もう何度も書いているとは思うんですが、私は自分を形作る9枚のアルバムは?と聞かれたら、その中の一枚に必ず”No New York”を入れますね。青たん作ったJames Chanceもカッコいいんだが—-未だに私のフリージャズのサックスのデフォはJames Chanceなんですよ—-、やはり直感的に好きなのは、Marsなんです。ギター2本にベースとドラムと言う当たり前の構成ながら、奏でられる曲ははっきり言って「なんじゃこりゃ⁉︎」レベルの酷く痙攣した無茶苦茶に聴こえる曲ばかり。特にイーノのプロデュースした為か、極度に硬質な音はMarsのMarsたるバックボーンを炙り出している。バラバラながら、辛うじて体裁を保っている綱渡りのような演奏。これが彼らの魅力なんだと思う。

 そんなMarsですが、サブスクでライブ音源を聴いた時から、またまたMars熱にうなされました。それが引き金となって、Marsのリリースを集め始めました。元よりスタジオ録音の少ないバンドですが、数枚のCD(ライブ盤を含む)を買ってはいたのですが、ここんところ、レコードにも触手を伸ばし始めた訳です。”78”に始まって、”Live at Artists Space”、”Live at the Irving Plaza”は勿論、”Mars Archives vol. One: China to Mars”, “Mars Archives volca.Two: 11000V to Tunnel”や”Mars Archives Three:N.N.End”そして、EP”3E/11000V”まで。どれもギリギリとしなる有刺鉄線のような演奏で、堪らんですな。そして、とうとう、3本組カセット”Rehearsal Tapes and Alt-Takes NYC 1976-1978”まで。この3本組を聴くと、MarsがVU直系のルーツを持っていることに気がつく。特にバンド最初期のピアノヴァージョンはかなりVUっぽい。独特の不安定なアンサンブルなのだ。思い返せば、高校生の時、阿木譲氏のFMラジオから流れてきた”No New York”収録のMarsの”Tunnel”や”Helen Fordsdale”と言った曲にぶちのめされてからずっと追っていたバンドである。来日して欲しかったが、ギターヴォーカルのSumner Craneが、2006年にドラムのNacy Allenが亡くなっているので、もう無理なんでしようが、一度は見てみたかったですね。また、Phewさんをして「無意識の音楽」で、そのせいで、メンバーが死んでるんでは?と言わしめたバンド。それでも安直に「VUの後継者」だとか「テク無しのVU紛い」と言っても収まりきれない魅力(魔力)に満ち溢れたバンドだと思う。バンドを続けることで、どんどん壊れていくサウンド!あと、1980年に出されたEPだけでコンプリートできる❗️あと少し❗️しかし、今、これを書きながら聴いているカセット3本組は凄いなぁ。私が音楽に目覚めた頃にはもうバンドが存在したんですよね。しかも、メンバー全員、それ以前にバンド経験がなく、Mars(その前身はChina)を結成してたんだからね。「無意識の音楽」、確かにそうかもしれません。それは演奏者の意識を蝕む音楽なのかもしれませんね。なんてことをつらつら書いている天気の良い日曜の朝。

Mars “78”


Mars “Live at Artists Space”


Mars “ Mars Archive vil. Two: 11000V to Tunnel”


Mars “3R/11000V” EP


Mars “Rehearsal Tapes and Alt-Takes NYC 1976-1978”