宝塚記念

ファン投票は断トツでスピードキングであったが放牧で回避
2位のグランドラインと3位のキュクレーンと続いた。

グランドラインは天皇賞(春)を連覇し成熟味を醸し出す。

キュクレーンは天才肌の牝馬で中距離に絶対の自信があったのだ。



毎度お馴染みみんなで競馬が始まる。

まず、スピードキングが休養し放牧する姿を映した風景を捉え、全てのスピードキングの兄弟を紹介された。

中でもかのんが溺愛するユリウスが長く放送され、小型の競走馬とあって違う意味で注目を集め、誰もこの時点では新馬戦すら勝ち抜けないと思う方が自然と言えた。

だが、かのんの熱心さが伝わり徐々に人気が上がって行く、その他、海外組の展望等が紹介され、スーパーステージ、レナウンがクローズアップされ番組を挙げ、激闘記録を振り返る特別バージョン放送がなされた。

みんなで競馬のスタジオ

南野「今週もやって来ましたみんなで競馬、今日は宝塚記念があります。」

富岡「今日はかのんさんが取材と言うことで代わりに来てくれたのが、シポニチで有名な西田紀美代さんです。宜しくお願いします。」

紀美代「宜しくお願いします。」

富岡「その隣はいつも外れる予想家、伊崎先生です。」

伊崎「オークス当てたじゃんガハハ」

富岡「三連単はハズレましたよね」

伊崎「手厳しいなぁ」

スタジオ爆笑

南野「西田さんはスピードキングが遠征した時随行されたんですよね」

紀美代「はい、スピードキングと一緒にいましたね、どちらかと言えば、英語の翻訳として行った様なもんですけど」

南野「でも、スピードキングと一緒に居たのはちょっと羨ましいですね。あの名馬と色々な体験をされたのでは?」

紀美代「そうですねスピードキングは話題が尽きない変わった馬ですから(笑)」

伊崎「馬を見る天才も一緒に居たでしょ、若林オーナーだったかな?」

紀美代「彼は凄い相馬眼の持ち主で見た瞬間で分かるそうです。」

伊崎「僕も欲しいなー、相馬眼、全レース的中も夢じゃない」

紀美代「賭け事は興味無いですよ」

伊崎「勿体ないなあ」

富岡「さあ、ここで、今日のメンバーを見て見ましょう❗今年の宝塚記念は5頭と少ないですが?どんな影響がありますかね?」

伊崎「有力馬が引退し中距離を走る馬が居なくなってしまったからだろうね、しかも、ドバイで活躍した2頭が居るわけだし普通回避するよね。更に人気の集中が3歳馬が殆ど集中してしまい少数になってしまったんでしょうな。」

南野「なるほど、それでは今日の出場メンバーを見て見ましょう❗」

1グランドライン      5歳牡馬   ①
2アラメダ                  4歳牡馬   ③
3ウォークアパーク  5歳牡馬   ⑤
4キュクレーン          4歳牝馬   ②
5ネオシーバード      4歳牡馬   ④

○の中の数字は人気

南野「そろそろレースが始まりそうですフリップをお願いします今日は少数なので3頭でお願いします。」

伊崎  

①キュクレーン
②グランドライン
③ネオシーバード

西田

①グランドライン
②キュクレーン
③アラメダ

南野

①グランドライン
②キュクレーン
③アラメダ

富岡

①キュクレーン
②グランドライン
③ウォークアパーク

南野「となりました。やはり、キュクレーンとグランドラインは1.2着に入りますね」

伊崎「まあ、有力馬だからね」

富岡「それではレースが始まります。」

スタジオから実況に変わる

宝塚記念

実況「春が終わり夏がやってきます。その春の総決算グランプリ今年は5頭と少数ですが2頭の現役最強の双璧が争います。伊藤さんどうでしょうか?」

伊藤「今回は、2強の争いでしょうか、他には見当たりませんね、其ほど実力差がありますね」

実況「分かりました。キュクレーンとグランドラインに注目しましょう」

赤旗が振られ宝塚記念独自のファンファーレが吹かれる

実況「各馬がゲートに入ります。今年は5頭と少数、さあどの馬が、春のグランプリホースになるのか?今スタートが切られました。

各馬揃った綺麗なスタートですまずはアラメダが先頭1馬身後方にキュクレーンが居て直ぐ後ろグランドラインがここにいて、各馬正面スタンド前を通過し第一コーナーに向かいます。

大声援を受ける5頭、第2コーナーから向こう正面に、さあもう一度先頭から見て見ましょう、ここでキュクレーンが先頭2番手2馬身後方にグランドラインかその後ろ3馬身離れてアラメダがいます。

