この映画は去年のカンヌ映画祭で―最優秀男優賞ーを受けた話題作なのに

 

  なかなか日本での上映がなされず、ようやく近くの緑井シネマで

 

  上映されだして飛んで行った。

 

           

 

   通っている美容院の担当美容師さんが「見ましたが、初めは無声映画みたいで

   後で、いろいろ考えさせられました」とのコメント。

 

   「言っておきますが期待はされない方が、それと映画の半分は会話がありませ     

    んよ」

 

   たしかに2時間の上映時間の約1時間近くは人間の会話はない。

   町の騒音や銭湯のエコーの効いた水とあふれる湯の音などはリアルだ。

 

   主人公は公衆トイレの掃除を生業としている。

  

   朝は竹ぼうきの音で眼ざめ、洗顔歯磨きを済ませると、古いアパートのそばに  

   ある自販機で缶コーヒーを買い、軽自動車に仕事道具を詰めて出勤する。

 

           

  境内の樹木のさえずりに耳を傾け写真を撮り、仕事が終わると自転車で

  銭湯に。顔の半分まで浸かり、満たされた表情で体を洗う。

  銭湯でさっぱりしたらガヤガヤした地下街の狭い居酒屋で一杯飲む。

 

  役所広司が演じている「平山」という男の説明は一切ない。

  

  本人も寡黙で人を避けているのではと思うほど「孤独」を好んでいる。

 

  100円で買う中古の文庫本を寝る前に読み、テレビもない。

 

  いつまで毎日の「平山」の同じことの繰り返しを見せるのかと、たいがいにしん  

  さいと怒りがこみ上げたころに変化がーーーー

 

              

 

  ドイツ人の制作で固められて、よくもまぁ、日本人の勤勉、禁欲さを

  役所広司を通して知らしめている。

 

  美容院の彼女が言ったように、後からじわりと効いてきた。

 

  「平山」の無欲の生活の豊かさや、樹木の織り成す木漏れ日との会話、

   労働して飲むいっぱいのコップ酒、就寝前の読書

      など小欲知足な生活。

 

 金お金お金金の政治の世界のドロドロが滑稽に見える。あの5人衆や7人衆

 「あんたバカじゃないの」と記者に言い放った、ノーコントロールのおじいさん。

 

     

 

    いちばん見てほしい方々。(笑)

 

 久しぶりに清々しい映画を見たと1週間して効いてきた。