2020年はリリース・ラッシュであった。しかも限定とか少数リリースとかが多いので、結構捌けるのは早く、助かってます。まあ、リリース・ラッシュとは言っても、リイシューが殆どで、新作もこれくらい出したいとは思う。なので、ここ1年を振り返って、2020年のリリースについてちょっとまとめてみたい。

1) K. Kusafuka “Re-Musik” (c-46) tribe tapes
 これは日本最強だったカセット・レーベルDD.Records(1980-1985)から27年ほど前に出してもらったカセットのリイシュー。当時、既にノイズを始めていたのだが、Roland SH-101シンセを買った時に、シーケンサー機能があったので、使ってみたくて作ったテクノ・ポップ(今で言うミニマル・ウェーブ)な作品です。一応、ちゃんとした音楽です(苦笑)。DD. Recordsの鎌田さんが同時期に”Re-Music”を出したのとシンクロした運命的アルバムだった。ここからDD.Recordsへと繋がりができて行った。

2) K2 “Sexencyclopedia” (5CD box) NewForces
  00年代に出した4枚組のリイシューなのですが、再発に当たり、リミックスCDが加わり、5枚組になりました。当時、Merzbowが”Metal Veldrome”4枚組CDを出していたのに感銘を受けて、作り上げた作品でした。当時のスタイルはメタル・ジャンクとシンセの電子音、ヴォイスとかをごちゃごちゃにカットアップ・ミックスした作品ばかりでしたが、これはその路線の極地点でもありました。なので、リイシューのお話しは嬉しかったし、何よりも元の4枚のCDを素材にして、T.美川さん、Sissy SpacekのJohn Wiese、The HatersことGX Jupitter-Larsenと遠藤一元くんがリミックスを作ってくれたのが嬉しかった。ジャケ写はレーベル側が元ジャケを利用したもの。



3) K2 “Burst After Burst: Early Recordings 1990-1996” (5CDs in wooden box) Urashima
 これもリイシューものをコンパイルしたボックスです。第二期K2(1994-2002)を始めた時に、ちょい古い未発表作品(“Materia Informis”)や第二期最初期のドローン・ノイズ(“Autopsy Soundtrakks”, “Souls Are Kontrolled By Molekules”)そしてメタルジャンク・カットアップ・ミックス(“Rusty Tongue”, “Destruktion For Model Citizens”)までを網羅してます。どれも当時は単品で、かつカセットで出していた作品だったので、こうやって纏めてみると色んなことしてたんだなぁと感慨深いものです。それぞれのCDは元のジャケを使って、浦島特有の木箱(玉手箱)に納められてます。丁寧な作りに感激しました。

4) K2 “Rainy Tritium 2” (digipack CD) 4iB Records
  これはリイシューではないですが、リリース元が決まらず、音が出来てからちょっと時間が空いた作品です。そのタイトル通り、「福一災害」シリーズの2作目ですが、ここでは、セミ・モデュラーやオシレーターをふんだんに使った自称エレクトロ・コア(電子音楽のハードコア)な作品になってます。ここでは最早、カットアップ・ミックスは殆ど使ってないです。その分、ダイナミックレンジの広いノイズ作品になったように思います。元々、福一の事故後、放射能汚染について自分なりに考えていたことを具現化する為に作りに始めた連作で、もうすぐ(?)第三弾が別レーベルから出ると思います。

5) K2 “Hypertrophy” (特殊包装c-60) Nefarious Activities 
  これもリイシュー。元々は1995年位に米国Banned Productionsから出たカセット作品を、Nefarious Activitiesかリイシューしたいとのことで、出してもらいました。当時は少しマスタリングの音量を上げたつもりでいましたが、今聴くとそうでもないですね。ジャケはレーベル側が作ったものを採用しましたが、現物を見たらなんだかごちゃごちゃし過ぎていて、イマイチでした。でも、この時期は、安価なアナログシンセにエフェクター沢山繋いで、目一杯多重録音した作品で、少しだけカットアップ的な部分が萌芽してきてます。なのでミッシング・リンク的作品です。

6) K2 “Hepatopolitika” (LP) Urashima
  これもリイシュー。元々は独のMembrane Debile Propaganda からクリアー盤かつクリアージャケで出してもらった作品ですが、今回は、黒の通常盤での再発になりました。リマスターリングも施されており、音的には大満足です。この作品では、シンセもメタルジャンクも余り使わず、テープやカシオトーン、プリペアード・ベース/ギター、そこら辺のガラクタなどの具体音と楽器音をベースにコラージュ的にミックスした、K2としては「異色」な音響作品です。なので、P16.D4に対する日本からの返答として作った記憶があります。これ、現物を一枚しか持っておらず、しかもマスターDATも最初のレーベルに送ってしまったので、再発されて良かったとひと安心しました。