その後ろにネオシーバードとウォークアパークが並んで、第3コーナーに向かいます。まだ、先頭はキュクレーンだ。第4コーナーに入るまだキュクレーンが先頭後ろからグランドラインが徐々に差を詰め始める。

しかし、キュクレーンが二の脚を使い突き放す。キュクレーン強い❗グランドラインも詰めるが届かず。キュクレーン優勝

2着はグランドライン半馬身届かない、3着は遥か後方にネオシーバードか、東騎手ガッツポーズ今年はG1を三勝しました。」

伊藤「やっぱりこんな感じですねキュクレーンとグランドラインは突出して強かったですね」

実況「伊藤さんのおっしゃる通りになりました。ありがとうございました。」

スタジオに戻る

南野「なんと❗先生が当たりましたね❕すごーい⤴」

伊崎「まあ、少数だからねでも嬉しいね。ガハハ」

南野「天変地異が起きなきゃ良いですね❗」

スタジオ爆笑

伊崎「酷い言われようだね」

スタジオ爆笑

富岡「それでは、また来週もこの時間に会いましょう❗さようなら」



翌週の長野厩舎

取材を全て完了し非番を貰ったかのんは、昼前に単身で長野厩舎に向かいユリウスに逢いにやって来たのだ。

この日は日曜日レースがあるため、厩舎は静かであった。長野厩舎に着くとまた弘子が迎えてくれ、厩務員の安田がユリウスを牽いて連れて来てくれたのだった。

安田「今回は取材じゃ無いのかい?」

かのん「今日はプライベートでユリウスに逢いに来ました。」

ユリウスは嬉しそうにはしゃいでいたのだった。かのんはユリウスを撫でると、ユリウスに顔をペロペロと舐められた。

かのん「ちょっとユリウス舐め過ぎよ(笑)」

安田「余程、かのんさんが好きなんだねユリウスはいつもは大人しいくて寂しそうな顔をしているが、かのんさんに会うと豹変するなぁ」

かのん「そうなんですか?」

安田「どうです。この仔に乗って見たら」

かのん「ええ、いいんですか?」

安田「別に競馬する訳じゃないし、構わないよ」

かのん「それじゃ遠慮なく」

安田は鞍を持って来てユリウスに装着すると、かのんを乗せ、安田が綱を牽きユリウスを歩かせた。

乗馬は初めてだったかのんは感激し、ユリウスも嬉しそうに歩いていたのだ。トラックコースで牽きながら一周しユリウスの乗り味を確かめていた。

安田「今度はユリウスと一緒に軽く走って来たらどうだい」

かのん「ええ❗大丈夫かな?」

安田「大丈夫さ、私はここにいますから」

安田に走り方を教わり、ユリウスを軽く走らせる。馬なりよりも遅い速度で走ったが、かのんにとっては速く感じた。

かのん「うあ~、速い速い❗」

だが、そのユリウスと走った感覚に身体が覚えていたのか。初めて乗った気がしない、「何なんだろ?この光景を見たことある。」
ユリウスと一周し、戻って来る頃には完璧に乗りこなしていたのだ。

安田「驚いたな❗完璧に乗ってたよ、本当に乗馬した事無いのかい?」

かのん「ええ、初めてです。でも、途中から乗った事があるような感じがしたのです。」

安田「騎手の才能があるのかもね、大したもんだ❗」

ユリウスから下馬し顔を撫でると、ユリウスも嬉しそうにしていた。

かのん「ユリウスだからかも知れませんねまた乗せて下さい。」

安田「ああ、構わないよ、だけど長野さんには内緒な」

かのん「了解です(笑)」

その後厩舎に戻り、買ってきたリンゴを切り分けユリウスに食べさせた。美味しそうに食べユリウスはリンゴを完食する。

そのあと、弘子と会話をし、気が付けば夕方になっていた。帰り際ユリウスを撫でて。「また逢いにくるわ」と言うと、今度は寂しい顔はしていなかった。



日本馬の快進撃

7月に入りスーパーステージがアイリッシュダービーで5馬身差を着け勝ち、世界が日本の馬に注目する。

更に英国ダービーもレナウンが6馬身差を着けまたしても圧勝し、スピードキングの世代のレベルの高さが日増しに高まり、外国から、日本に取材が多数舞い込む。

そんな中、取材の続行を受けたかのんは、同じ取材現場で西田紀美代に会う、紀美代は尚道との婚約を聞き羨ましそうに話し掛ける。

紀美代の話しだと、ソウルメイトで過去に前世で出会いがあり何度も何度も出会い再開すると語り紀美代自身もヒプノセラピーを受け前世を見たと言う。

かのんもそのヒプノセラピーを受けたらユリウスとの前世が分かるかも知れないと思ったのだ。

ソウルメイトとは前世で自分と関わりのある魂で結ばれた関係である。殆どが人間関係で結ばれているが、絆や縁といった物も含まれていると考えられ、強い印象が残る動物達ともソウルメイトがあるらしい❗

