沙織は大声援の中、ファンに手を振り、坂を下り退場して行く
スピードキングが退場した後も場内はざわついていた。1000mの短距離ならともかく2400mで上がり3Fを31秒台は初の事であり、誰の記憶も無かった。しかも、18着になったクロスレジェンドですら2分23秒5となり、例年で言えば優勝してもおかしく無いタイムだったのである。正に熾烈な激戦であったのだ。
オーロラスクリーンに、スピードキングは最後の10mで並ぶ間も無く交わして2馬身差で快勝し、ファンの唸る声が聞こえた。
実況「いや~!物凄い物を見せつけられましたね。伊藤さんどうですか?」
伊藤「ええ、鳥肌が立ちましたよ❗絶対不可能の位置から差して来ました。震えが止まりません、スピードキングが直線に入った時はまだ先頭から15馬身近い距離がありました。そこを差してしましましたからね、スピードキング以外出来ない芸当でしょうね。」
実況「31秒台って滅多にありませんよね」
伊藤「1000m位の短距離ならともかくダービーじゃあ見たことありませんね、
昔、キズナと言う馬が最後の直線ダービーで16頭を差した記憶はありますが、それを上回っていましたね」
実況「最初の超スローペースでスピードキングは力を温存し、最後に賭けたのでしょうか?」
伊藤「だと思いますが、並の馬では出来ませんよスピードキングだから出来たと思いますね、飛んでもないものを魅せられました。」
実況「ありがとうございました。スタジオにお返し致します。」
優勝馬の口取りが終わり、沙織のインタビューが行われる。
リポーターが沙織を呼び止め沙織は壇上に上がる
リポ「放送席、放送席、今、ダービーに優勝しました。スピードキングの鞍上、田崎沙織騎手に来て頂きました。おめでとうございます。」
沙織「ありがとうございます。」
リポ「今日のダービーでG1を8勝しました。日本人ではG1最多騎手になりました。その感想をお聞かせ下さい」
沙織「あまり意識はしてませんでした。いつも通りに乗っただけです。」
リポ「そうですか、それではスピードキングについてですが、今回は前走と違い追い込みでしたが、これは計算された物だったのでしょうか?」
沙織「二つの案はありました。1つは先行、もう1つが、皆さんが見た通りです。スピードキングなら届くと思いましたね❗」
リポ「なるほど、今回後方からの作戦で直線に入った時は勝てないんじゃ無いかなと、一瞬不安になりました。その時はどう思いました?」
沙織「最初の出足で、周りの馬達が良いスタートを切りスピードキングは中段位になりました。ペースも早かったので、後ろから行く事にしたのです。そして、最後の直線ですが、スピードキングはまだ余力があって初めて鞭を入れましたが、経験したことがない物凄いスピードで他馬をあっと言う間に抜き去ってしまい、自分でも信じられない位の豪脚を魅せてくれたのです。最後の4頭は流石に手こずりましたが何とか差しきりましたね🎵」
リポ「そうでしたか、見ている私達がヒヤヒヤしましたが、気が付けば先頭でしたね❗そして、気になるスピードキングの次走はどうですか?」
沙織「次走は分かりませんが、今年の目標は、BCクラシックです。」
リポ「また、アメリカ遠征ですか🎵期待しています。頑張って下さい❗」
沙織「ありがとうございます。」
リポ「以上、田崎沙織騎手の
インタビューを終わります。」
スタジオに戻り拍手喝采であった。
南野「勝ったのはスピードキングでした🎵」
伊崎「いや~凄い末脚だったね🎵鳥肌が凄い事になってるよ」
かのん「スピードキング、名前の通りでした。」
ディン「まさかあそこから届くとは❗次元が違いましたね、前走の世界レコードは伊達じゃあ無いです。」
