


飛行機に入ってすぐの座席には、一番最初に降機できるという誰しもが納得する理由もありますが、航空会社によっては、誰でもが事前に予約の入れられる座席ではなく、一定の資格を満たした上級会員にのみ指定ができるという知らず知らず自尊心をくすぐられるような隠された理由があり、むしろこちらの方がうれしいために「1A」を確保する面もあり、オタク業界では「アホ1」と呼ばれ、愛されて、親しまれている座席なのです。
一般に、一番前は警備の必要のある政治家や、医師や弁護士や大学教授や予備校講師や芸能人や上場企業の取締役など社会的地位の高い方々のために用意されていて、ソ連製のイリュ―シンやツポレフは、全席エコノミーであっても、軍用に使った場合、将校など位の高い順に座るということで、前の方ほど足元が広くなっているという説もあり、一般人にはまったくどうでもいいことですが、通常、一番前の列は、社会的地位の高い人か、飛行機オタクか、どちらかが9割9分の確率で鎮座しているはずです。
2009年の春、小牧空港から松山へ飛ぶボンバルディアDHC8-Q400という74人乗りのプロペラ機に搭乗した時、荷物検査のところで、警備員や係員に気さくに声をかけ、会う人すべてが会釈をするという人がちょうど前にいて、その人におじぎをして、顔を上げると、見たこともない貧乏くさいおっさんがつづいてきているために、目を合ってしまい、互いに気まずい空気に陥り、荷物を受け取っているその人の顔を見たら、額が頭頂部くらいまで後退しており、真正面から見ると髪の毛が見えず、サイドとうしろに申し訳程度の縮れ毛がついているという顔の広い方で、飛行機に歩いて行く間にも係員が挨拶をしていました。
空港や飛行機を撮影するというルーティンをこなし、怪しまれながら飛行機に近づき、タラップを上り、当然「1A」を予約していたため、身をかがめて「1A」に座りかけたところ、先ほどから前を歩いていた顔の広い方が座っていて、何者かと一瞬ぎょっとしたようでしたが、すかさずCAが「お客様の席はあちらです」とうしろの2Aを差し、瞬時にこのえらい人にどかされたことを悟り、「予約した時はオレが1Aだったんだぞ」とか「オレを誰だと思ってんだ、バカヤロー」とかわめき散らし、騒ぎ立てても、自分がみじめになるだけなので、屈辱を晴らす術はまったくなく、不本意ながら、すごすごと2Aに腰をおろした、というひどい目に遭わされたつらい過去があったとしても、やはり今回搭乗した小松―那覇のボーイング737―400でも、しっかりと「アホ1」を確保していたのでした。