仏SFアニメ映画「ファンタスティック・プラネット(ラ・プラネット・ソヴァージュ)」原作「オム族がいっぱい」の前作で、対になっているのではないかと思われる作品からー

④巨大な恐怖(1957年)

 20章からなる物語。

■粗筋

:2157年の地球―エンジニアで元大学水泳王者ブルーノが、仏国で休暇を取っていた時、彼の上司で工場長のベルベル人ドリスが緊急に連絡を取って来たー水が凍らなくなり、工場が倒産しかねないーその謎を解くために、著名な博物学者ルグラン博士に協力を求める。

 空港に遅れて着いたブルーノは、アルジェかマルセイユに次のロケットが寄港するのを待たなければならなかった。そこで、中国人の女性記者チェイと出会う。

 突然、空港にいる全ての人はヘリタクシーで500m上空に待機するようと、求められた。当局はすぐに、北極と南極の氷が一瞬に溶け、2つの巨大な波が発生した事を知らせた。ブルーノとチェイは、アフメドが操縦する旧式ヘリタクシーに乗り込み、災害を目のあたりにする。

 その後は、ブルーノは当局が航空輸送の全てを押さえる前に、休暇先に戻る事を決意し、工場長と友人で記者のナゼールを見つける。

 暫くして、ブルーノは大学水泳王者でエンジニアの腕を買われ、軍に入れられる。

 そして、新たな大惨事が起こるー水が蒸発しないのに、雲が消えていく。温帯諸国では作物が枯れ、人工水田がある国だけが残った。そして、UFOが各国に現われるようになった。UFOが。ブルーノとチェイがいる所を大規模に攻撃、2人は街の秘密地下に隠れ、そこでブルーノはチェイに抵抗軍の一員だと明かす。

 独立した人工水田システムにより食糧維持ができる唯一の国アフランスが、水棲動物に偽装できるスーツによる、水中作戦を準備し、水棲動物の攻撃に対する細菌攻撃を計画する。 

 敵が拘留された水族館を訪れたチェイは、偶然、彼らの磁気流入言語の鍵を見つける。

 作戦準備ができたブルーノとナゼールは、抵抗軍のメンバーと共に、敵の脳を破壊するウィルスをばらまく任務に就いたが、ブルーノは海の深みで迷い、敵の街に迷い込むーそこで敵の磁気衝撃に苦しみ、敵の捕虜になる。

 米海軍に救助されるも、彼は精神的ショックを受けていたー長らく精神治療の末、友人の深い友情とチェイの大きな愛を見る。

 

―最初に書いたように、次作「オム族がいっぱい」の対―というよりも、逆転した関係ではないかと感じます。

 中東・中国系の人々が欧米系の主人公を助ける展開は、「オム族」では逆転して敵対する立場になっていますーそれも、かなりはっきり分かる形でー

 しかし、「オム族」では極端に両者の力の差があり、主人公側はひたすら身を守る一方―それもあって、ギリギリはったりで何とか勝利を掴むも、「巨大な恐怖」同様に辛い勝利となっています。

 「巨大な恐怖」では心に深い傷を負った主人公が東洋の優しさに触れ、「オム族」では主人公テルはクルド出身でドラーグ族もオム族に対しては愛おしくしている様子は、何かウルさんの《東洋へのブレ》を感じますーそれまでは、《西洋人的目線》で描かれていたのが、この「巨大な恐怖」ではそれは崩れ、「オム族」はあくまで《西洋人の立場》でありながらも、自分たちの事も認め手を取り合って歩んでいこうという、《非西洋》への歩み寄りを感じます。

 ここで、「オム族」はこの作品の続編ではないかと、思うようになりました。

 敵はUFOを所有する水棲動物という設定は、「オム族」のドラーグ族につながります。「オム族」ラストのシンとテルの会話とも、一致しますーそうなると、ドラーグ族のオム族に対する態度にも、納得する物があります。

 今、原作「オム族がいっぱい」のif小説を作成していますが、地球人がドラーグ族にどのようにイガムに連れてこられたかー前にpixivに投稿したのをさらに掘り下げたのを書いていますが、「巨大な恐怖」を絡ませたものにしようかと考えています。

⑥過去の神殿(1957年)

 物語は、4部構成になっている。

■粗筋

:地球のロケットは、塩素緩和大気の惑星に到着―しかし、ロケットは激しく損傷し、生き残ったのはマシール隊長とラオル艦長と医学生ジュルトの3人だけだった。

 調査の結果、彼らは巨大海中動物の腹の中にいることに気付く―3人はこの状況から脱するために、彼らを飲み込んだ生物を両生類に進化させ、陸に挙げる事にした。

 医学生ジュルトが、巨大動物の正確な構造を調べるために放射能イオンを散布し、巨大動物改造の準備をした。その際に、ラオル艦長が死亡してしまう。

 肉体変化した巨大動物は、6本脚を持ち、空気を吸わざるおえなくなったー巨大動物は浜に上がるも、不慣れな歩行で塩素の海に落ちてしまう。2人は、巨大動物の左足の神経に電流をそらす事で、巨大動物を浜に留めさせることを決意。2人によって、半麻痺にされた巨大動物は、避難した水たまりから出て、岬に昇るとその一生を終える。

 そして、巨大動物の肉体は崩壊し2人はロケットと共に出られた。

 2人は浜を探査すると、トカゲの卵を見つける。2人はそのトカゲは非常に早く育ち、知性がありテレパシー能力で会話する事にすぐに気づいた。2人は、トカゲの肉体構造を改善していくと、彼らの神様となっていった。しかし、トカゲの助力も及ばず、修復されたロケットは離着台に乗せられないどころか、医学生ジュルトも事故で亡くしてしまう。

 一人取り残されたマシール隊長は、バッテリー切れに気付き、クリスタル体で冷凍睡眠に入る。

 それから一万年後―遭難メッセージを見つけた地球のロケットは、発信元を辿り塩素惑星の沼地に到着。

 そこで、寺院の形をした古代都市とトカゲを見つける。

 その聖域で、マシール隊長が眠るクリスタル体を見つける。起こされたマシール隊長は、妻の名を叫んで息絶えるー歴史家で社会学者のロベルは、マシール隊長を最後のアトランティス人であり、古代エジプトとマヤの間で文化を運んだ文明だと発表。

 

―展開が、私が好きな「火の鳥:望郷篇」を思い出させます。

 それにしても、マシール隊長の最期は、感傷的ながらも冷淡な描写に、ウルさんの凄味を感じます。

 「オム族がいっぱい」も、所々にこうした冷淡な描写があり、ぞくっとします←それに反しても、シン教授の暴れっぷりには、笑えない話なのに突っ込みたくなる衝動に駆られるのはナゼなんでしょうー教授、あなたのせいですよ、重厚なテーマなのにツッコミ入れたくなるのは!!