後日、かのんは気になるユリウスとの過去の関係を調べたくて、ヒプノセラピーに詳しい精神科医の元を訪れ、前世を調べて貰う事にしたのだ。

先生の声で深い眠りと起きている自分が別れ、過去の映像が流れて行く

1840年代頃イタリアにあるメルフィーに遡る。(さかのぼる)

お金持ちの娘として生まれ、なに不自由無く生活していた。彼女の名前はパメラと言う(それがかのんの前世の名前だった。)

父親がなかなか二人目の子供が産まれず遊び相手が無くて不憫(ふびん)に思いパメラの6歳の誕生日に牡馬の仔馬をプレゼントしたのだ。

その馬はドイツの貴族の名前を取り入れユリウスと名付けた。

ユリウスとパメラは、散歩、買い物、遊びやピクニック等いつも一緒だった。

パメラ「ユリウスこっちよ競争しましょ」

ユリウスが簡単にパメラを追い抜いて行く❗

パメラ「また負けちゃった(笑)」

この日ピクニック来たパメラとユリウスは丘に登り、木の木陰で昼食をとっていた。

パメラ「ほ~ら、ユリウスが好きなリンゴと人参よ」

ユリウス「ブルル、ブルル」

早くちょうだいと言っている様にパメラは感じた。

パメラ「慌てないで直ぐにあげるから(笑)」

ユリウスといる時間は幸せだった。いつも時間を忘れ遊んで来るため両親にいつも怒られていたのだ。

パメラが10歳頃には乗馬をこなし、馬を扱う腕もメキメキと上達していく。

ユリウスの顔には額に星も鼻に流星も無く、面白味が無かった為、パメラは悪戯心で額に白いペンキで❤のマークを描いた。

パメラ「これでヨシッと❗えへへ」

ユリウス「ブルルル」

パメラ「似合うわよ❤ハート」

流石に父親に怒られたが、これが似合うと頑なに父親を説得したのだった。両親も肩をすくめて呆れていた。

パメラはユリウスと散歩に出掛け、途中の草むらに座る。

パメラ「あ~あ、失敗しちゃったな、ユリウス貴方が牝馬だったら良かったのよ、そしたら、可愛いいねって誉められたのに、それからもっと小柄な体になってよ、大きくて乗りずらい❗」

ユリウス「ブルル」

パメラ「あら分かってくれたの(笑)」



だが残酷な別れが突如訪れる。

両親は外にいて芝刈りをし、パメラはパズルで二階の自分の部屋で遊んでいた。そこに突然❕
1851年8月イタリア、メルフィーに直下型大地震が襲う❗

建物は崩れ始め、逃げようとしたパメラは階段から転げ落ち足を挫いてしまい歩けなかった。

そこにユリウスが窓を割ってパメラを助けに来たのだ。ユリウスはパメラの服を噛むと持ち上げて玄関から脱出する❗

しかし、玄関を出た瞬間ユリウスの下半身に外壁の瓦礫が落ち、下半身が潰れ身動きが取れなくなってしまう❗

パメラ「ユリウス~~~ぅぅ」

パメラはユリウスの顔を抱きしめる

ユリウスは早く逃げろと言っている様な仕草をしていた。

ユリウス「キュウー」

パメラ「嫌だ~ぁ、ユリウスを置いてきぼりなんて出来ないよ~ぅ」

父親がパメラを担ぎ上げその場から離れる。

パメラ「パパ下ろして、ユリウスが、ユリウスが~ぁ」

父親「駄目だ。もう助からん❗」

パメラ「嫌だ、放して」

その直後、外壁が半分に裂けユリウスの身体に巨大な瓦礫が落ちユリウスは潰され死んでしまうのだった。

残骸はユリウスが見えなくなる程に大きく、煙の様な埃が立ち込めていた。

パメラ「ユリウ~~ス~~~ぅ、    う、嘘       嫌だ~ぁ、        信じられない、 信じたくない~~~~ぃ  」

この地震で1000人の尊い犠牲者が出る。だが、人を助けて死んだ馬の記録は残されていなかった。

かのんは現世に戻る

泪が止まらない。

ユリウスとの前世がこれではっきりし、前世の命の恩人に恩返しをすると誓うのだった。



(地震は実際に起きたものです。)



次回ユリウスの新馬戦に続く、列伝後にユリウス編を続けます。