〇 この映画を見て 思ったことなど
落語家の業(ごう)
全ての出来事を、笑い飛ばす了見を〈粋〉と言う
出演:快楽亭ブラック、立川談之助、鈴々舎馬るこ、げんきいいぞう、大本営八俵/語り:坂本頼光
映像提供:九龍ジョー、鈴々舎馬るこ
企画協力:銀幕ロン、立川左平次
整音:白井勝/音楽:杉浦康博
撮影・編集・監督:榎園喬介
製作:合同会社bluebird siblings
2025年/日本/95分/DCP/G
〇 予告編 〇
【解説】
映画館の闇が産んだ、落語界の怪物。
米兵と日本人女性の混血児として生まれたブラックは、差別から逃れる為、幼少期から殆どの時間を映画館の闇で過ごす……。
「落語とは、人間の業(ごう)の背定である」との名言を残す、落語界のカリスマ・立川談志の弟子であり、その言葉を体現するかのような破滅的な生活と過激な落語で、メディアへの露出が限定的な中、長年の間、根強い人気を誇る落語家・快楽亭ブラック。 コンプライアンスが厳しい現代、もはや二度と現れない最後の芸人らしい芸人であり、全ての出来事を笑い飛ばすその了見は、息苦しい現代を生きる術でもある。本作は、そんな生ける伝説・快楽亭ブラックの業)に迫るドキュメンタリー映画である。
〇 見たままを感じるままに 〇
見るきっかけは出演されている ひと:みちゃん からのお知らせだった。
ひと:みちゃん(写真上) このお方も鬼才である。出会ったのは今は亡き名優・澤村龍司さんの舞台だった。以来、しばしば注目に値する情報をいただき貴重な体験をさせていただき感謝している。
この映画、実に面白い。芸風も破格だがその芸風の成り立ちがブラックさんのルーツと生い立ちにある事を丁寧にたどるドキュメンタリー映画である。
かつて、上方に桂春輔、のちの祝々亭舶伝さんがいた。はじめて新世界新花月で見たときびっくりした。あの熱気、劇場を駆け回るのたうつような仕草、いきなりカブトムシになるとてつもないナンセンスな芸風、意味が解読できない不思議な世界に圧倒され興奮した。
劇場内で一升瓶を抱えて寝ながら落語を聞くオッサンがいても優しく耳元でささやく。
けったいな芸人だった。どこか憎めない。
どこまでが藝でどこまでが人生かが判然としない独特の世界がそこにあった。
この快楽亭ブラックさんの落語会にも彼は出演していた。やはり相通じるものがある。
小沢昭一氏がかつて言っていた。超越したもの、異才こそ芸人たらしめるものであると。
ブラックさんはそれにぴったりの落語家さんである。天才は近寄りがたい人ではなく近寄れるところと神になって昇天するところをもつ人と私は思う。
だいたい、万人に受けようと思うと藝が腐る。狂気と神降臨、どこにでもいる人とを行き来するから面白いのだ。放送禁止の世界の中にしか人の真実の香りはしないし、花は咲かない。
わたしが大衆演劇を愛する理由も放送コード・規制のない世界だからだ。
原始、人間は芸人だった。を地でいく人、あったかくて、憎めなくて、ストレートで純粋で
生き方そのままが落語の人、それが快楽亭ブラックさんなのだ。
この貴重な映画を見て欲しい。いや、見なきゃ生きてて時間がもったいない。
見終わった後、あなたは彼を好きになれるか‥そんなことまではわからない。

