小学3年生の時から地域のソフトボールチームに入って、あまりうまくはなかったが、練習には熱心に参加して、仲間とともに汗まみれになって、充実した日々を過ごしていた。
小学4年の夏休み、校庭で練習をしていた時、同じチームではない、現在は一部上場会社になった4代目の最上級生の御曹司が弟とともに私たちの様子を見ていて、何かのきっかけで話をするようになり、「いまからうちへこいよ」という流れになって、7、8人の仲間と自転車に乗って、兄弟のうしろについて走って行った。
勉強ができるという評判は聞かなかったが、体格もよく、健康優良児として表彰されたり、スポーツでの活躍が目立ったり、当然ソフトボールも桁違いにうまく、みんなに知られている存在だったため、私たちも喜んでついて行ったのだが、大きな家を見て、少々ひるみ、玄関を入って、うちの居間よりも広いのに圧倒され、廊下を歩いていくつかの部屋を通り過ぎ、お手伝いさんが用意してくれた座卓の前に泥だらけのユニフォームのまま座らされ、菓子がてんこ盛りの鉢を持ってきて、レモンスカッシュを人数分出してくれた。
田舎のクソガキにとって、レモンの輪切りが浮かんでいるようなハイカラなものは飲んだことがなく、あまりの酸っぱさに顔をしかめていると、「口に合わないのなら違うもの持ってきますね」と言いながら、席を立ち、しばらくしてトマトジュースを運んできてくれたのだが、これも初めて見るようなもので、とても飲めるような代物ではなかった。
子供心にも、住む世界が違い過ぎて、嫉妬とか羨望など感じる次元ではなく、「こんな立派な家に入れてもらっていいのか」という申し訳ないような気持ちが浮かんできて、居心地はよくなかったが、何だか嬉しくもあり、ありがたくもあり、貴重な社会科見学にもなり、時折懐かしく思い出し、いまもいい経験だったと感謝している。