


普段は配置されている職場が違うため、まったく話をする機会がなく、早めに行って、同室の人たちと冷蔵庫の中にあるビールで乾杯し、しばし歓談、宴会の時間に合わせて大浴場に行き、さっぱりしてから宴会にのぞみました。
首脳陣の方々のあいさつも終わり、隣りに座った同じ職場の人と世間話をしながら食事をしましたが、二年とはいえ、ともに働いていると、人となりもある程度理解できて、職場では話せない私生活に立ち入った話などもするようになり、「三人の息子は東京と大阪の大学を出て、一部上場企業の関連会社に勤務していて、次男だけが結婚した」ことや、「市内に二軒の家を建てて、一軒は空き家になっているほか、年老いた母親がひとりで住む家もある」ことなどを聞いて、さすがは実直に働いてきた人だと感心しつつ、趣味の話などもして、「海外旅行はハワイとか台湾とか多くの日本人が行くようなところはだいたい行った」こと、「パチンコもよく行く」ことなども聞き、「パチンコを愛するあまり、借金取りに追い込まれるような波乱万丈の人生にはならなかったのですか」とふざけた質問をぶつけてみると、「パチンコは好きでも、そこまではのめり込めなかったし、勝ったり負けたり気晴らし程度で、借金だけはしないように心掛けていた」とまじめに答えてもらって、恐縮したものの、パチンコがいくら好きでも、休日などに楽しみとして行くのが一般的なのかもしれません。
途中に、プラスチックのスプーンでピンポン玉を五人でリレーするゲームや、ジャンケン大会が催され、ピンポン玉リレーでは四回勝って優勝し、賞金チーム五人で一万円を獲得、ジャンケン大会では勝ち残り一万円獲得と、まったく予期していなかった成果が上がり、同じ職場の三人で分けました。
ビール瓶を片手に、「オレの酒が呑めないのか」とばかりについで回るような社交性はないので、ひたすら自分の席から動かず、回ってくる人たちとの会話を楽しみ、「むかしワルでよぉ、万引きしたり、シンナー吸ったり、盗んだバイクで田んぼに突っ込んだりしててよぉ、鳴らしたもんだぜ」とか、「むかしナンパ師でよぉ、女にモテモテで弱ったよぉ」などと自慢話をする人は皆無で、旅行の話や家族の話、以前勤めていた会社の話などをしていましたが、気に入らない受け答えには「何言ってんだ、コノヤロー、表へ出ろ」とか、反社会勢力の名を出して「半殺しにするぞ」などと男気を発揮する人も皆無で、趣味の話をしても、「オレの写真は二科展級の腕前だ、すごいだろう」とか、「本気で小説書いたら芥川賞取れるけど時間がないだけ」などと場を盛り上げる才能のある人も皆無で、緊張感のないゆったりした時間を過ごし、さらには裸踊りや下品な数え歌の十八番を披露する人も登場せず、度肝を抜かれたり、驚愕のあまり言葉を失ったりすることもなく、残念ながら和やかで平穏のうちに宴会は終了してしまったものの、やはりまっとうに生きてきた人たちと、うそやまやかしのないほんとうの話をするのは充実感があり、こういう話ができる場にいれたことも幸せであり、また何か機会があれば、もう一度、ぜひ話をしたいと思える後味のいい集いでした。