


「古きよき時代」を振り返ると、つらかったり、いやだったりした暗い部分の記憶が洗い流されて、ものはなくてもこころが豊かで、人々は皆善良で、懸命に生きていたかのように思えてくるが、少なくとも昭和30年代40年代の戦後の高度成長期の暮らしぶりよりは、現在の方がはるかに生活は楽になり、家事の重労働から解放されて、自由な時間を謳歌できるようになった。
何よりも、当時、学業であるとか知識であるとかの吸収には、ものすごい努力が必要だったにもかかわらず、いまでは簡単に得られるようになり、受験制度なども公平で、少し頑張れば階層を上げることも容易になったと思う。
「格差拡大社会」だとか「すべり台社会」だとか、厳しい側面もあるが、生活水準は世界でもトップクラスであるし、平成も四半世紀を迎える日本では、昭和の時代に戻って、レベルを思い切り下げるなどということは不可能だろう。
食品業界においても、原材料であるとか、調理法であるとか、衛生面であるとか、かなり進歩した上に、値段もさほど上がっていないというのも素晴らしいところで、いまとなっては、換気扇の油がギトギトになって垂れ下がっているとか、テーブルの上をゴキブリが駆け抜けるとか、何の肉なのか何が入っているのかわからないようなどんぶりを出すとか、いかがわしい店も懐かしい感じもするが、当然ながら、滝見小路にはこざっぱりした「モダンなレトロの店」が並んでいた。