私がパンクに洗礼を受け、ノイズに走った経緯はその1とその2で述べましたが、その後はどうであったか?を簡単に書いてみたいと思います。
第二期K2は1993,4年頃から始まる。元々はキーボーディストだったこともあり、シンセとは親和性があったので、とりあえず、シンセ音を多重録音してノイズ・ミュージックをやろうと考えました。あと、90年代初頭というのは、所謂、”Japanoise”の嵐が吹き荒れた時代であり、また、同時にノイズ・ミュージックと言うジャンルが定着した時代でもあります。「月刊Merzbow」と言われたように、秋田さんはcheap electronicsから大音量のハーシュノイズをバンバン量産し、非常階段やIncapacitants、C.C.C.C., Masonna, Aubeといった日本からのノイズ・ミュージックが毎月のように放出されていた時代でもあります。ところで、「ノイズ・ミュージック」というと、喧しい音楽と言うイメージが先行しますが、音響系とか無音系と言った音楽では、きめ細かな音(ノイズ)の音響工作からなる静謐なものもやコラージュものもノイズ・ミュージックなのです。そこを忘れてはいけませんよ。とは言うものの、ノイズ・ミュージックのメインストリートは所謂「ハーシュ・ノイズ」が占めていたのであった。ちなみに、80年代にノイズ・ミュージックをやっていた頃には海外のZineのレビューではよく”harsh”と言う形容が為されたが、90年代のハーシュとはまた意味合いが異なるようにも思う。所謂「耳障りな」と言う意味であろう。そんな中で私は初のCD”Metalplakia (鉄板症)”を出すことになる。この頃のK2は後々その代名詞となるメタルジャンク(メタルパーカッションではない)を多用することになるのだが、まあ、それについてはもう書いたかな?更に8chカセットMTRと強烈な歪みを生み出すイコライザーを搭載したマルチプロセッサーを入手したことから、メタルジャンクを叩く、擦る、ぶつけるなどなど色んな奏法とコンタクトマイクを仕込んだ金属棒Friktorを使った演奏を始めた訳である。それらの音を何の脈絡も無く、一旦録音し、それらをplayして自分の耳で聴きながら、瞬時にオン・オフしていくカットアップ・ミキシングに注力することになる。よって、カットアップは90-00年代第二期K2の代名詞ともなる(今どき、カットアップと言っているが、それはもう古い手法なのですよ)。また、海外との交流も、インターネットが普及したこともあり、スムーズに行えるようになった。まあ、いい。メタルジャンクやカットアップについてはまた、別の機会にしよう。
仕事の関係で、大阪に引っ越したが、仕事が忙し過ぎて、音楽ができなくなったのは誤算であったが、運良く、次の職場を見つけることが出来て、静岡を拠点にすることになったのである。ここからが第三期K2になる訳です。そして、借り上げ官舎に住むことになったので、メタルジャンクのようなものを置く場所も演奏する自宅環境もなくなったので、考えたのが、ミキサーのフィードバックによるノイズ音源の作成である。要するに、ミキサーのアウトプットをインプットに入れて、小さなヒスノイズをルーブさせることで大音量のノイズを作ると言うものだ。当初はこれをjunk electronicsと呼んでいた。この頃は、カセットMTRに代わって、16ChのHDD-MTR(ただし使うのは8chか10chのみ)を使っていたのだが、やはり、ミキシングはカットアップ法で行い、作品を作っていたのだった。この頃から、ガジェット・シンセ(要するにおもちゃ紛いのシンセっぽい楽器や鍵盤の無いオシレーター)を集め始め、それらを先述のミキサーのフィードバック・システムに組み込んでいった。それは段々、エスカレートしていき、2014年位から、それまでと反転して、ガジェット・シンセやオシレーターをメインにする様になっていった。理由の一つにライブの時、運ぶのが重いというのもあったが、興味がフィードバック音から、アナログのシンセやセミ・モデュラーの電子音に移っていったこともある。かなり長いこと、セミ・モデュラーを集めて、頑張ってきたが、とうとう2017年頃から本格的にモデュラーをメインにする様になった訳である。初期費用を含めて、1年で100万はつぎ込んだと思う。こうして、モデュラーの沼にズブズブと脚を踏み入れた訳である。しかし、ここでも、自分のやりたいことはノイズ・ミュージックであったので、とにかく変な音の出るモデュールを買い集めた。当初はMake Noiseが気になっていたが、今はMutable Instrumentsが気に入っている。特にRingsとか。そして、そのちょっと前から、ミキシングの際、カットアップを使うことを気にしないようになってきた。ひとつは、機材の面でカップアップのキレが悪いこと、もう一つは世の中にカットアップを標榜するノイズ・ミュージシャンが沢山現れたことで、これらの理由で、辞めてしまった。また、harsh noise wallと言うサブジャンルもできたこともあり、ネコも杓子もノイズ!ノイズ!と言い出し、ハーシュノイズと言う言葉が凄くスナップな感じになってきたので、それが嫌になり、自分は、自らのノイズ・ミュージックを「電子音楽のハードコア」すなわち”electro-core”と呼ぶことにした。他人様がハーシュとか言うのは別にいいけれども、自分の立ち位置はあくまでも電子音楽であると思っている。それは指先の神経を電子機器の基板に直接接続する感覚であり、電脳音楽でもある。今のところ、たどり着いたのが、このelectro-coreでありエレクトロである。そんなつもりで、音楽を作ってます。基本的に一発録りはしないのだが、時々、一発録りで、モデュラー・シンセの作品を作り、”Improvised electro-core”シリーズとしてSNSにアップしている。一方、ミキシングはより柔軟にかつ大胆になってきている。もうノイズ始めて35年以上になるからね。それなりのこだわりと自負があると言うものである。また、これからどうなるかは分からないけれど、とりあえずはElectro-Coreで行きます!!
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