「ウンス!危ないだろっ!」


「へ?」


「重たい物は持つなって言ってるのに

転んだらどうするんだ!」

仕事から帰ってくるなり

ヨンが駆け寄ってきた


「重たい物って…ティーセット…」


…しまった…


手に持っていたのは

ラズベリーリーフティーが

少し残ったティーポットと

ティーセットが2つ


…1つ多かった…


すぐにヨンに取り上げられ

目と鼻の先にある

キッチンにわざわざ運んでくれる


「さっきまで

様子を見にトギが来てくれていたの」.

シンクにカップを置いてくれている

ヨンの横におずおずと並んでみる

「それは安心だが

ウンスの行動はハラハラしっぱなしだ」

「心配しすぎだってば

ティーセットは重い物じゃないわ」

「いつもより多い

そんな時はワゴンを使えばいいって

言ってるだろ」


…めんどくさいんだもの…


「めんどくさいなんて思うなよ

重くなくても

うっかり落として割れた物で

怪我でもしたらどうするんだ?

手当だってしづらいだろ」

「心配しすぎなんだってば」

「なんでこんな時に

出張なんか入ってくるんだ…」

「出張って言っても1泊じゃない」

「プライベートジェットを使っても

1日空けてしまうんだ

俺がいない時に陣痛が始まってしまったら

ウンス1人に頑張らせてしまう事になる」

「そんなタイミングよく来ないって」

「あっ!この匂い

ラズベリーリーフティーじゃないか!」


…ポットの蓋を開けただけで気づくのね…


「飲んだからってすぐには来ないって

効果てきめんなら

とっくに産まれてるはずでしょ?」


出産予定日はとうに過ぎていて

いつ産まれてもおかしくない

しかもお腹には2人

細い身体に

はち切れんばかりのお腹の大きさで

ヨンの心配は留まるところを知らない


最近は陣痛促進に安産に良い

と、ラズベリーリーフティーを

好んで飲んでいるけれど

わざわざ出張の連絡が来たのに

飲むの?とトギにも言われた…

さっさと片付けておけばよかった…


「ふぅ…」

「疲れたのか?大丈夫か?」


思わず出てしまったため息に

すかさずヨンが反応する

「ううん違うの

それより…

おかえりなさい」

にっこり微笑むウンスに

引き寄せられるように頬にキスをする

「ああ。ただいま」

「今日はもうお仕事終わりでしょ?

服も着替えてきてゆっくりしましょ?」

そう言って頬にそっとキスをすると

ヨンは満足気に微笑み

つむじにキスをしてから

着替えに向かった



***



「じゃあ、行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」

「無理するなよ」

「うん。大丈夫」

「明日、なるべく早く戻ってくるから」

「うん。無理しないでね」


ヨンは跪くとウンスのお腹に手を当て

語りかける

「いいか?

ママが無理しないように

慌てないように、見守っていてくれ

俺が帰って来るまで

おとなしく待っているんだぞ?」

それから

ウンスの両手を優しく握った

「行ってくる」

「いってらっしゃい」


迎えにきたチュンソクと共に

出かけて行った


「さて

心配させないように

ゆっくり過ごそうか」