ピアノのレッスンを受ける前、待合室で待っていたら、レッスン室からとても上手なピアノの音が聞こえてきました。
その音に惹かれて、レッスン室のドア正面へ前へ行き、いすに腰掛けてずっと聴いていました。誰が弾いているんだろう、こんなに上手なヒトがいるなんて、普通の上手ではないな、何の曲かわからないけどものすごく難しい曲で、きっと誰かのピアノ協奏曲とかだろうと思いました。
ものすごく速い動きをしないと弾けない曲を雰囲気たっぷりにゆったり弾いているし、何よりもピアノの音が違っていて、いつものレッスンで弾いているカワイのグランドピアノの音がとっても魅力的にきこえました。こんなすごいヒトがいるなんて、どんなに練習してもとてもかなわないなと思いました。
曲が終わった後は、思わず拍手。
「すごい!」
私のレッスンが始まる5分前に、そのピアノ演奏は終了しました。
いったいどんな人が弾いていたのだろうと、ドアが開くのをじっと見ていました。
すると、中から出てきたのは、私のピアノの先生でした。
「先生だったのですか。あんまりにも素敵だったからずっと聴いていました」
と洩らすと、先生は笑顔で、
「7時になったらレッスンを始めますから、中で練習していてください」
と言ったのでした。
レッスンが始まり、先生が私の隣に腰掛けましたが、しばらくの間、じっと先生の顔を見つめてしまいました。
超リスペクトです。
レッスン中、先生はずっと声を出しています。
しゃべっているか、歌っています。
とっても楽しそうです。
この先生についていったら、いつか、リストのラカンパネラやショパンのグランデポロネーズブリリアントが弾けるようになるかなと思いました。
よし、10年くらい、レッスンを受けよう、と思いました。
この日、みてもらったのはショパンのワルツ64-2でした。
先生曰く、私の弾くピアノは「はかない」そうです。
「はかない」って「儚い」かな。
レッスン後、ピアノ発表会に弾きたい曲を聞かれました。
ムソルグスキーじゃなくてもいいと言われました。
「別れの曲か、ノクターン20のどちらかが弾けたら嬉しい」
答えると、先生はにっこりして言いました。
「両方、弾いていいよ」
この楽譜を見せたら、
「先生も同じお店でラフマニノフの楽譜を買いましたよ」
だって。
うれしい。