春なので!

プレイバック

第5章

ピンクの人 その2

 

 Iさんの話しによると、彼はお店でキャバ嬢のパンティーの中にスマホを突っ込んで動画の撮影をするのが大好きらしくて、あっ間違い、スカートの中だった(笑)。ほんで、その趣味というか性癖に対する同意を俺たちに求めてきた訳よね。

みんなスカートの中を撮影しますよねぇ~

的な・・・

 こいつはかなりアホだな~(笑)

 で、そのスマホのホルダーの中には大量の生パン動画がメモリーされているらしい。

 そして事件が起きた。

 それは、大勢の人間が利用していた通勤時間のバスの中。本人いわく

トラブルに巻き込まれた

だってさ

怪しいよその言い訳け(笑)

 で、今回のキーポイントはズバリそのスマホ

 話しの続きだけど、バスの中ほどの座席に座ってスマホを膝の上に置いてたんだっ て。そしたら、いつの間にか見知らぬオネーちゃんが横に立っていたのだと。ほんで、いきなりIさんの腕を掴んで、

このおっさんチカンですぅ~、

スカートの中写メ撮ってるぅ~

と叫んだそうだ

 おいおいお~い、オネーちゃん何言うとんねんってなもんで、Iさんがビビッて瞬時に立ち上がり、バスを降りようとして掴まれたオネーちゃんの腕を振り払って猛ダッシュ。

しか~し

 運動不足のメタボ体型おじさんには基本的に瞬発力と持久力が皆無な訳で、その場で大転倒したんだと。(こいつは足腰の弱そうなかなりのデブです)

 そしてめでたく御用となった訳だ。

 ほんで、本人いわく罪名は

「傷害」

だそうな

ムム

 怪しいですね~。偽りの臭いがプンプンしますねぇ~。前談でお伝えしたとおりの典型的な怪しさですね~(笑)。

 で、なんでもそのバスを降りるときにオネーちゃんの手を振り払ったら、そのオネーちゃんの手が何かにぶつかってケガをさせたんだそうな。

ムフフ

 とって付けたような話しだな~っ、と思いつつもアイコンタクトを取りながら俺たちは一言も口を挟まずにニヤニヤしながら聞いてあげた訳ですよ。そしたら調子に乗ってペラペラぺらぺら喋るわ喋るわ、止まらないのよこの変態野郎は。

 

 とりあえずその時は不自然さ極まりない変態野郎の話しを信じてあげることにしたんだわ。

 しかしどうも納得がいかなくて、翌日Iさんが押送に行っちゃってる時にルームメイトと話したんだよね、どう考えてもありえねーよなって。そして、真実は一つだべってことになって、Iさんが帰って来たらもう一度本当のことを問い詰めようという結論になった。

 そこで、どういうふうに聞いたら本当のことをゲロするかなぁと考えてた訳だ。ど~せ僕たち暇なので(笑)

 

 で、

 まずそのバスの話しってどう考えても不自然だよな、ぜったい電車だよなっと、勝手に結論付けて、勝手にストーリを組み立てた。だって、バスに乗って座ってて普通に膝の上にスマホ乗せるかよ。電車より揺れるし、落ちやすいべ。それこそ不自然だべさ。

 ってな訳で勝手に電車だと決めつけた。

 ほんで、この留置場にパクられて入ってきたということは、現場は当然新宿駅だろう。で、何番ホーム?何番線の電車?…。

 などと推理をめぐらせ最終的に作り上げたストーリーがこれだ。

 

・電車の座席に座ってスマホを動画モードにした状態で文字通り膝の上に置いていた。そしたら運よくミニスカートのオネーちゃんもしくは、JKが目の前に立ってしまった。こりゃナイ~ス!ウキウキモードのIのさんの顔はモロに変態そのもの。そして、ふと顔を上げたら視線が合ってしまった。その時、咄嗟にオッサンの視線が膝上のスマホに瞬間移動した。不審に思った目の前のオネーちゃんはIさんに詰め寄る。「オッサンスマホでスカートの中撮ってただろ、この変態野郎!」と。ビビったIさん瞬時には立ち上がりその場から去ろうとしたが電車は満員で身動きが取れないし、次の駅はまだまだ先だ。とにかくドア付近まで移動しようとしたが、オネーちゃんに腕を掴まれてしまい前に進めない。散々の罵りを受けながらもやっとの思いでドアの前までたどり着いた時、運よく駅に到着しドアがオープン。プシューっと開いたと同時にオネーちゃんの腕を振り払い猛ダッシュしたが、そこはちょうど階段付近のドアだったた。逃げるのに夢中になって階段があることも気づかずそこでムーンウォーク。オネーちゃんとともに階段から転げ落ちてしまった。で、オネーちゃんにもケガをさせたのはもちろんのこと、もはやこの変態野郎もケガをしてワイシャツもボロボロになった。ほんで、駆け付けた駅員に取り押さえられて、ソッコーで鉄道警察が登場し、御用!

 

 間違いない、絶対そうだよねと結論付けた。じゃあ、Iさんが帰って来たら聞いてみようぜってなことになったんだわ。

 でもね、神様のイタズラが…。

 そしていつもとほぼ同じ時間に押送の連中が帰ってきた。が、Iさんは17室の目の前にあるロッカーの前でニヤニヤしながら鉄格子越しにこちらを見て頭を何度も下げる。

ムムッ!

コイツもしかしてパイかよっ!

 そして居室のドアは開くことなく、代わりにこの変態野郎のロッカーが解放され、ボロボロの洋服を抱えて、去り際に「お世話になりました」と鉄格子越しに言い放ち消えて行った。

 残された俺たちは真実を聞くこともできず、ただただフラストレーションがたまったままその夜を過ごしたのだった。

 おしまい

 結局この変態野郎の事件の真相は未だ藪の中である。

 

 では、また次回お会いしましょう。