レギュラーシリーズから消えてから、長い間途絶えていたトミカのVWタイプ2は、トミカプレミアムの一員として2015年にT1にて再登場を果たしました。T1としては最初期のバスをプロトタイプにモデル化、数あるVWタイプ2のモデルの中でも最初期型の、しかもフルノーマル車の現代版モデルは意外と少なく、貴重な製品化に驚いたと当時を振り返ります。

近年における小スケールのVWタイプ2のモデルは、ホットウィールに代表されるカスタムされたスタイルでモデル化されるケースが多く、中にはフロントスタイルだけでVWタイプ2と判る程度で、殆ど原型を留めていないモデルも見受けられ、またそのカスタムのフィニッシュもどこかワンパターンな印象もあり、せっかくのカスタムも逆に個性が無い様に思われます。

そんな中で現れた、このトミカプレミアムのモデルは、フルノーマルの最初期型バスと言う事が際立っており、旧くからのVWタイプ2コレクターとしては非常に嬉しいモデルです。自動車としてもまだ原始的な構造が残る、1950年代半ばのスタイルは、同じT1でも1960年代に入ってからのスタイルとは全く違う、アンティーク家具の様な独特の雰囲気を見事に再現しています。開閉機構を持たない事もあってプロポーションは頗る良く、美しいスリートーンカラーも完璧です。またトミカの範疇で最高のディテールを備えており、例えば最低限しか装備されていない灯火類、所謂『バーンドア』と呼ばれるリアのエンジンルームのフード、足周りでは幅の狭いトレッドと、よくリサーチされたホイール等々見所がいっぱいです。

反面、残念なからウィークポイントも見られ、明るさが売りのバスにあって、ウインドウをスモーク仕上げにしてしまった為に、モデル全体のトーンが暗くなってしまった事で、インテリアパーツもちゃんと仕立ててあるのに、それが活かされていません。またボディ側のウインドウ部分は全て抜けているのに、これも活かされておらず重ねて残念にです。恐らくこの措置は、耐久性の為に室内にボディとシャシをつなげる太い支柱が2本通っており、それを隠す為だと思うのですが、もしそうであれば構造的にもう一考して欲しかったと思います。殆どがコレクターの手に渡るモデルと思われるので、そこはTLVの技術を活かして、実感的な雰囲気を壊さない方が良いと思います。

しかし何だかんだ言っても、私にとっては嬉しいモデルに違い無く、特販品としてカラーバリエーションも期待していたのですが、比較的短期間で廃盤になってしまった事が残念でなりません。

2015年7月発売 発売価格864円(税込み価格)