今回の懐かしの商用車コレクションは、いすゞベレットエキスプレス、本シリーズで何台か私にとって夢の製品化がありましたが、今回のベレットエキスプレスもその1台。もうモデルとして目の前に存在すること自体が、まだ夢の中に居るような不思議な気分です。

ベレットエキスプレスは、名前こそベレットと名乗っていますが、実際は全く別の成り立ちのクルマで、こちらもベレットのイメージを持つピックアップトラックの、ワスプをライトバンに仕立てたと考えて良いと思います。従ってベレットの特徴の一つであるモノコックボディ構造ではなく、ハシゴフレームの上にボディを構築した、当時の一般的な貨物車として設計されています。

エンジンはガソリン1300と、当時からいすゞのお家芸であるディーゼル1800を搭載。しかし当時の小型ディーゼルエンジンは黒煙や振動の面から不評で程なくして廃止され、ガソリンエンジンのみが継続される事になります。しかしこのクラスの商用車は当時激戦区で、特にコロナバンやブルーバードバンが台頭していた為、ベレットエキスプレスは販売台数でジリ貧状態に甘んじ、早くも1968年にいすゞのラインナップから姿を消しています。なおピックアップトラックのワスプは、ファスターにバトンを渡す1972年まで生産されました。

モデルは、実車が現役の頃から数えても本邦初の製品で、まさか今の時代になってミニカーとしてコレクション出来るとは思いもしませんでした。果たしてその出来は素晴らしいもので、ベレットの雰囲気に商用車としての逞しさをプラスした、独特の佇まいを見事に再現しています。ボディカラーも適切なチョイスで、店名や自家用の表示も満点で、電動で上下するウインドウを持つ、唯一無二のリアスタイルも完璧です。

私の記憶の中にあるベレットエキスプレスとしては、近所にいつも止まっていた紺色の1台を思い出します。私は勝手にベレットバンと呼んでいました。恐らく塗り替えたであろう、そのボディはくすんで艶が無く、あちらこちらが凹んでホイールキャップも左前に1枚残るだけ。あまり動いている様子は無く、またオーナーにも愛されているとは思えない何とも哀れな状態でした。数度動いているのを見た事がありますが、白煙を吐いて調子はよくなかったみたいで、私が小学生になる頃には姿を消していました。

それ以来、ベレットエキスプレスを見る事は無かったのですが、カタチとして再会したのはこのモデルで、手にした時、先ずあのボロボロの紺色のボディの事が頭の中を過ぎり、半世紀前の記憶を走馬灯の様に思い出した次第です。

2023年4月発売 発売価格 2.499円(税込み価格)