先日アメリカで日米通算200勝を達成した、大リーグサンディエゴパドレスのダルビッシュ有投手。

YouTubeなどで投球術(特にボールの握り方)を披露するなどして、誰でも変化球は投げられるということを証明し、野球の普及に腐心し続けています。



一方で彼は他の人から吸収することを怠らない。

37歳という年齢を考え、若い頃とは違うトレーニングやコンディショニングをしないと、自分自身の変化や周囲の環境の変化(特に野球というスポーツそのものの進化)に適応できないから、というのが理由の一つです。

しかしそれ以上に、現状に甘んずることなく常にバージョンアップしていくために、自分自身と向き合うだけでなく、他の人から何かを学び取ることによって、自分の選択した方法以外にもいいやり方がないか、常にアンテナを張り巡らしています。

だから、自宅で自分の息子さんとキャッチボールするときでも、おやっと思うような球種を息子が投げればすぐにビデオ撮影する。

野球教室などで子供たちが珍しい握り方をしていてピンとくるものがあれば自分でもやってみる。



普通は子供には野球を「教える」ものですが、彼の場合は基本動作などは教えてもそれ以上のことは教えないそうです。

というより教え「られない」。

自分の体と他人の体は所詮異なるので、同じことを教えてもそのまま通用することはない、と考えるからです。

しかしだからといって、子供が珍しい握り方をしているのに自分の体とは異なるから無視するというようなことはしない。

球種を増やすために少しでも参考になる動作があれば、自分に合うかも知れないと考えて一度は試してみるのです。



自分の体と他人の体は違うと言いつつ、YouTubeなどで投球術を広めたり子供からも球の握り方を学び取ったりするのは、一見矛盾しているように思えます。

しかし基本的に彼が何のためにそうしたことをしているかというと、自分のため。

自分自身が向上するために求道者のように投球術を常に模索しているのです。

だから自分の体と他人の体が違うことは百も承知で、それでも自分に合うやり方があれば素直に取り入れる。

取り入れる相手がプロかアマかは関係ないのです。



また、YouTubeなどで投球術を広めるという行為は、実は発信しながら自身の頭の整理をしている(私自身もブログを書きながら頭の整理をしていますし、実際整理に役に立っています)。

人の役に立つことをしながら同時に自分の利益にもなっている。

他人からも学べるし、自分自身の頭の整理をすることによって自分でも学べる、というわけです。



自分自身の試行錯誤と他人から学ぶこととの積み重ねによって自分自身の方法論を編み出していくわけで、彼はそれをインプット・アウトプットの両面から実践することによって「学び方」を世界に示しているわけです。

だから同じことを他の人もすれば多彩な変化球を投げることはできる。

研究熱心な彼が100種類以上とも言われる球種を持っているのは、そう考えてくると当然の結果とも言えるわけです。



広く心を開いて誰からでも学ぶ姿勢を持っていれば、いくらでも向上できる、ダルビッシュ投手は身をもってそのことを示してくれています。