「数学のたのしみ」の「モジュライのたのしみ」特集号を見ていたら,
向井茂さんの解説があり,少しわかった
ことがありました.
P^3の中の非特異3次超曲面のモジュライ空間として,まず,
3次斉次多項式の係数の空間(複素数倍は同一視,特異なものは除く)がある.
さらに,それをPGLの作用で割った空間Mも考える.
後者Mは,控えめに,粗モジュライ空間と呼ばれる.
このように呼ばれる理由は,
この空間Mをbase spaceとするような普遍族(universal analytic family)が必ずしも作れないこと,だそうである.
つまり,複素多様体(total space)からM(base space)への全射固有正則submersionで,Mの各点のファイバーが,その点を代表する非特異3次超曲面(に複素解析的に同型)となっているような族が必ずしも作れないらしい.
なぜ作れないかと言うと,ある特殊な非特異3次超曲面Xが大きな対称性を持っている(=それ自身に作用するようなPGLの元が沢山ある)のに,その近傍の非特異3次超曲面は,それ自身に作用するようなPGLの元が恒等変換のみしかなかったりする場合,その近傍上にうまくfamilyが作れないということである.
Xにはmarkingが何種類もあるのに,PGLの作用で割ったモジュライ空間Mにおいては,それらのmarkingをすべて同一視してしまっていることになる.それゆえ,その上には「現実のfamily」を作れない.
そこで,特殊な非特異3次超曲面Xのすべてのmarkingを区別するようなモジュライ空間を新たに考えると,
それは,non-Hausdorffな空間になってしまう,ということかも知れない.
それに対し,"Hilbert scheme"上には,普遍族が作れる.Hilbert schemeとはそういう重要な性質を持つものなのである.
非特異3次超曲面に対しては,最初に考えた「3次斉次多項式の係数の空間(複素数倍は同一視,特異なものは除く)」がHilbert scheme(を実現したもの)ということになる.
このような事情を知ると,「family」と「モジュライ空間」の重要な違いが見えてくる.
取りあえず対象の全体を捉えたらよいと思って,
PGLの作用の分を同一視してモジュライ空間を考えたりすると,
その空間上には,(繰り返しになるが)「現実のfamily」は必ずしも作れない,ということ.
familyのbase spaceになり得るようなモジュライ空間が,ある意味では,重要であるということ.
モジュライ空間上のfamilyが現実に存在するならば,
例えば,モジュライ空間が連結な複素多様体(smooth)である場合,モジュライ空間の各点を代表する多様体は,複素構造の変形で移り合うことがわかる.
また,非特異実4次曲面の場合,
coarse projective equivalence classes (Hibert schemeをPGLの作用で割ったもの)でなく,
(PGLの作用で割っていない)"rigid isotopic classification"の重要性もわかる.
amphichiralな実4次曲面とは,対称性を持っている特殊な対象ということになる.
そのようなことを踏まえ,marked K3 surfaces (および,marked polarized K3 surfaces )のモジュライ空間とその上のfamilyについて,いま一度,正確に読みとらなければならない.
しかし,さしづめ必要なのは,代数的K3曲面なので,polarized K3 surfaces の場合に限って,Piateckii-Shapiro, Shafarevich の2つの論文を見ること!