正直なところ、まったく意味がわからず、退屈だった。
フランス人がわざわざ吉野を訪れる理由について、真相を初めから明かされるわけではないにしても、「Vision」という薬草を探すためでは腑に落ちないし、山守が20年前にやってきた理由も「つかれたから」というのでは、納得などできないし、木で鼻をくくったような独善的な物語の進行には、まったく入り込めなかっただけでなく、白々しくて、興醒めだ。
吉野の山なみの映像の美しさには息をのむが、それだけのことで、観光や環境の紹介映像なら、5分も見せられれば充分で、映像美に寄りかかるのではなく、人物を作り込み、ストーリーも練り上げてこそ引き立つというものだろう。
フランス人が森で出産していたり、その息子が何の前触れもなく成長して出てきたり、それらの種明かしをされても、共感ができないのは、あまりにも森の中の狭い世界で物語が閉じてしまっていて、その狭い世界に共鳴できないと、やることなすことがすべてばかばかしく見えてきて、とりあえず狭い世界を申し訳程度に説明したとしか思えず、わけのわからない部分が、ラストシーンで収斂して、カタルシスが落ちるのならまだしも、千年に一度、正確には997年に一度の出来事が、老婆が何かにとり憑かれたように踊り狂い、周囲の木々に火がついて、胞子状のものが空中に吹き上がる中で、母子が関係を確認するというのでは、拍子抜けというより、ただつまらないだけで、唐突にわけも知らされずに死んだイヌがよみがえって、駆けずり回って山守の顔をなめ回すくらいなら、ばかばかしいながらも楽しめたと思う。
こういう映像を「東洋の神秘」と呼ぶのであれば、人里から隔絶された山あいの村を舞台にして、現実離れするだけでは底が浅いように思える上に、「素数ゼミ」などともったいぶった話を差しはさみ、それが伏線として機能するなら意義があるとしても、ただの「997」が素数であることにこじつけでしかなく、何をどう計算したのか意味不明な「997年に一度の出来事」につながらず、「気候がおかしい」などと言っているのも、「997年に一度の出来事」とは結びつかず、最初から最後まで、すごいぞ、すごいぞ、と気を持たせただけというのが率直な感想だ。