『アーティスト』(2012)無声映画の効果音 | 弱小!名作おバカ映画応援団

『アーティスト』(2012)無声映画の効果音



『アーティスト』(2012)

監督 ミシェル・アザナヴィシウス
脚本 ミシェル・アザナヴィシウス
製作 トマ・ラングマン
撮影 ギヨーム・シフマン
美術 ローレンス・ベネット
音楽 ルドヴィック・ブールス
編集 ミシェル・アザナヴィシウス 、 アン=ソフィー・ビオン

衣裳デザイン

マーク・ブリッジス


ジョージ・ヴァレンティン ジャン・デュジャルダン
ペピー・ミラー ベレニス・ベジョ
アル・ジマー ジョン・グッドマン
クリフトン ジェームズ・クロムウェル
ドリス ペネロープ・アン・ミラー
コンスタンス ミッシー・パイル
ペピーのメイド ベス・グラント


1920年代後半から、1930年代前半のハリウッド。無声映画から、トーキーに移り変わろうとしていた時代。


無声映画の大スター、ジョージは、トーキーなんかクソ食らえ!と、無声映画を自腹で作るものの、劇場は閑古鳥。そして、破産に離婚、お先真っ暗。


一方、ジョージに憧れ、エキストラ女優から、着実に階段を登りつめたぺピーは、トーキー時代の申し子として、大女優に!


この世代交代直前の場面。

彼らが所属する映画会社の階段で、二人がすれ違い、会話を交わすのだが、ぺピーが段上、ジョージが段の下にいた。


当ブログでも、何回か言わせてもらっていますが、心情的に、段上にいる人物が格上で、下が格下といったふうに思える。

これは、位だけの話ではなく「正義と悪」「若さと老い」などもそう。


この後、彼らの立場が逆転するのだから、今後を予兆したかのような場面である。


オープニングで、ジョージの無声映画を劇場で上映している。

かなり大規模な、映画館というよりは、劇場といったほうがいいような空間。スクリーンと満員の観客との間にオーケストラがいて、映像に合わせて演奏している。


今作は、ほぼ全編にわたって、音楽が流れている。これがまるで「無声映画を、オーケストラの演奏とともに観ている観客」のようで、オープニングの観客とダブる。




この場面も面白い。一見、男女が抱擁しあっているかのように思えるのだが、実際は、ハンガーに掛かったスーツの袖に、女性が自分の腕を通しているのだ。


これ、昔演芸で見たことあるよねえ・・・。


男女の抱擁しているように見える、芸達者なんですなあ。



無声映画というと、なにやらとっつきにくく、つまらないようなイメージがあるかもしれない。


だけど、言葉に頼らず、なにかを表現することは結構難しい。それは、映画に限らず実際の生活においてもそうなのだから。


見方を変えると、映像だけで作品が成立するということになるのだから、映像の凄さも分かると思う。言葉がないので、色々想像してしまうのだが、それがまた楽しい!


やはり、説明的な台詞は映画には必要ないと思ってしまうのだ。


また、言葉や日常の音がないのを逆手にとった面白い場面がある。


ネタバレになるといけないので、詳しくは言いませんが、ぺピーが急いで車を運転・・・免許あるの?大丈夫?


ジョージも思いつめていて・・・ハラハラさせられ、


ああっ! と思った瞬間、


“BANG!”


という字幕に。


これ、実際に音にして聞かせてしまうと、なんの音か分かるんだけど、文字だから「だれから」「なにから」発せられた音なのか分からない。


だから、観ている側からすれば、一瞬空白の時間が生まれるのだ。


「なに? なにが起こったの?」


トーキーに変わろうかという場面で

「ファンは声を聞きたがっている」と。


確かに、私も彼らの声が聞きたくなってきたわ!


さて、彼らの声が聞けるのか?


お見逃し・・・いや、お聞きのがしなく!



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