


これはなかなか独創的な企画で、一般に特別展を開くとなると、「エルミタージュ」とか「ルーブル」などといった有名な美術館の名前を冠したり、「印象派」とか「アール・ヌーボー」などといった芸術運動のひとつの時代でくくったり、「ルノワール」とか「梅原龍三郎」などといった作家の名前を前面に打ち出したりして、どういった内容かがわかりやすくなっているものですが、客を呼び寄せる「鉄板ネタ」には当然ながらレンタル料が莫大にかかり、それにともなって宣伝広告量ものしかかってくるので、当然ながら大きな予算を使える美術館に限られることになり、企画の秀逸さで勝負しなければいけない美術館の方が、知恵を絞って、新しい視点を示してくれるところに面白さがあるように思えます。
植物の造形自体も芸術そのものであり、命あるものとしての美しさのほかに、何でこんな形になるのか、不思議としか思えないものも多く、季節の移り変わりとともに、まさに大地に根をおろして、さまざまな表現をしているように見えてくるのも、神が創った芸術作品なのかもしれず、たとえ光合成や種の保存などのために、効率よく枝葉を伸ばし、花を咲かせているにしても、人智の及ばない領域だという思いはぬぐえません。
絵葉書風に印刷された絵と、実際に描かれた絵画とを見比べてみましたが、印刷物はきれいな絵という情報だけは伝えているものの、当然ながら平板で訴えてくるものがなく、実物は絵の具の盛り上がりによって立体に見えて、作品に命があって呼吸しているようであり、作家の思いが胸を揺さぶってくる迫力がありました。
1972年に開館した西宮市大谷記念美術館は、松竹の創業者のひとり、大谷竹次郎より土地・建物・美術品を寄贈され、日本とフランスの近代絵画を中心とした当初のコレクションに、新たに購入した作品も含め、現在では1100点の作品を収蔵しているそうで、広々として開放的な和風邸宅の各部屋の美術品をながめたあとは、水と緑が調和した素晴らしい庭園をめぐりながら、至福のひとときを過ごすことができました。