7) K2/ASTRO/V.O.E.R. “Subconscious Error” (digipack CD) 4iB Records
  これは新作。確か、「一組20分で2曲のみ」と言う縛りで各アーティストの曲をコンパイルした作品。K2のモデュラーシンセをふんだんに使いながらも、歪み系エフェクトを殆ど使わないダイナミックなエレクトロ・コアな音像、ASTROの轟々とした音塊ながらコズミックですらある電子ノイズ、そして、スウェーデンのKrister Bergmanの新プロジェクトV.O.E.R.によるアジテーション・ヴォイスを加えた強度の強いパワエレ的ノイズが収められている。電子音を使ったノイズでも三者三様であることが露呈した好作品です。縛りの意味は聴いた時、初めて分かる❗️

8) Incapacitants/K2 “We Are All Stupid” (CD) NewForces
 これもリイシュー。1998年にギリシャのAbsurdから限定CDRかつ紙やすりジャケで出してもらった作品。各アーティストの単体曲を1曲づつ、3曲目は東京Heavens Doorでの両者のコラボ・ライブ・トラックが収められている。元のCDR作品は、紙やすりのせいか、盤に傷が入りまくりで、ちゃんと再生できなかったりと、買った人から苦情が多かったらしい。でも、今回はJohn Wieseがアート・ディレクションしてくれて、そう言う特殊包装はなくなり普通に聴けます。内容は推して知るべし。インキャパの高周波ノイズの連動、K2のメタルジャンク音の人力カットアップの速度、コラボ・ライブでの阿鼻叫喚な混沌、どれも魅力的であると思います。

9) K2/HarshFiend “沈黙” (CDR) Mapawi Records
 カナダのJoからのお誘いでの新作スプリット。装丁はチープだが、内容は良い(と思う)。K2は段々と増えてきたモデュールを駆使してのエレクトロ・コア(電子音楽のハードコア)な曲を、HarshFiendはJoのユニットだが、私はこれを出すまで未聴だったので、余り良く覚えていないが、ハーシュノイズ(嫌な言葉だ!)よりもオールドスクールなインダストリアルに近い印象があったように思う。まあ、CDRと言う媒体自体、余り好きではないので、これは将来的にはCDとして再発したいものではある。


10) K2 “Cruel Truth” (c-30) DeathBed Tapes
  丁度、去年、名古屋と京都で連チャンライブを演ったのですが、その時の音をエアーで録った音源を、なんと!元After Dinnerの頭脳こと宇都宮泰氏にマスタリングしてもらったんですよ。でも、マスタリングでこんなに変わるとは思いませんでした。A面が京都の、B面が名古屋の時のライブ音源です。元の録音が酷かったので、かなり宇都宮氏には弄ってもらったのですが、やはりライブの時に聴こえている音の印象とは違いますね。そう言う意味で、やはりライブハウスで体験する音楽は部屋で聴く音楽とは別物だと思います。コロナ時代の最近のライブハウス実状を関しての考察です。

11) K2 “Polygon You Dream” (c-60) Gristle Audio
 これは新作。元々は作品名は”Polygon Your Dream”だったのですが、レーベル側がそうじゃないと思って上記のタイトルになりました(言葉遊びで付けたタイトルで、特に意味はない)。宅録舐めんなよ的に、自宅リビングのスタジオ(?)に常設されてるモデュラーシンセをガンガンに使って録音し、暫く寝かせた後にミックスダウンした、エレクトロ・コアな作品です。特殊パッケージのものも限定でありましたが、それほど凝った特殊包装ではなかったです(ちょっと残念❗️写真は特殊包装)。何度も言いますが、「ハーシュノイズ」とか「カットアップ」とかはもうスノッブなので、そこから離れたいですね。

12) K2/K.Kusafuka “Demise Symphonika” (c-50) Tribe Tapes
   今年のリイシュー物の中で、一番嬉しかった作品です。これは1984年頃(かな?)に、日本の自主制作レーベルDD.Recordsから出してもらった作品なのですが、今時の言葉で言うとダーク・ウェーブ風なミニマルな曲調のA面と、ディストーションを使わずに混沌としたMB的電子音の海から立ち現れる教会音楽のようなB面からなる長尺の2曲からなっていますが、「輪廻転生」をテーマにしたコンセプトアルバムみたいで、今から思うと自分なりの「プログレ」なんだろうなと思います。当時は、勿論、そんなことを狙ってた訳でもないし、プログレにハマっていた訳でもないんですが。DD.Records関係の吉松さんに言わせると「暗黒チャンバー音楽」あるいは「初期クラウトロックの暗黒面」とのことでした。自分でも、何でこんな作品を作ったのか?全然覚えていないのですが、思い入れがあり、ちゃんとリイシューしたかった作品なので、カセットながら再発出来て嬉しかったです。

