


新幹線のホームには、伝統工芸品の金箔を用い、60本ある柱の上部が金箔パネルで包み込まれ、落下防止のホームドアには、加賀友禅の伝統色、臙脂・黄土・草・紫が使われ、新幹線の藍が滑り込んでくることで加賀五彩が揃う仕掛けになっています。
改札を出て、兼六園口と金沢港口をつなぐコンコースには、24本の能登ヒバ製の門型柱が2列に並び、柱の内側に九谷焼や輪島塗、山中漆器などの人間国宝8名を含む24の伝統工芸品の作品が飾られ、みどりの窓口の前の通路には幅8m、高さ4mの大樋焼の陶壁があり、「百工の間」と名づけられた中二階の待合室には、石川県のさまざまな伝統工芸品236点が能登ヒバの板に丸く開けられた窓の中に展示され、中二階連絡通路のトイレ入口には、兼六園の花鳥風月とアケビの柄の2枚の加賀友禅が新幹線の運行案内の両側に飾られ、間は二俣和紙をガラスではさみ込んで、やわらかい照明になっていました。
兼六園口に出ると、雨が降っていても濡れずにバスに乗れるもてなしドームが出迎え、3019枚のガラスパネルを使って、明るく開放的で斬新な空間は、空と一体になったかのような広がりを感じさせ、加賀宝生の鼓を2脚の柱にして、ゆるやかな曲面を描く面格子の天井の屋根をかけた鼓門は、百万石の美意識と卓越した匠の技とが融合してそびえ立ち、見た瞬間に水準の高さに圧倒され、蓄積された伝統の深さに感嘆し、町の奥深さを印象づける門であるのは間違いありません。
駅はただの通過点ではなく、その町の第一印象を与える場所であり、一般的に、人は第一印象に肉づけして行くもので、機能重視や経費削減などを口実にして、ありきたりの駅舎を建ててしまえば、できた当初は新しくて見栄えがしても、時間とともに劣化して、しょぼくれる一方であり、歴史や文化を踏まえた上で、一点ものにこだわって、駅舎自体にも魅力がなければ、町自体の魅力も色あせ、その他大勢で十把ひとからげにして忘れ去られる存在になってしまうような気がします。