■「フラッシュ・ゴードン」第3期放送時期
3期目(1996年)は、原作の新聞漫画連載開始(1934年)から62年、TVアニメシリーズ開始(1979年)から17年-と中途半端な時期に放送されました。それについては、原作本国である米国Wikipediaでも触れられておらず、米国でもどうしてそんな時期に放送されたのか、不明のようです。
ただ、主人公フラッシュ・ゴードンにはこのシリーズのみ、アレックスという名がつけられていて、それは原作者アレックス・レイモンドにちなんでなのかも定かではありません。
ところが、劇中でミンの娘オーラの
『私が16になった時にお母さんがいなくなった』
というセリフがあります。
このセルフからすると、彼女の年齢はその時点で16となります-そこから放送年数で計算すると、1980年になります-その年は、あのクィーンが主題歌を歌って話題になった実写版映画が放映された年と一致します。
まぁ、第3期とは関係ないかもしれませんが、オーラが生まれたのと実写版映画公開された年が一致するのは、中途半端な周期で放送開始された第3期にしては不思議な気がします。
■これまでの「フラッシュ・ゴードン」物とは全く毛色の違う作風
「フラッシュ・ゴードン」といえば、
【地球侵略しようとするモンゴの支配者ミンに対して、地球の勇敢な若者フラッシュ・ゴードンがザルコフ博士と新聞記者デールと共に、モンゴで見つけた仲間たちと立ち向かう】
というのが定番の筋書きでしたが、以前にも書いたようにミンには【残忍なミン】という名があり、彼には欧米人が思うマイナスの東洋像がそのまま体言化したようなキャラで、舞台になる惑星モンゴですら西洋的東洋像で描かれていると、よく指摘されていました。
そのため、映像・漫画リメイクの際にはそれらを排除する配慮がなされてはいましたが、この3期目以外はそれを意識過ぎてか、逆に強調してしまう結果となってしまいましたーそのために、アニメシリーズでは最終作となるこの第3期目で大きな変更がなされました。
1、主人公ゴードンとデールは、ティーンエイジャーのスケボー好きの若者
2、ミンには妻がいて、極めて愛妻家で娘想い
とはいえ、こちらのミンも【容赦ない】【無慈悲の】と呼ばれ、反抗する者には容赦なく攻撃する-と、冒頭の展開はそれまでのを踏襲はしています。
しかし、初回からミンの娘オーラが父の行動に反対し、突然やって来たゴードンらを助けます-それ以降、彼女は必ず父親ミンに反抗してゴードンらに助力する展開が、大半を占めるようになります。
ミン自体、2話目でヒューマン種の奥さんがいて、彼女を求めて地球を目指す事を独白する場面があります-しかし、その時手にした鼻を握りつぶしたので、奥さんに逃げられたような様子-話数が進む中で、オーラの口で
『平和を愛する母は、(武力での支配する)父に反対していた』
という思いがけない話がなされ、ミンも
『オーラが妻に似ている』
とその話が出た回で独白しています。
回を追うごとに、ミンの事情に話が大きく割かれ、ゴードンらがそれに関わるようになります。
ゴードンらも当初-
『この星の風習は理解できない』
と、あくまで部外者としての立ち振る舞いをするも、敵であるミンの娘オーラと交流を深め、ミンの宮殿や帝都によく訪れる程に関係となっていく-【米国ヒーロー物】とは思えない、極めて情緒ある哲学的内容に驚きました。
この3期目は、【モンゴという戦国時代の星に地球人ゴードンらが迷い込み、そこの暴君ミンから民衆を助ける】という、それまでの展開と違う-敵であるミンですら手を差し伸べるゴードンの姿と、
1、ミンとオーラの関係
2、ミン側の人間関係
-の2点で、製作スタッフの想いがヒシヒシと感じられます。
■極めて難しい第3期の終わり方
3期目は、【地球に行た妻を追う】という極めて個人的で家庭事情に基づく、【地球侵攻】の準備にモンゴ崩壊一歩手前まで追い込んだ暴君ミン-元々そういう展開だったのか、展開が収拾付かなくなったのかは分かりませんが、(最終話)この後どうするんだよぉ、この話?(´;ω;`)】と視聴者が感じてしまう程の終わり方をしています。
実際、2シーズン目からはゴードンらはオーラとの関係を深め、ミンとその家臣の逆境すらも救ったりもしています。
その展開だと、お互い和解して皆で地球を目指して尽力し、ミンもめでたく奥さんと巡り合い、ハッピーエンドになるのですが・・・ミンのこれまでの悪行ではそれすら許されないのですか・・・そうなると、何とも侘しい話ですよね。
きっと、第3期のファンは【ミン親子とその家臣団の幸せ】を願って、毎週見ていたのではないでしょうか?
私も、先に最終話見てから初回からYouTubeで一気に見ましたが、ずっとそう思っていました。
ミンも、地球人の妻に会うまでは文字通りの暴君だったが、妻の影響で【容赦ない】【無慈悲な】という呼び名も家臣に言わせている程度の、物腰柔らかな君主になっていたような様子が、初回で感じられました-リンチ将軍も、ミン皇帝の行動に戸惑いを感じている様子を感じ取れたので。
■ミンが主役の、【戦国大河ドラマ】第3期
―と思う程です。
ミンが完全に悪役に徹してゴードンらと戦うのは殆どなく、家臣と娘の裏切りに振り回される殿様と言った感じで、典型的米国ヒーロー物的に描かれている時は情けない様子ですが、身内の裏切りに会う大河ドラマ的展開では極めて感傷的でパワフルな姿を見せます-
大河ドラマ的展開の方が、ミンらしく感じられます。
第3期って、まさかゴードンとミンのダブル主役物ではないでしょうか?
日本でも、【敵同士の主役がダブル主役扱い】は珍しいですw
確かに、ミンの地球侵略の真の目的さえわかれば和解し易くなりますが、それに振り回されたモンゴの人々や、これまでの彼の行動にも許されにくい部分が大きすぎますので、やはり難しいですよねーやはりミンの奥さんが最重要なキャラですよね。
なぜ彼女を出さなかったのでしょうか?―それが不思議・・・