子供の頃、テレビの演芸番組で、チャンバラトリオが4人入り乱れて斬り合い、袈裟懸けにして大仰な身振りで倒れ込み、倒れて死んだ振りをしていながら突然立ち上がってうしろから斬りつけ、斬られた方がのた打ち回りながら、「だましあがったな」とうめいて倒れ込み、再びうしろにいた者が斬りつけると、これまたのた打ち回りながら、「だましあがったな」とうめきながら倒れ込み、さらにそれを数回繰り返して、最後は、「いつまでやっているんだ」などと言ってハリセンで顔をはたいてオチにする、というコントをへらへら笑いながら見ていた記憶があるものの、よくできたスパイ映画の面白さはその比ではなく、オチはハリセンではたくくらいではおさまらない。
アメリカ映画において、ロシア人は必ず悪者であって、舞台が宇宙のSF映画であってもやられる側はロシア語を話しているのが常であり、悪の栄えたためしはなく、最後には全滅するのだが、そうなるだろうとわかって見ていても、きっちりと盛り上げて、どんでん返しを用意しているのは、ものすごい。
任務を遂行するためには、だましたつもりでも相手にだまされ、だまされた振りをしながら相手をだまし、だまされっぱなしでは身の破滅であって、身も心も研ぎ澄まして、何が何でも生き残るほか術はない。
信用するかしないか、利用するかしないか、それは敵か味方かは問題ではなく、最終的には任務を果たすためだけだ。
死んでしまえば報告もできず、どのような言われ方をしてももはや死人に口なし、最後まで生き残った者だけが静かに笑えるのは言うまでもない。