世界第2位の建設機械メーカーが創業の地に本社機能を移転させる最大の理由として、「社員の出生率が東京0.5、大阪1.5、石川2であること」を挙げ、一極集中のリスク分散などの意味合いもあるだろうし、少子高齢化に歯止めをかけようと動こうとしているが、実際は、東京から移転させるのはかなりの困難をともなうと思われる上、この大英断の実現までには紆余曲折が予想され、一筋縄ではいかないだろう。
日本の将来は、今後の人口減少と65歳以上の比率の上昇で、明るい未来が訪れるとは考えにくいが、ただぼんやり眺めているだけではなく、できることから始めないと、想定外の厳しい社会になっている可能性も高い。
アメリカの自動車会社を創業したフォードは、事業が軌道に乗り、利益が上がり始めたら、従業員の給料を引き上げ、疑問を呈した他の経営者に、「社員の生活が豊かになり、クルマを買えるようになれば、士気も高まり、会社のためにもなり、めぐりめぐって景気もよくなり、さらには社会全体がよくなる」と答えたそうだ。
ただでさえ疲弊している地方経済がさらに衰退しないためには、ハコモノの数とどうでもいい指標の見せかけの幸福度などではなく、教育、医療、介護、交通機関など生活を支える基礎を充実させ、自己実現のための施設も整備され、具体的に「30歳で暮らし始めたらこのような毎日になり、このような季節がめぐり、このような人生になる」といった明確な姿が思い浮かぶようにしないと、すべての面で優位に立つ都会から、優良企業の本社を移転してもらうことなど、掛け声倒れに終わるだろう。
地方には、グローバルな競争力はないかもしれないが、豊かな自然があり、安心して口にできる水や食べ物があり、何よりもあたたかい心と優しいまなざしを持った地域のコミュニティが残っているため、仕事に真剣に取り組めて、オフの時間にゆとりを感じることができる環境はあるのだから、継続的な発展と、業績向上にも寄与するのではないか、とひいき目に見て、そう思う。