「自転車のチューブをくれ」と いって、近所に住む家族が軽自動車に乗ってやってきて、塀にぶら下げておいた束を、勝手にごそごそとあさり始めた。
「破けたりしたものだから、自転車には使えませんよ」と私が言うと、「自転車に使うんじゃない」と70近いと思われる父親が不機嫌そうに答え、その息子が「ドラム缶に巻きつけるためにほしい」と言葉を継いだ。
この息子は30を少し過ぎたくらいで、農業高校を出てから一度も就職したことがないそうで、家の農業の手伝いをして暮らしているらしく、今年の春頃にアルバイトにきてもらったことがあるのだが、始まりの時間から30分以上遅れてくるし、紙くずを入れた段ボールを持ち上げることができないし、ひとつのことを長くやるのが苦手のようであちこちうろつき回って仕事ははかどらないし、2日でさすがにお引取り願ったことがあった。
母親も一緒にちょうどいいサイズのチューブを探していて、からだが少し不自由らしく、その辺のものをひっくり返したり、転びそうになったり、気の毒な感じがしていたのだが、そのたび父親が口汚く罵ったり、どやしつけたりして、端で見ていて気持ちのいいものではなかった。
私は見かねて「そんな言い方しなくても」などと声をかけてしまい、父親が私にも食ってかかるように怒鳴り返してきたら、息子が「古いタイプの人間だから、仕方ないんですよ」などと情けなさそうな顔をして間に入ってきたのだが、「古いタイプの人間だからじゃなくて、その人特有の性分だろう」と言いたかったのをこらえて、二の句は継がなかった。
「破けたりしたものだから、自転車には使えませんよ」と私が言うと、「自転車に使うんじゃない」と70近いと思われる父親が不機嫌そうに答え、その息子が「ドラム缶に巻きつけるためにほしい」と言葉を継いだ。
この息子は30を少し過ぎたくらいで、農業高校を出てから一度も就職したことがないそうで、家の農業の手伝いをして暮らしているらしく、今年の春頃にアルバイトにきてもらったことがあるのだが、始まりの時間から30分以上遅れてくるし、紙くずを入れた段ボールを持ち上げることができないし、ひとつのことを長くやるのが苦手のようであちこちうろつき回って仕事ははかどらないし、2日でさすがにお引取り願ったことがあった。
母親も一緒にちょうどいいサイズのチューブを探していて、からだが少し不自由らしく、その辺のものをひっくり返したり、転びそうになったり、気の毒な感じがしていたのだが、そのたび父親が口汚く罵ったり、どやしつけたりして、端で見ていて気持ちのいいものではなかった。
私は見かねて「そんな言い方しなくても」などと声をかけてしまい、父親が私にも食ってかかるように怒鳴り返してきたら、息子が「古いタイプの人間だから、仕方ないんですよ」などと情けなさそうな顔をして間に入ってきたのだが、「古いタイプの人間だからじゃなくて、その人特有の性分だろう」と言いたかったのをこらえて、二の句は継がなかった。