士らによって、その惑星―モンゴの支配者《無慈悲な》ミン皇帝の前に連れていかれる。

 ミンはゴードンに猿人や近衛兵をけしかけて、彼を殺そうとするがミンの娘オーラが割り込み、ゴードンをロケットカーで逃がそうとする。

 ゴードンはデールを助けるというも、オーラは私を愛するか死ぬかと脅迫―やもえずゴードン、その場は脱出を選んだ。

 宮殿に残されたデール,ミンに妻になれと詰められていた所で。ライオン族の円盤が急襲―ゴードンもそれに巻き込まれる。

 そこでゴードン、ライオン族のトゥーン王子と出会うートゥーンは、彼をミンの手下かと思っていたが、ミンから女友人を助けようと事情を知り、盟友として受け入れる。トゥーンの手引きで、宮殿の秘密通路から玉座の間にある偶像の後ろに来たゴードンーそこで、ミンがデールと結婚式を挙げようとするのを見る。

 ゴードン、デールを助けてオーラと共に偶像の下ある螺旋トンネルで地下湖に落ちる。

水泳のチャンピオンだったゴードン、何とか岸まで辿り着く。

2話「植物と地球人の戦い」

 ゴードンらが辿り着いた所にバリンーモンゴの独裁者ミンと戦っていると知り同盟を組み、オーラも父の元に戻りたいと申し出る。

 バリンら、ドリル戦車でミンの宮殿に突入するも、全てはミンのお見通しーまたミンの手に落ちたゴードンは、狭い板の上で目隠ししてバリンとムチの打ち合いするようミンに強制され、二人は板から落ち下に群がる猛獣の餌食になりかかる。

 バリン、ゴードンに助けられ、彼を認め直す。

 その頃、またデールを手に入れたミンーまた結婚式を執り行うとすると、神像からそれを承諾しない声がしたー大司祭は、その声に恐れるとミンはそれはトリックだと怒り、その場で大司祭を殺してしまう。

 それを見たデールはミンの無慈悲さをなじると、ミンは鳥人間の刑務所都市で妃としての行儀見習いして来いという。

 

2,登場人物で一人変人扱いされたザルコフ

 ひたすら含み笑いしながら困惑するゴードンらを惑星モンゴに連れていく、初登場はその後の様々な版では一番酷いモノで―翌年の連続活劇映画版では、緊急事態なのにゴードンの父親に調査計画を却下され、その責を息子であるゴードンに求める使命感に燃える科学者として描かれていました。

 しかし、このラジオ版はこれまでのザルコフ像では一番酷い(´;ω;`)。

 次回では、ゴードンの口により地球最高峰の科学者と紹介されるも。よく分らない扱いをされるザルコフさんでした(;´Д`)。

 

3,連続活劇映画よりもはるかに残忍で陰湿なミン

 翌年公開された映画ではおっとりとした演技をしたミドルトンさんよりも、遥か陰湿でBGMが相まってエキゾチックに描かれています。

 ゴードンの英語版Wikipediaでも、原作のミンはフーマンチューがモデルとありましたが、後に映画版2作目「火星への旅」での悪魔的スタイルと、最終作の軍服姿が定着したようです。

 この初のメディアミックスは、連載開始間もない原作を基にしていますので当時の米国が色濃く出ていますー当時の世情を知らない世代や、原作に振れた事ない人にとっては、このラジオ版は原作が描かれる時代背景を知るのに大いに役立ちますーその分、当時フーマンチューを代表とする米国大衆文化で描かれる東洋人悪役史も調べないと、掴めにくいというのもありますーその点では、フーマンチューと《無慈悲な》ミンがその中心核で、この二人を軸に調べていけば米国人の東洋像が見えてくると思います。

 

4,極めてオリエンタル情感あふれるBGM

 ラジオ版は、後の映画版以上に《アラビアンナイト》的エキゾチックなBGMでミンを表現していますが、こちらは極めて中国とインド風といった感です。

 ですが、ここでのBGMは映画版に影響与えてもいます。

 

 この後の映画版が、その後のメディアミックスと原作漫画に影響与える事になりますが、語り口や展開はやはりこのラジオ版が基盤になっているように感じます。