南野「ダービーレコードとなりましたね」
伊崎「何言ってるの日本レコードでしょ❗しかも、世界レコードに迫るタイムだよ」
南野「失礼致しました。先生のおっしゃる通りです。えーと、どうやら確定したようです。着順を見て見ましょう」
1着スピードキング
2着ジャングルパワー 2馬身
3着テイオーボーイ 鼻
3着レナウン 同着
5着スーパーステージ 鼻
富岡「テイオーボーイとレナウンが3着同着の様ですね❗と言うことは?かのんさんお見事また的中です。しかもダブル的中でした。」
かのん「たまたまですが、運も良いようです。」
伊崎「かのんさんに弟子入りしようかな🎵」
スタジオ爆笑
ディン「同じく、弟子入りしたいです。」
かのん「弟子は雇いません❗悪しからず」
スタジオ爆笑
伊崎「ペケのクロスレジェンドが2分23秒5で普通ならダービーの勝ちタイムだよね❗今年のレベル半端じゃないね、脅威的レベルだったね、」
ダービーのVTRが流れスピードキングの直線に入り、鞭が2発入る❗
伊崎「初めて、スピードキングに鞭が入ったね、こっから凄い末脚を魅せてるよ」
最後の10mで差しきると、並ぶ間も無く抜き去り2馬身を着ける❗
南野「スピードが段違いでした。」
伊崎「日本も凄い馬が現れたね、凱旋門賞に出て欲しいよ🎵勝てるよこの馬なら」
ディン「本当、凱旋門賞にでたら今度は頭から買いますよ」
かのん「スピードキングはまた、アメリカに行く見たいですね、BCクラシックに出走予定になってます。残念ですね、凱旋門賞で見てみたいですよ」
富岡「名残惜しいですがそろそろ放送時間が終わります。」
南野「来週は春のグランプリ宝塚記念です、来週もまた、会いましょう」
東京競馬場オーナー席
尚道は、口取りを終えた後、別室の会議室にダービー参加した各オーナーが集まり、尚道が来るのを待っていた。
呼び寄せたのは他でもない尚道自身であった。今回ダービーに出した馬主は10名で尚道もよく知る仲であり今回何故呼び出されたのか?誰一人解らなかった。
秋池曜一朗 58歳 男性
馬主界のドンと言われている。尚道の父の友人で彼が秀尚を競馬界に引き込んだ。尚道とは親交が厚い、
サイレントサード、ガリバースプーン、の馬主
香坂美紀 24歳 女性
長身の美女、日本人とフランス人のハーフ、尚道と同じく父の跡を継ぎ馬主となる。彼女の父が残した遺産は莫大でそれを狙って結婚を申し込む男が数知れない、そんな男達にうんざりしている。
いつも奇抜なファッションをし、胸元が見えそうな派手な服装を好む、勝手に他人のコーディネートに口を挟む所がある
ブラックシップ、ジャングルパワー、デルソルの馬主
内田理央 68歳 女性
物静かなおばあちゃんと言った印象だが、馬を見る眼が高く、子馬のセリで良く見掛ける
テイオーボーイの馬主
二階堂信治 50歳 男性
元々プロ野球選手だったが引退後に馬主となる、馬を見る目はないが、親しい調教師にセリに同行してもらっている
マッハコンコルド、スーパーステージの馬主
児島卓弥 54歳 男性
大手スーパーの社長で趣味の乗馬から馬主へとなる。尚道とはあまり縁は無いが、スピードキングには興味がある様子
クラムボム、カーライド、の馬主
平賀謙三 85歳
馬主業の長いじい様で、大牧場を持つが、大物は余り見掛けない、重賞には毎度顔を出す産駒を輩出している
クロスレジェンド、ゴールドミリオンの馬主
猪瀬小百合 40歳 女性
健康食品の社長で馬好きが講じて、馬主になる。栄養学と化粧品などに詳しく、一度捕まると六時間程聞かされる為、馬主達に敬遠されている。
ターフキャノンの馬主
宮本幸一 38歳 男性
自動車部品関連社長、友人に誘われ競馬をしたが、馬主に興味が湧き、今日に至る 猫が好き
