かっぱらわれたものを取り返す、という物語は数多くあるが、象、それも親子の象となると、世界の映画史上、初めてといって過言ではないだろう。
体を張った演技がウリのタイ人アクションスター、トニー・ジャーの出世作「マッハ!」でも、持ち去られた仏像を取り戻すため、ひたすら肉体を酷使して、悪党どもをなぎ倒し、屋台や建物を壊しまくっていた。
今回は、取られたものもスケールアップした上、オーストラリア・シドニーまで出かけて暴れまわる急成長ぶり。
英語は一言も発せず、相手が誰であろうとタイ語で、「象を返せ!」というド迫力。
よくもまあ、次から次へと現れるもんだと感心するほど、ボディーガードや武闘家に戦いを挑まれるが、象を見つけるための試練を乗り越え、ついに黒幕のいる「トムヤンクン」というタイ料理店へとやってくる。
チンピラどもを蹴散らし、店の備品もかなりぶち壊し、最上階のレストランへたどりつく。
まさか、最愛の家族が、食材になっていたりして・・・。

  生きているのか
  食われているのか
  珍獣だらけの 素敵な食堂
  つれて帰るぞ
  あなたの村に
  名を呼びかける
  タイランドの象に

ここまで愛された象は、とても幸せだ。
私も、象は好きだ。ただし、見ること限定で。
タイのアユタヤにいた象は、観光客を乗せて公園を一周しているか、10頭ほどがケツを並べて草を食み続けているか、どちらかしかしていなかった。
バンコクのローズガーデンの象は、観光客が上る階段の脇にいて、食べものをくれー、とばかりに鼻を伸ばしてくるばかりだった。
コラートの繁華街では、私の肩ほどの子象が、少年と一緒に歩いていた。私がさとうきびを少年から買って、子象に与えると、あっという間に食べ終わった。象のアタマは硬くてざらざらしていた。
のっそりと夜の闇に消えて行った、あの子象を盗もうという気は、私には露ほども起こってこなかった。
そんな私のくだらない思い出話はさておいて、タイから盗まれた親子象の運命はどうなっていたのだろうか。
トニーと一緒に故郷に、帰ることはできるのだろうか。
それは、見てのお楽しみということで。