白馬岳登山二日目、前回の記事の続き

 白馬大池の山小屋で完食をとり、雨宿りもした。まだガスで視界が悪く、雨も降っていたが行動を再開する。白馬大池の湖畔を周回するように歩き、白馬乗鞍方面に向かう。ここは七月まで雪が残っていたようだ。今回は雪はなかったが大きな石の岩場で雨で濡れていたので慎重に歩く。15分くらい歩いたところで雨がやみ、視界がパッと晴れる。さっきの雨が嘘のように晴れている。


視界が悪く、足場が悪いと緊張しますね

数分後にはこのとおり晴れ、暑いのでシェルを脱ぐ

昔からわたしには虫が寄ってきます


 白馬乗鞍でわたしはフリーズドライのお昼ご飯を食べる(味は忘れてしまった)。細君はさっき白馬大池小屋で食べたカップヌードルでちょうど良いようだ。朝出発してから4時間半、雨に降られ、食糧をあんまり口にしていない。疲れもではじめた。この先まだ歩く。晴れているうちになにかお腹に入れておこうと思って湯を沸かす。さっきは雨降りだったが、いまは照りつける陽でひどく暑い。ごはんをさっと食べて歩きだす。正直言ってしまうとここからが辛かった。わたしは基本的に降りは得意である。膝や足の裏はあんまり痛くならない。しかし、昨日の登りで膝の裏が痛くなり、それをずっと引き継いでいた。降りで足を着地するとなかなか痛い。しかも、また雨が降り、路面は滑りやすい。ここから2時間半で下山となるわけだが、本当に嫌だった。きつかったのではなく、嫌だったのだ。嫌すぎて、何度も地図をみた。地図をみたとて何も変わらないのに。ガスで周りがわからないところで小雪渓を歩き、大きな岩の上を歩く。前を歩いている家族4人のお母さんが転ぶ。爪が割れたようだ。小学生の息子が言わんこっちゃない、と言う。わたしも気持ち的に悪態を吐きはじめた頃、目の前の地面を動く小さなものがいた。なんだろう、と思った。その瞬間、感情もなにもなく「あ、いた。」と呟く。それは雷鳥だった。わたしたちがそっと近寄っても逃げずに砂に羽をパタパタとしている。「なにをしているんだろう」とわたしは振り返ると細君はすごく嬉しそうにしている。わたしは雷鳥に向かって「なにをしているんだい雷鳥くん?」と聞いてみた。しかし、雷鳥くんはそれに答えず、少し面倒くさそうにしてお尻をこちらに向けて、また羽根をパタパタする。なるほど、毛繕いしているのかもしれない。わたしたちはそう思った。すこしすると登りの家族がやってきた。雷鳥も人間の人数が増えたからか毛繕いを終えたからかそそくさとハイマツの中へと消えて言った。わたしと細君は顔を見合わせた。なんだか嬉しそうに頷いている。それから細君はすこし興奮したように雷鳥の話をしていた。すくなくとも嫌だった歩きが雷鳥くんのおかげで楽しい歩きとなった。


こういう岩場でガスが白くなると死後の世界みたいでなんだか怖くなる

天然記念物の雷鳥


 時間をかけて降りてくると、栂池山荘の屋根が見えてくる。このとき夫婦で歓声をあげる。やっと着ついたのだ。14時10分栂池山荘到着。すこしするとわたしと同じように山荘の屋根をみて女の子のグループが大きな歓声をあげている。その女の子のグループは4人組でテント泊装備だった。みるからに体力がありそうで学生時代に山岳系のサークルにいたんじゃないかと思わせる雰囲気があった。彼女たちでさえ、白山の降りと同じくらいきつかったと話していた。

 靴の泥を洗い流し、トイレで着替えて、売店でソフトクリームを買って食べる。素直に美味しい。細君にあげるとわたしも買うというので全部あげた。細君も美味しいのだろう、すぐ食べてしまっていた。疲れた。本当に疲れた。しかし、また来たいな、登りたいなと思った。ゴンドラで栂池まで降りて、タクシーで八方バスターミナルまで行き、車で今日宿泊するペンションに行く。タクシーの運転手も穏やかないい人だった。



 エターナルフレイムというペンションでこの宿もすっかりわたしのお気に入りになった。わたしはいい!いいっ!!とずっと言っていた。夏なのに白馬は過ごしやすい気温で風も心地よく、優しい時間が流れていた。お風呂にはいり、すこし散歩をする。ごはんもすごく美味しかった。ちょうどこの日は白馬村の花火大会でわたしたちも3年ぶりの花火を楽しんだ。


 次の日、このあたりにきたら毎度行く池田町のハーブセンターでわたしのハーブ(ニホンハッカのサンビ)と知り合いのプレゼントのキューバハーブ(イエルバブエナかな)を買う。

 それから前回来た時は大雨であんまり楽しめなかった大王わさび農場に行く。お昼ごはんは信州太郎ポークのグリルをいただく。わたしはわさびが大好きでよくお肉にわさびをのせて食べるので、新鮮なわさびで食べるお肉は感動的に美味しかった。のどかなところで美味しいものやお土産も豊富にあるのでおすすめです。後日、お盆に帰省したときにアルバムをみていたら3歳くらいのわたしは家族でこの大王わさび農場に来ていた。まったく記憶がなかったけど、坂道の石の上で転んで泣いていた。その写真をわたしは昔から好きだったので、それが大王わさび農場だと知って、なんだか納得した。



緑色の植物は全部わさびです

 帰りの車の中で、細君に「今まで登った山の中でどこが一番好き?」と聞きました。「白馬!」と即答していました。やっぱり雷鳥に会えたのは嬉しかったようです。わたしも一番は白馬岳かな。


今回もGoProで撮影しました。良かったらご覧にください。