■ 料金引き下げの効果大 対岸からも移住呼びこむ東京湾アクアラインの料金引き下げを契機に、急成長する千葉県木更津市。大型アウトレットモールがオープンし、製造業の立地も急増。千葉の新しい玄関口として存在感を高めている。

国土交通省が毎年9月に発表する基準地価調査。東京圏の住宅地で最も地価上昇率が高かったのが、千葉県木更津市(11.6%上昇)だ。全国の住宅地の上昇率トップ10でも、東日本大震災の被災地を除き唯一ランクインしたのが木更津市だった。

宅地開発の急成長は、東京湾アクアラインの効果が大きい。1997年に開通したアクアラインは高すぎる交通料金で利用が低迷していたが、2009年に料金引き下げを公約に掲げた森田健作知事が当選。普通車料金は3000円から800円に、大型車は4950円から1320円に引き下げられた。

この結果、交通量は大きく増加。実験開始後の平均値を見ると、1日あたりの交通量は3万4600台と実験前から66%の増え、とくに大型車は2倍以上に増えた。料金引き下げによる経済効果は、首都圏全体で358億円と試算され、そのうち全体の約70%を千葉県が占める(社会実験協議会の調査)。

長年12万人台前半で推移していた木更津市の人口は、2011年11月に13万人を突破している。千葉県内の移住だけでなく、対岸の神奈川や東京からの移住も呼びこんでいる。アクアラインを経由して都心と木更津を約40分でつなぐ高速バスも多数運行されている。


■ 大型商業施設が相次いで立地アクアラインの料金引き下げは商業誘致にも寄与している。2012年4月、三井不動産が「三井アウトレットパーク木更津」を開業。関東全域からの集客に成功し、開業1年間の施設売上高は当初想定を大きく上回る416億円と、全国の三井アウトレットでも2番目の規模となった。市内では2000人規模の新規雇用効果があったという。2014年夏には店舗数を174店から220店に増やし、首都圏最大級のアウトレットモールが誕生する。

イオングループは、長年開業を延期していた「イオンモール木更津」の本格工事に着手。シネマコンプレックスを備えた2階建の大型商業施設を、2014年10月にオープンする。このほかにも東京インテリアが今年、大型家具店をオープンするなど、大型投資が相次いでいる。千葉県はアクアライン着岸点の金田地区の基盤整備や木更津港の湾岸整備にも取り組み、地域の魅力を磨いていく。

2012年10月には森田知事の肝いりで、ちばアクアラインマラソンが初開催。アクアラインの上を走れるという珍しさが人気を集め、出走者は約1万4000人、沿道応援者は30万人を超えた。2014年の第二回大会開催も決定している。

アクアラインを通じた観光誘致も活発で、近年は中国人を中心とした海外旅行者にも木更津エリアは人気だ。11月には、木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市の4市長が、東京オリンピックの開催を見据えて観光連携を強化する方針を確認。アクアライン対岸はオリンピックの競技場に近く、地域ブランドを高める千載一遇のチャンスをつかむ。