今回は、民法の抵当権者の救済手段を整理しようと思う。

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 論文式試験において、抵当権侵害の事例で当事者が何を主張できるかが問われることはよくある。そのような事例が出された場合、可能な手段が多く考えられるから、事前に判例や通説的な学説の立場を踏まえて準備をしておくことが望ましい。そこで、民法上、裁判例・学説において一般に承認されている手段につき、どのように答案上構成していくかを以下にまとめた。

※今回は詳細な中身には立ち入らないこととする。詳細な議論の中身の理解については、各自、基本書や参考書等を利用していただきたい。「民法上の諸論点についての議論を全て理解した上で、ではそれを答案上どのように構成するのか」という点についての一例を提示するのが今回の目的である。なお、司法試験において、抵当権者の救済手段が問われた場合には、他の設問との配点割合や問題文の特殊性に応じて、一部を省略したりあるいは新たな議論を展開することももちろんある。常に下の構成を機械的に吐き出すわけではないことは、言わずもがなである。

【抵当不動産の従物についての差止め・原状回復請求の事例の処理手順】

第1.抵当権に基づく物権的請求
1.効力の範囲
従物は「付加一体物」として370条により(設定の前後問わず)効力が及ぶ。
2.要件
①抵当権侵害
      (ⅰ)通常の用法以外の用法によって、 
  (ⅱ)抵当目的物の交換価値を減少させたこと
     ※(ⅱ)につき、被担保債権の弁済額の減少は不要。
           ∵不可分性(372・296)
3.対抗
(1)従物の対抗要件は、主物の抵当権登記(177条)により具備される。
(2)Q従物の売却・搬出
      公示の衣説
      →抵当不動産の公示された範囲にとどまっているか否か
      cf) 即時取得説

第2.その他の請求(主に、対抗不可の場合)
1.従物の売却代金への物上代位(372・304条)
→肯定説(但し、選択的にのみ請求可)
※問題意識=抵当権には追及効があることとの関係
2.抵当権侵害を理由とした709条
  (1)要件
   ①抵当権侵害
   上記の(ⅰ)(ⅱ)
      (※(ⅱ)につき、被担保債権の弁済額の減少が必要)
  (2)行使時期
→弁済期到来後であれば、抵当権実行前でも可。
3.期限の利益喪失(137②)により、抵当権実行
4.設定者に対する増担保請求(∵担保価値維持義務・合理的意思解釈)

【抵当不動産についての妨害排除請求の事例の処理】

第1.抵当権に基づく物権的請求権
1.要件
【不法占拠者の場合】
    ①抵当権侵害
      (ⅰ)通常の用法以外の用法によって、
     (ⅱ)抵当目的物の交換価値を減少させたこと
    ※(ⅱ)につき、被担保債権の弁済額の減少は不要。
         ∵不可分性(372・296)
    ②交換価値実現阻害状態
    ∵非占有担保物権たる性質と抵当権者の優先弁済権保護との調和
【占有権限を有する者の場合】
    ①抵当権侵害
  (ⅰ)通常の用法以外の用法によって、
  (ⅱ)抵当目的物の交換価値を減少させたこと
  ※(ⅱ)につき、被担保債権の弁済額の減少は不要。
②交換価値実現阻害状態
③競売妨害目的
      cf)395条参照
2.効果
Q抵当権者への明渡請求
→適切な維持管理が期待しえない場合は可

第2.その他の請求
 →上記と同様(省略)
  +Q占有者への賃料相当額の損害賠償請求の可否

以上





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