介護の仕事で気をつけたいのが転倒である。そのためには高齢者の歩行の特徴を知る必要がある。まず筋力の低下やバランス能力の低下、また転倒したことがある場合は、メンタルの要因でどうしても歩く速度が低下してしまうことが多い。
平均歩行速度は1.37m/秒と言われていて、フレイル基準の1.0m/秒を基準に歩行速度をひとりひとり判断していくことが可能である。この際これが筋力の低下によるものなのかバランス感覚が鈍くなっているためなのかを判断すると改善のためのアプローチを考えることが可能となる。歩行速後の低下は脳血管障害や循環器系、パーキンソン病などの疾病が隠れている場合もあるため原因を探ることは重要といえる。
さらに、どうしても前屈姿勢になってしまう高齢者が多い。脊柱の変形が原因であることが多いが、この場合腰痛や膝の関節痛を起こしていることが多く、また腰回りの筋力の低下により股関節の動きに問題が生じていて歩行へ影響を及ぼしていることもあるのだ。
前屈み歩行の人の場合は、アライメントの評価と腰回りの筋力の評価を行うと今後の対応の仕方がわかるのではないだろうか。
この股関節の動きに関係してくるのが、足の上がりづらさである。これは同時につまづきやすさにもつながる。足の上がりが悪い場合にはやはり股関節の可動域や脊柱のアライメントの評価、腰回りの筋力の評価を行い、原因を探るべきである。
その他にも心肺機能の低下により長い時間の歩行が困難になったり、下肢の支持時間が短くなったり、ということも挙げられる。
歩行介助は、介護の仕事のなかでも重要な位置づけである。簡単にできそうに思えるが、高齢者を転倒させてしまうと骨折やそのまま寝たきりになってしまう可能性もあるため、重要な介助と言える。安全に、また相手が安心できるように行うのが歩行介助のポイントである。
安全に歩行介助する前にはしっかりした準備が必要である。まず補助器具を使っている場合にはしっかりメンテナンスしよう。杖や歩行器の高さ調節のネジが緩んでいないか、杖の滑り止めのゴムはしっかり役目を果たしているか、歩行器のタイヤ部分の動きに問題はないか、など定期的に確認が必要である。
高齢者が歩く場所の確認も欠かせない。邪魔なものが置かれていないか、通路の幅は問題ないか、つまづきやすそうな箇所はないか、事前に歩いて歩行介助される身になって確認してみよう。
そして、靴も確認が必要だ。スリッパやサンダルの場合は、滑りやすく脱げやすいので注意が必要である。なるべくならサイズの合った滑りにくい靴が理想だ。室内の場合は靴下を履いていると意外なところで滑って転倒してしまうため、裸足がおすすめである。
また、服装も確認しよう。ズボンの裾が長すぎたり、ロングスカートも転倒の要因となり得るので普段から伝えておく必要がある。
無理をさせるのも事故の元である。歩行する前にはきちんと体調を確認し、いつもと違うところがないかコミュニケーションを図ってから行うようにしよう。歩行する場所にしっかり休憩場所があるかも調べておくことと、スタッフにもあらかじめ歩行介助を行うことを伝えておくと安心である。これらの注意点に加えて、こちらの参考サイトも確認しておくことで歩行介助に自信が持てるようになるだろう。