「いたたた…」


ウンスはお腹の痛みで目が覚めた

時間は朝の5時を少し過ぎた所

「早くない…?

パパは夜しか帰って来ないよ?

待ってられる?」

お腹の赤ちゃんに語りかける


それからしばらく様子を伺っていても

次のお腹の痛みがやって来ない

「初めての出産は

なかなか産まれないってゆーし

この様子だとまだまだね

ヨンには心配かけたくないし

もう少し後で連絡すればいっか」


陣痛かな?と思ったら

何時でもいいから連絡してくる事!って

口すっぱく言われてるから

トギには連絡しなきゃ

ウンスはお腹を庇いながら

ヨイショと起き上がった


30分も経たないうちに

トギが来た

「あんなに張り切って

マタニティひろばに一緒に通ってたのに

本人が出張でいない時なんてねぇ」

笑いながら言うトギのダンナも

ヨンと共に出張中

「まだ少しかかりそうだけど

早めに病院行っとこうか

特別室も予定日から押さえ込んであるし

必要な物は向こうにも揃えてあるのに

入院準備も完璧なのね…」

「ごめんね〜早朝なのに」

「何言ってるの

主治医としては完璧に仕事したいじゃない

何よりも友人としてもね」

トギはいつも以上に柔らかく微笑むと

ウンスを庇いながら

あれこれ詰まったキャリーケースを

引き摺った



***



「1人で大丈夫なのか…」


休息用にとあてがわれた

無駄に広い応接室で

ヨンは携帯を眺め、ため息を吐く


ー心配ないよ

まだまだ全然大丈夫〜♪

2人でお利口に待ってるから

お仕事がんばってね♡ー


ウンスから来た返信は

いつもと変わらない

寝ているかもしれないと思うと

電話をするのもためらわれる


客先へ訪問しての顔合わせや会議なので

携帯は常にマナーモードにしてある

まさか気づかない時があったのではないかと

何度も確認するが

慌てる連絡が入っている事はなかった

落ち着いているんだと

安心しようとするが

それ以上に心配で仕方ない

辛い時や寂しい時程

笑顔でいようとするウンスだ


「おい。チュンソク

トギ先生からお前に連絡来てないか?」

「いや。特に何も」

「…そうか…」


落ち着かないヨンの様子を見て

チュンソクの眉間にシワが寄る


ーウンスの前駆陣痛が始まった

まだ軽いし間隔あるから大丈夫だけど

さっさと終わらせて帰らせてー


早朝に届いたトギからの連絡

いつもの事だが

あっさり要件だけを送ってくる


ー私たちの子供は遅くなるけどいい?ー

プロポーズの後、唐突に言われた

相談する様な言い方だったが

トギの中では決定事項だった

ーウンスに安心して子供を授からせたい

産まれてくるウンスの赤ちゃんは

私が取りあげるのが私の夢なのー


その日がやってきた


ーウンスが心配するから

まだ知らせるなと言ってる

いつも以上によろしくー


いつも以上にって…

この人のカンは恐ろしく鋭い上に

ウンス先生の事となると…


「ボス

10分後に客先と会議です

重要案件はこの2件です

頭に叩き込んで

こちらに有利になる様進めてください

残りは持ち帰り検討という事にしましょう」

「…わかった」

ヨンは眉をひそめ怪訝な顔をするが

書類を受け取った