7月になりました!
なの~で
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第15章
神宮花火大会
2015年8月某日
今日は神宮花火大会だ。去年は音だけは聞こえてきてたけど、今年はなんと窓の隙間から火薬と焼き鳥の匂いが漂ってきやがった………
そしてキャットストリートの入り口ではしゃぐ若者たちの声………
泣かせるなぁ………
外に出たいなぁ………
もちろん手錠無しで………
しかも、外ではライブ的な音楽も聞こえてくるよ。
「まわれま~われメリーゴーランド♪もう決して止まらないようにっ♪………」
これ、久保田利信の「ラ・ラ・ラ・ラブソング♪」じゃん。
そういえば、1ヶ月くらい前に「花月」の
「焦がしにんにくバターしょうゆ炒飯」
の匂いも漂ってきたなぁ、
ヤバい!
マジで出たくなってきた。
火薬の匂いと、外の雑踏の音に浸り昔を思い出していると「担当さん」がピシャリと窓を閉めた。
全てがシャットアウトされた。
クソ担当め。
ちなみに、俺たち容疑者は留置場担当官のことを「担当さん」と呼びます。何か用事があれば、でかい声で「担当さ~ん」と叫けぶ。だが、再犯者や受刑経験がある方々などのベテランは「オヤジ」と呼んだりしています。
だから、年配のベテラン容疑者なんかは自分より20も30も若い担当官に「オヤジ」と言ってる、
そんなあなたもオヤジです。
話は少し飛びますが、俺はどうしてもこの「オヤジ」というフレーズが好きじゃなかった。だから、刑務所に移送になってからも刑務官には1度も「オヤジ」と言ったことは無い。なぜだろう?なんか違う感じがするからかなぁ。
ちなみに、Wordで「おやじ」を変換すると、「オヤジ」「親父」「親爺」「親仁」「親字」と出てくる。
さて、「担当さん」の話しに戻るけど、基本的に俺たち容疑者は用事がなければ居室の外へは出れない。もちろん頑丈な鍵がかけられているからもそうだし、当然中からは開けられない。なので、物事を頼むときは全て「担当さ~ん」と呼んで依頼するのだ。
例えば、寒くて服を重ね着したいときにロッカーからとってきてもらったり、あとトイレのチリ紙を補充したいときとかいろいろだ。
俺はパクられた当初これが慣れなくて何度も「番頭さ~ん」と言っていた。ノリのいい担当さんからは「おれは越後屋じゃね~し」と返ってきたこともあった。
行儀の良い容疑者なんかは「すいませ~ん」とか「おまわりさ~ん」などと叫ぶのもいるけど、担当さんの中にはそれで怒っちゃうのもいたなぁ。
「俺はおまわりじゃねぇ」
って。
あと、わざと「おまわりさん」って呼ぶジジィもいた。嫌がらせのように何度も「おまわりさん、ちょっといいですかぁ」、たいした用事じゃないのに「すいません、おまわりさん来てくれますか」とか。
心優しき「ぷくちゃん」は苦笑いしながら何度もそいつの対応をしていた。とても痛々しい光景。はたから見たらモロに介護だった。
ちなみに、俺は来月から介護士になるための専門学校に通う予定だったが、面接に落ちてしまった。
父親の痴呆がひどくなってきてるし、母親も身体的にも精神的にもヤバくなってきてるし、他を考えなければならん。
役所に介護認定申請をしたら月末に審査をする人間が自宅に来るそうだ。
なので、今はそんな感じ………
では、今日はこの辺でご勘弁を………
昨日はお出かけ&お泊りでUPできなかった………