ネコネッコロガール、プリアールの馬主
渡辺駿 48歳 男性
現役俳優であり世界でも知られた存在である。自分が出たテレビドラマに馬主役があり、それを知りたくて馬主を経験したが、はまってしまい本格的に馬主業を始めてしまったのである
リードタイムの馬主
碧川ひかる 17歳 女性
碧川家の社長令嬢、顔かたちは綺麗だが、左側の顔が大きな蒙古斑に似たあざがあり本人は自分の顔を嫌っている。化粧で隠すが薄く出てしまう、誰かに逢うと、必ずと言っていい程、顔のあざに就いて訊かれるのが嫌だった。
尚道は彼女に顔の事を気にせず普通に会話し「可愛いね」と言ってくれた唯一の男性だった。尚道に会うまで心を閉ざしてしたが、それ以来彼女は明るくなる。
馬自体は父親の名義になっているが実質的権限は彼女が握っている。尚道がレナウンの購入を勧められ購入している
パワーガン、レナウンの馬主
尚道が会議室に入り一礼をすると話し始める
尚道「皆様お忙しい中お集まり頂き感謝に堪えません、僭越ではありますが、率直に申し上げます。
今日のダービーを見て思った事があります。それは、今日ダービーで走った馬達は、全てG1を勝てる能力を持つ馬達が揃っていた。と、言う事です。しかしながら日本でのG1は数が限られてしまい折角能力を持った馬達がG1を取れずに生涯を終えるのを見るに耐えません❗」
秋池「尚道君では、どうしろと云うのかね?」
尚道「はい、海外遠征を視野に入れて下さい」
宮本「スピードキングには出来るかも知れんがうちの馬じゃ無理だ」
尚道「スピードキングを天皇賞(春)や菊花賞に出したら惨敗するでしょうね」
会議室がざわつく
尚道「問題は適材適所です。芝、ダート、距離、右回り、左回りと言った。その馬のポテンシャルを引き出すコースを選択し、より勝算の高いG1を狙って貰いたいのです。」
またしても会議室がざわめく
ひかる「私は尚道お兄様を信じますわ、尚道お兄様が選んだ馬は全て走りますもの」
尚道「ひかるちゃんありがとう🎵」
児島「確かに若林君の言う事に一理ある。だが、問題は馬がどのくらいの距離で走るのか?芝にダートどちらが走るのか我々には分からない、それでは話しの進め要がない」
尚道「それは私が分かります。今日のダービーで解りました。」
ざわつく
平賀「なんじゃと❗あのレースだけで、わかったじゃと」
尚道「はい、解りました。」
香坂「アーン…流石ね、馬を見るセンスはただ者ではないわね🎵でも、今日のネクタイは地味よ❗」
コーディネートにうるさい香坂の癖が出てしまった。尚道は苦笑いをしたが、話を続ける
尚道「日本で犇めき(ひしめき)ながらG1に参加しても、全頭がG1を1勝を勝つことすら至難の技です。折角才能を持った馬達にその機会を与えて上げてはどうでしょうか?強制は致しませんが、どうですか?」
内田「尚ちゃんなら大丈夫ね信頼出来るわ🎵」
ひかる「私くしもです。」
渡辺「わかった、信じて見よう❗」
20分程話し会いが行われたが、全会一致となり尚道が勧めるプランが用意される
尚道「海外遠征となると賞金の安いG1もありますが、お互いに潰し会うよりG1の称号がある方が箔はつきます。損は無いと思いますよ❗」
秋池「まるで企業の談合だな(笑)」
この後三時間程を費やし尚道が指示したレースを各馬が走らせるようになる。その内容と世界のG1の多さに各馬主は驚き尚道を普通の馬主と思っていた者達を唸らせた❗
二階堂「若林オーナー貴方は競馬の神か何かなのか?」
尚道「私は、馬を見る眼が人より何故か分かるのです。その特性をレースに活かしただけです。」
二階堂「だが羨ましい能力だよ❗」
