▩ 話題作 映画『廃用身』を見た | ☆関西の大衆演劇・上方芸能・イベント☆最新情報★ Conduct by 紀州屋良五郎

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〇 問題作『廃用身』を見た。

 

介護、高齢化社会、医の倫理、医師、介護師、高齢者のみならず現代を生きる人必見の映画である。

 

予告編

 

 

 

 

【作品の概要】

STORY

回復の見込みがない手足を指す「廃用身」に対する独自の治療を行っている、デイケア「異人坂クリニック」。治療を受けた患者の多くが、手足の状態に加えて精神状態も良くなったことを実感したという話を聞きつけた書籍編集者の矢倉(北村有起哉)は、老齢期医療の未来を変えると感じ、クリニックの院長・漆原院長(染谷将太)に本の出版を持ちかける。だが、クリニックで行っているデイケアに関する内部告発が週刊誌で報道される。

キャスト

染谷将太、北村有起哉、瀧内公美、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄、六平直政

スタッフ

原作:久坂部羊
監督・脚本:吉田光希
音楽:世武裕子
製作:花田正史
エグゼクティブプロデューサー:川村英己
企画・プロデュース:楠智晴
プロデューサー:藤井宏二
共同プロディーサー:加藤毅
撮影:志田貴之
照明:高井樹
録音:加唐学
美術:石毛朗
装飾:志武谷由一
衣裳:川本誠子、佐藤愉貴子
ヘアメイク:板垣美和
小道具:能登小麻子
特殊メイク・特殊造型:織田尚
VFXスーパーバイザー:立石勝
編集:古川達馬
リレコーディングミキサー:野村みき
サウンドエディター:パク・ウルビン
キャスティング:伊藤尚哉
助監督:松倉大夏
制作担当:原田博志
特別医療協力:成尾宗浩、藤井咲樹子
宣伝プロデューサー:張京鐸

上映時間
125分
 
〇 私の見たまま感じたこと 〇
 
まずポスターに着目だ。一文字、一文字がどこか欠けている。身体の一部が欠けていることを象徴した意味深長なポスターだ。リハビリ用語で麻痺などで機能回復が見込めない身体(手足など)の事を廃用身というらしい。設定はとあるデイケア施設異人坂クリニック。
 
交わされる言葉は施設では日常的な言葉である。理学療法士・介護師たちは患者の介護に手がかかる事を口にする。動かせない身体ほど運ぶのに体力がかかる。たしかに、介護の現場ではよくきく声である。
 
動かせないと褥瘡から患部が腐蝕し最悪の場合切断しなくてはいけなくなる。担当するドクターはリハビリで回復の望みがないならその手足を切断すれば軽くなるし、介護者の負担も減るのではと考え、褥瘡ができた患者をきっかけに、Aケアと称し患者の同意の下で次々と切断していくというおどろしい映画である。しかも、原作が現役の医師というから驚きだ。理学療法士の方がご覧になったらどんな感想をおもちになるのだろうか?
 
もし、お身内に肢体不自由な方がおられるなら絶対に見るべき映画ではない。絶望と医師・介護士への不信しか残らない映画であるからだ。
 
しかし、だ。介護の現実を知らない方、老後、病後の現実を知らない人達には是非見ていただきたい映画だ。ショッキングな現実を仮想体験してみて欲しい。障害を抱えながら生きていくことの苦痛、家族の大きな負担、医学の限界を知ることは有益である。
 
私の義母はALSではじめは足の神経に麻痺が起こり病気が発覚した。判定まで1年以上費やした。医師から知らされたとき義母にはとてもすぐには言えなかった。次第にもう一方の足にも麻痺、立つことができなくなり右手足にも麻痺が始まり寝たきりとなった。
 
身近で介護にあたった妻も私も暗黒のような日々を過ごした。受け入れてもらう施設を探してもALSという病名から看護・介護体制がとれないと次ぎ次ぎ断られた。やっと見つけた療養病棟に入所し余生を送ることになった。その頃には、会話すらできず動くのは目だけになっていた。文字盤をとおしての会話だけが私たちとのコミュニケーションだった。義母は、気道切開を拒み、人工呼吸で長らえる事を望まないと文字盤で医師に伝えた。数週間後、意識混濁の中、帰らぬ人となった。
 
最近では、IPS細胞による神経難病を克服する諸施策がおこなわれ、治療の一歩が踏み出された。ロボット技術の高度な発達により手足が欠損しても日常生活に困らないようになりつつある。この映画で表現される、体重の重さから介護負担が増え、離職者が出て現場が維持できなくなる。だから患者の手足を切断するという発想はいささか人間の尊厳に逆行する発想ではあるまいか。知恵と技術革新で克服出来うる課題である。
 
この映画は人間の命の尊厳をまったく捉えていない狂気の映画だが、高齢化社会の諸課題を写しだし、衝撃的な話題性で注目させて、この国の貧しい福祉政策の一面を切り取っているとはいえる。そうでもしなければ見たくないものは無きものととする時代の闇に閃光を当てることもなかったかもしれない。
 
日常、大変な中、高齢化ケアに尽力されるすべての介護、看護スタッフの方々の報酬・待遇がもっともっと手厚く改善されることを切に願う。
 
もし、医師も自らが病で倒れ手足が不自由になったら肢体を自ら切断し、実践してみて欲しいと願うばかりだ。本来の身体的ケアの理念に問いを投げかける映画の出現に望みを託したい。