13) K2/Viviankrist/RisaRipa “Autocrine” (CD) Phage Tapes
  これは元々、ViviankristさんとRisaRipaさんがコラボのカセットとデジタル音源を出していて、SNSで気になっていたので、実際に作品を買って聞いてみました、そこら辺が、最初だったと思います。またRisaRipaさんが「宅録、舐めんなよ」とのツイートにも痺れました。それで二人が元GalhammerのBとDrであったことも知ったのです。それで、今回は、機材(オシレーター)は3台まで(ヴォイスは1台と見なす)、エフェクターは5台までで、一組20分以内と言う縛りで、3way splitを作りましょうと提案して生まれた作品です。当時はまだ、3人ともセミモデュラーしか持っていなかったので、そのような縛りにしました。ヘビーなキック、不思議な魅力のヴォイス、強靭な電子音、3種3様ながらも、全体を通して、一つの作品に聴こえると言う不思議な作品になりました。曲順などは偶々私が適当にしたのですが。海外ではパワエレとかインダストリアルの括りで扱われているみたいです。そして3人とも、今はモデュラーに移行しました。モデュラーでもまたやってみたいですね。

14) TNB(The New Blockaders)+K2 “虚無の音” (LP) 4iB Records
   いつの事かはもう忘れましたが、TNB tribute盤に参加した時の関係か何かで、Richard (Rupenus)との繋がりができて、まあ、コラボ・スプリットを作ろうの話がまとまってから、10年振り位にやっとリリースされた作品。これの前に、突然、米国Banned ProductionsよりTNBの音源を私が再構築した作品がカセット(“Oozing Ruin”)で出されてますが、本当のスプリットはこちらの方になります。兎に角、Richardの返事が遅い‼️中々、TNB側の作業が終わらず、やっとこさ10年振り位にリリースされました。が、私が送った曲が2曲とも使われているので、TNB側のトラックが少なくなっており、そこが、ちと残念なところてはあります。また、私のミックスもジャンク・エレクトロニクスとカットアップ・ミックスを使っていた頃なので、自分的には懐かしい感じもしますね。でも、何で、Richardが私と交流してくれたのか?未だに謎です(勿論、私もTNBのファンなので嬉しいですが。謎です)。あと、ジャケ写のアートワークは一番古いノイズ親友のGX Jupitter-Larsenにしてもらいました。この3者は80年代から活動していると言う意味で、初めての開合となりました。不思議な縁ですね。

15) K2 “Tekhnodrug” (CD) Narcolepsia
  今年のリイシューのキッカケになった作品かも知れない。これも第二期K2最初期の作品で、自分のレーベルKinky Musik Instituteからc-60カセットで出したものを、NarcolepsiaがCDで再発したいと言ってきたので、即OKした。でも、この頃の音源は、未発表も含めて、ちょっと恥ずかしいんだよね。まだ、機材の扱いがノイズ向きにこなれていないので、自分的には稚拙な印象がある。まあ、そこを含めても希少音源なんでしょうが、因みにこの元作品の後に出た(上述の)”Hypertrophy”は、この作品を元にリクリエイトした作品でもあったので、両方を聴き比べるのも一興かと思います。内容的には、チープなアナログ・シンセの多重録音をぐちゃぐちゃにミックスしたもので、多少、音圧が上がっており、かつ無機質な感じになってます。中心音の無い音楽。ちなみにジャケ写はオリジナルと一緒です。

16) K2 “They Live We Slave” (c-60x3 set) Narcolepsia 
   忘れちゃいけない、この60分カセット3本組❗️録音自体は去年かその前だったと思うのだが、突然、レーベルから私の分が送られてきたので、びっくりしたブツでした。多分、まだモデュラーシンセがなくて、セミモデュラーやオシレーターとエフェクターなんかで多重録音してた頃の作品なんですが、カセットならではのもこもこした作品になっており、自分としてはイマイチかなあと思っていたのだが、いざ買ってもらった人からは「凄い良かった!」とのお言葉を沢山頂きました。例えば、初期〜中期M.B.のカセット作品に音の感触が似ているからかな?タイトルは勿論、あの映画から引用しました。自分にはサプライズ的作品。丁度、電グルの方がドラッグで逮捕されたタイミングでした。ジャケもその印象あり(これは私のアートワークではない)。

長々と書いてしまいましたが、まあ、買う時とかは参考にしてみて下さい。また、東京Los Apson、名古屋File_Under、京都Parallax Records、大阪Forever Recordsでも取り扱って頂いてる作品もありますので、手に取ってみて下さい。また、SNSで直に買ってもらうと、お安くなりますので、よろしくお願いします🤲🤲🤲