尚道「私は野球のセンスはありませんよ、羨ましい❗」
二階堂と尚道は笑った。
この談合が後に日本馬が世界を驚かすきっかけを構築するのだった。
会議が終わり、全員解散する。尚道はひかるに呼び止められる。
ひかる「尚道お兄様、今日よかったらお食事を一緒にいかがですか?」
尚道「連れが居るけど構わないかな❔」
ひかる「お連れの方?」
尚道の後に控えていた紀美代がいた。
紀美代「初めまして、西田紀美代と言います。」
ひかる「ああ、こちらこそ、碧川ひかると申します。」
尚道「ひかるちゃんは彼女が、12歳の時に知り合った、騎手になりたがっていたんだけど、周りに反対されてしまった。けど、今は元気だよ❗紀美代さんは、シポニチの記者で、競馬のコラムを良く書いてるよ。」
お互いに挨拶が済み、紀美代が話しかける
紀美代「ひかるさんはどこか美味しいお店をご存知なのですか?」
ひかる「はい、宜しければご案内差し上げます。」
ひかるは教養が高い女子高生であり丁寧な言葉使いに紀美代の方が、圧倒された思いがしていた。
三人は車で赤坂方面に向かって行くのだった。
翌日の長野厩舎
スピードキングの妹ユリウスは美浦の長野厩舎に預けられていた。長野厩舎は長距離の芝コースの仕上げを得意とした厩舎で,クラシックの常連で碧川ひかるのキュクレーンがクラシックで活躍し、尚道もグランドラインを預けていたのだ。
叔父の秀則にこの厩舎を紹介しユリウスを預かって貰っていたのであった。
長野厩舎は瀬田厩舎の隣にあり、瀬田厩舎は長野厩舎程実績は無いものの、お互いの長所を調教師同士誉めあい、仲は良かったのだ。
元々、沙織はこの長野厩舎の専属騎手であった。沙織を借りっぱなしだった尚道は引け目を感じたのか、土産を持ち長野厩舎を訪ねた。
尚道「こんにちは」
長野厩舎の中に沙織、厩舎の調教師、長野哲朗、息子で調教助手の長男の博久、長女の弘子がいた。
沙織「尚にい」
博久「ようこそ🎵尚道さん、ドバイワールドカップ以来ですね。」
尚道「何度か瀬田厩舎には訪れたが、ここに訪ね無かった。申し訳ない」
弘子「構いませんよ🎵スピードキングおめでとうございます。凄かったですね。」
哲朗「家に預け貰いたかったね、あはは」
尚道は礼をするとアメリカで買って来たお菓子を差し出した。
尚道「皆さんで召し上がって下さい」
弘子「うああ、アメリカのお菓子ですか?うまそー🎵」
博久「こら、弘子止めんか!」
尚道「構いませんよ、早めに召し上がって下さい、それから、叔父の秀則がこちらに来ていると聞いたのですが?」
哲朗「今、安さんとユリウスを見てるよ」
安さん事、安田 実はユリウス担当の厩務員だった。
尚道「そうでしたか、それで、ユリウスの様子はどうですか?」
博久「凄いね、流石スピードキングの妹だよ、だけどスピードキングと違って長距離が強さを発揮できそうです。」
哲朗「だから家に預けたのさ、尚道さんの判断でな」
尚道は頷く
弘子「キュクレーン、グランドライン、そして、ユリウス尚道さんはG1馬を紹介してくれるから家としてもありがたいですよ」
沙織「まだ、ユリウスは走ってませんよ(笑)」
弘子「そうだけど、あの走りを魅せられたら……ねぇ」
沙織「❔❔❔何ですか?走りって❔」
哲朗「沙織がアメリカに行っていて知らないだろうが、桜花賞馬のテオノグラフを併せ馬で調教している時、5馬身ぶっちぎってしまったんだよ」
沙織「ええ~、本当ですか❔凄いですね🎵ワクワクします❗」
秀則と安田はユリウスを眺めながら秀則は難しい顔をしていた。それは、他の馬に比べてやたらと小さかったのであった。ユリウスは馬体重が380キロしかなく超小柄のサラブレッドだったのだ。
