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東京国際フォーラムの地下1階にある「相田みつを美術館」に行きました。
わかりやすい平易な言葉を紡いで、数々の珠玉の名言を残した相田みつを(1924~1991)は栃木県足利市出身、詩人であり、書家であり、そういった肩書き以上に、人間を深く見つめ、人生の真髄をつかみ取り、読む者の心に響く本物の言葉を生んだ達人として、新たな地平を切り拓いたように思えます。
第69回企画展「相田みつを冬の時代」は、「人間だもの」が注目されるまでの間、30年間に渡って故郷の足利市で試行錯誤しながら、思索を深めて行った時代に焦点を当て、冬にまつわる作品を中心に展示がされていました。
誰しも、順風満帆な時期には立ち止まりもせず、勢いにまかせて進んで行くことができても、何かの拍子につまづいた時や、苦難に直面した時に、心の支えとなる言葉によって励まされ、勇気づけられることもあり、もちろんそんな言葉を必要としない力強い生き方を貫ける人がいたら、それはとてつもなく立派な人生であって、勝ちつづけられるきわめて高い能力にも頭を下げるしかありませんが、そのような人は稀であって、多くの人間は挫折をしたり、絶望をしたり、こけつまろびつ生きていて、人間として真価が問われるのはむしろ苦境に陥った時であり、まさに冬の時代をどう過ごすかにかかっているといっても過言ではなく、相田みつをは「根」にこだわって、厳しい冬に見えない根っこを太くするようにと励まし、置かれた現実をしっかりと見つめて、言い訳をせず、ありのままに、季節がめぐれば花を咲かせられるのだと信じて、ひたすらに生き抜くことだとメッセージを送っていました。
短くわかりやすい言葉の裏側には、膨大な思索のあとがあり、おそらくは難しい言葉を用いて、わかったようなふりをすることはたやすかったとは考えられますが、それは自分に根ざさない偽物の言葉であり、研ぎ澄まされて、そぎ落とされた結果、残った言葉には真実の重みがあって、発せられた瞬間に鐘の音のように響いて、人の心にしみこんでくるようになるためには、身を切るような己を洞察する鋭い視線があったとも思われてきます。
短い言葉に凝縮した場合、たったひとつの助詞の用い方を変えるだけで、受け手の印象が大きく変わってしまうばかりでなく、名詞や動詞の選び方にも全神経を注ぎ込み、一文字たりともおろそかにせず、さらには全体の印象を調和させないとひとりよがりに陥りかねない危険性があり、読み手の共感を得る卓越した作品として結晶させた巨大な才能の根っこには、真摯な生き方と森羅万象への観察眼があったように思えました。