


これまで、人形やマグロ、アンテナなどが乗った郵便ポストは見かけたことがありましたが、国宝が乗っているのは初めてで、一瞬たじろいだものの、まさか本物ではあるまいという思いと、国宝級の宝物がそこらじゅうに転がっているため郵便ポストの上にでも陳列しておけと指示を出した偉い人がいて、どうせ見た人たちも贋物としか思えないだろうから、誰も盗んで行くはずもなく、器物損壊の罪に問われて、職や信用を失うようなまねをすることは絶対にあるまいと、裏の裏をかいて、あえて本物を置いた可能性も無きにしも非ずで、一応、ためつすがめつ眺め回したところで、真偽のほどはわかりかねました。
国宝や重要文化財は、法律によって公開できる博物館の基準が厳しく定められ、美術品においては保護の観点から、展示を年間60日程度と決められていて、建物でない限り、雨ざらしや直射日光の当たる場所に放置されている道理はないとは考えが及びましたが、「国宝」と言い切っていて、カッコ内に「レプリカ」とでも書いてあれば、余計な気を回すこともないながらも、やはり、いろいろと考えさせるところに深みや奥行きがあるようにも思われてきました。
かりに、食うに困った人が拝借し、国宝としてではなく、廃品回収業者が持ち込む金属スクラップ問屋へ持ち込んだとしても、金が貼ってあればそれなりの金額になるでしょうが、銅の薄板であればキロいくらであって、金銅華鬘をつかんだ瞬間、軽さに泣いて三歩も歩けないかも知れず、意を決してつかみ取ったところで、ラーメン一杯も口にできないという残念な結果が待ち受けているような気がします。
平泉駅には、駅の構内と、駅前ロータリーに面した場所と二軒の観光案内所があり、たまに郵便ポストの上にある国宝に気がついて、質問を浴びせてくる観光客もいるはずで、バスの一日乗車券を購入しに入り、「あのポストの上の金銅華鬘は本物ですか」と約束通り問いかけて、対応した職員に困惑した苦笑を浮かべさせてしまいました。