各地で金属盗が相次いでいる。
私の購読する地方紙でも、週に二、三度記事を目にすることがある。
私のような零細のところからも、アルミホイールなどが盗まれる。
二年ほど前、初めて鉄ホイールが盗まれた時は、「時代が変わったなあ」と感無量だった。
私のところから盗んでも、誰にも捕まる心配はないが、ちゃんとした店に入り込んで盗んでいるところを、現行犯で警察に逮捕されることを考えたら、リスクは高いだろう。

私が廃プラスチックを回収しているディーラーから、朝一番に電話があったので、さっそく出向いていった。
積み込み完了して、一息ついているところへ、店長が苦笑いしながらやってきた。
「今朝、6時ころに電話があったので、びっくりしたー」
「何か、あったんですか」
「ミ○○会ってトラックが、チェーンを外して、敷地の中に入り込んで、バッテリーを勝手に積み込んでいる、って近所の加○さんが、電話してきてくれた・・・」
「それって、泥棒じゃないですか」
「加○さんが『何しとるんやー』って怒鳴ったら、『頼まれて来てるんやー』と答えたらしいんで、『じゃ、店長に電話して聞いてみる』ってことらしい」
「警察に訴えた方がいいですよ」
「加○さんも、証人になってやる、っていってくれてはいるんだけど」
「ほんとうに、ぜひ訴えてくださいよ」
「それはそうだけれども、面倒で」
「そもそも、無断で敷地の中に入ること自体、犯罪ですよ」
「ゴミを盗まれたっていうのも、なんかなあ」
というやり取りがあったのだった。

5年前、私がこの店で、新車のトラックを購入した時にも、このような事件があった。
私が、新車の件で、裏口からクルマで入ろうとしたところ、キャンターの平ボディのトラックが停車していた。
私はクルマを停め、何事かと見守っていると、タイヤを両脇にぶら下げたオヤジが出てきて、荷台に放り投げた。
再び、店の敷地内に歩いていき、またタイヤを両脇にかかえて出てきて、荷台に積み込んで、発進していった。
とりあえず、私はトラックのナンバーを控えておいた。
そして、いまのオヤジは、何者なのか、と店長と担当者に詰問した。
さらに、これが店側が依頼して出しているのなら、購入予定の新車はキャンセルする、と強硬に抗議した。
店長も従業員のみなさんも、そんな人は知らない、タイヤを持っていっていいとは誰も許可していない、ということだった。
私は、朝の忙しい時間帯だということと、やるべきことがあったので、夜、もう一度話をする、ということで引き上げた。

「私が証人になるので、いますぐ、この場で、警察に電話をしてください」
「そうでなければ、新車はキャンセルさせてください」
と一貫して私が主張したのに対し、ひたすら謝り、今後はそのようなことがないように気をつける、というばかりで、話は平行線のままだった。
夜も10時をすぎ、煮詰まっていたので、私は折れることにした。
「新車は購入します。今後ともよろしくお願いいたします。貴重な時間と手間を浪費させてしまい、申し訳ありませんでした」
という形で、落着させて、今日までつきあいはつづいている。
あちこちでこの話をしたところ、このタイヤ泥棒の「富ナンバーオヤジ」は、けっこうな有名人で、私よりもかなり長期間「営業」している「ベテラン」のようだった。

無断持ち去り、つまり泥棒でメシを食っていく、というのは、普通に考えて長続きしないものだと思うのだが、古紙や鉄くずなど、換金性のあるゴミを取り扱っている方々の場合は、家業として成立しているのだ。
以前、滋賀県からきている、軽トラにマイクをつけて路地の隅々まで回っている人が、私と知り合いに向かって、
「バイクが盗んできたモノってバレると、めっちゃ面倒くさいんや。警察と一緒に、ここから盗りました、ここからも盗りました、って回って歩かないといかんからなあ」
と自慢げに話すのには、仰天した。

ミ○○会さんも、この業界では、毎日毎日大変な量をかき集めてくる、つまり高給取りとして、知らない人はいないくらいだ。
「あやしいんじゃないの」
とやっかみまじりに話す人は何人もいたけれども、邪推の域は出なかった。
今日、この話を、数人に電話をかけて知らせたのだが、驚く人はいなかった。
結局、今回も警察沙汰にはならないだろう。
スクラップ価格の高止まりがつづく限り、ミ○○会さんの高収入はつづいていく。
三県か四県にまたがって、流れながら、かき集め、問屋にすとんとおろすだけで、私にとってはうらやましい限りの金額がミ○○会さんの財布におさまっていく。
そんなに稼いで、何に使うのか、一度聞いてみたいものだ。

また一ヶ月くらいしたら、早朝、心地よい汗を流すミ○○会さんの姿が見られるだろう。