複素射影空間において,1つの実d次斉次多項式で定義される非特異(=複素特異点を持たない)代数多様体(つまり,超曲面 hypersurfaces)に関し,次の同値関係がある.
(1) 実部がdiffeomorphic
(2) 非特異代数多様体が,複素共役の作用と可換なdiffeoによりdiffeomorphic
(3) 実部が実射影空間の中で (differentiablyに) isotopic (「real isotopic」)
(4) 非特異射影代数多様体が複素射影空間の中で(複素共役の作用に関し)equivariant isotopic
◎次は明らかである:
(4)⇒(3)⇒(1)
(4)⇒(2)⇒(1)
(5) rigid isotopic,すなわち,「real isotopicであってかつisotopyの途中の多様体がすべて実d次非特異射影代数多様体(の実部)ばかりからなる」 (Rokhlinが,論文 "Complex topological characteristics of real algebraic curves", Russian Math. Surveys (1978) の中で定義した概念である.)
このことは,実d次斉次多項式の係数空間/R-{0} (複素特異点を持つものを除く)の中で同じ(弧状)連結成分に属することと同値である.(→とRokhlinの論文に書いてある)
(証明は,小平邦彦「複素多様体論I」(岩波講座基礎数学)の複素解析族に関する議論を参照)
(6) rigid isotopy classes のうち,実射影的線型変換で移り合うものを同一視 (Kharlamovの論文参照)
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さて,「偏極(代数的)実K3曲面」に関しては,
(7) 不変量(n.k)を持つ偏極実K3曲面の大域的モジュライ空間M_{n,k}(R)(粗モジュライ空間)の中で同じ連結成分に属する という同値関係(coarsely projectively equivalence)がある(Nikulin, 1979).
CP^3の中の非特異実4次曲面に対しては,(6)と(7)は同値である.(理由は,Saint-Donatの結果により,不変量(n,k)=(4,1)なる偏極実K3曲面は,非特異実4次曲面であることによる)
(5)と(6)の差異を調べるには,実射影的線型変換で移り合うrigid isotopy classesと,そうでないものを区別するわけであるが,非特異実4次曲面に関しては,Kharlamovの仕事である.
Kharlamovは,まずNikulinの理論を用いて,非特異実4次曲面に関して(7)の連結成分の数え上げを行い,その各々について,個々に,その中にあるrigid isotopy classesを調べ,(5)を完成した.
非特異実6次曲線で分岐するCP^2の2重被覆に対しても,同様の考察をNikulinが行った.それゆえ,CP^2上の非特異実6次曲線のrigid isotopic classificationはNikulinが完成したとされる.
このように,現状では,rigid isotopic classificationについては,不変量(n.k)を持つ偏極実K3曲面の大域的モジュライ空間M_{n,k}(R)(粗モジュライ空間)の連結成分の数え上げが有効な方法である.一方,K3曲面と関わらない次数の超曲面のrigid isotopic classificationは困難.
射影空間のd次超曲面の場合,
(5)rigid isotopic ⇒(4)equivariant isotopic
が成り立つ(この記事 参照.この証明方法は,超曲面の場合のみならず,完全交差(complete intersection)の場合でも可能と予想される)
不変量(n.k)を持つ偏極実K3曲面の大域的モジュライ空間(粗モジュライ空間)M_{n,k}(R)とは,
不変量(n.k)を持つ偏極K3曲面たちからなるヒルベルトスキームH_{n,k} (これは連結な複素多様体)において,複素共役の作用の不動点となっているもの(偏極実K3曲面)の全体をH_{n,k}(R)とし,それを,PGL(N+!,R)の作用で割った空間である.
重要なことは,H_{n,k}がヒルベルトスキームであることから,この上にはすでに普遍族が存在することである.このことにより,
H_{n,k}(R)の同じ連結成分に属する2つの偏極実K3曲面は,
(H_{n,k}(R)の中で結べるという意味での)rigid isotopicであることと,
P^Nにおいてequivariant isotopicであることが同時に言えることになる.
それに対し,上述のように,係数空間の同じ連結成分に属するという意味のrigid isotopicの場合,equivariantベクトル場を用いて,その上に族を構成し,equivariant isotopicであることを導かねばならない.(この記事 参照.)
(2009/5/25修正)
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dividing curves について
非特異実代数曲線の実部が全体(複素零点集合)を分離している(dividing)かどうかは,(2)で不変な性質である.(dividing であることを,type I ともいう)
dividingな実曲線(S^1に同相ないくつかの連結成分からなる)に,複素零点集合(複素曲線としての向きを持つ)のhalfから,その境界の向きとして導入される向き(連結成分全部について一斉に逆にすることは許す)を complex orientation と呼ぶが,この向きも(2)で不変である.
(2)あるいは(4)で不変な性質は,「complex topological characteristics」と呼ばれる.
(Rokhlinの上記の論文参照)