秀則「本当にユリウスは走れる馬なのか?他の馬に比べて見ると大人と子供位の差がある。尚道のスピードキングと見比べると尚更だ❗」
安田「尚道さんの見立てに間違いはありませんよ🎵何せ調教中併せ馬でG1馬に勝ってしまいましたからね」
秀則「本当かねそれは、とても信じられない」
そこに沙織と尚道が秀則に会いにやってくる❗
尚道「叔父さん、もう来ていたんですか❗」
秀則「おお、尚道、沙織ちゃんも来たか」
尚道「ユリウスがどうかしましたか?」
安田「実は、ユリウスの体格が余りに小さく、競走馬として活躍出来ないのでは無いかとオーナーの若林さんが言いますので、それに私もこれほど小柄の馬を世話をした事がなく困惑している次第です。」
沙織「本当に小さいわね、栗毛の馬体も可愛いわ」
沙織はユリウスを撫で愛撫していた。
尚道「スピードキングに比べてしまうと確かに華奢な体つきですがバネは最高ですよ🎵身体も長距離が向きます。」
秀則「そうなのか?物凄い不安だが❗」
沙織「尚にい、思ったんだけどスピードキングも長距離が走れるんじゃないの、バネは凄いもの」
尚道「いや無理だ。中距離馬ならともかく相手がステイヤーではスピードキングも太刀打ち出来ない」
沙織「どうして❔」
尚道「馬体だ❗スピードキングは馬体が大きいだから無理だ。例えばだが、マラソンランナーに筋肉ムキムキを見たことあるかい?体つきが小柄でほっそりした人が殆どだろ、ユリウスを短距離走させても勝て無いが、長距離ならこの馬に敵う馬は居ない本質はステイヤーなんだよ」
沙織「なるほど、さすが尚にい、分かりやすい説明ね🎵」
安田「でも、500キロ台でも長距離が得意な馬がいませんか?」
尚道「中には中長距離の馬が長距離を走るのが珍しくない、天皇賞(春)などは真のステイヤーが余り出て居ないから荒れる。中には隠れステイヤーが居て大穴を開ける、中長距離馬が天皇賞(春)を走ればタイムはいまいちだろうし、その時500キロ台の馬が入っても何ら不思議じゃないよ、後はその馬の距離の柔軟性だろうね馬格が大きくても柔軟性の高い馬は融通が効くが筋肉がゴツゴツとした500キロの馬は短距離馬と考えていい、後は気性の素直な馬だろうね」
秀則「なるほどな、競馬にも色々あるんだな」
尚道「叔父さん風に言ったら、シールの接着剤を木、鉄、果物、紙といった素材を同じ接着剤でくっ付けたら貼りつくのはどれかって所ですかね🎵」
秀則「適材適所って事だな❗用途に合わせた接着剤を使うと❕それなら分かりやすい❗」
尚道「競馬も短距離、マイル、中距離、中長距離、長距離があります。そして、芝にダートの適性もです。ユリウスは中長距離以上の芝でその能力を発揮出来ますよ叔父さん」
秀則「わかった。ではいつ頃ユリウスは走るんだ?」
尚道「10月頃です。あまり早いと2000mのレースがありませんし、2歳の内は様子を伺うのが良いでしょう」
秀則「そうか、10月が待ち遠しいなあ🎵」
沙織「叔父さん良かったわね」
秀則「ああ、何か腑に落ちない物が尚道のお陰で痞(つかえ)が取れたよ、それから、騎手は選べるのか?」
尚道「はい、大体は選べます。」
秀則「大体は?どうしてだ?」
尚道「遠征で、他の競馬場に行ってしまったり、海外遠征などで居なかったりすると乗れません」
秀則「なるほどな、沙織ちゃんが関東に居るときに合わせるしか無いと言い訳か」
沙織「えっ私に乗せてくれるの」
秀則「可愛い姪っ子だろ、当たり前じゃないか、(笑)」
沙織「ありがとう叔父さん、私、頑張るね🎵」
秀則「天才の沙織ちゃんなら頼もしいよ」
沙織「えへへ、天才だなんて、照れちゃう」
その場にいた全員が笑い、長野厩舎の事務所に戻った。
ユリウスの新馬戦は10月4週土曜日東京競馬場で行われる事が決まった。