
古くから鉄道模型の王者として、各スケールで数多く製品化されて来たC62形蒸気機関車。その中でも『スワローエンゼル』の愛称で、東海道本線を『特急つばめ』を牽いて疾走した事で有名な2号機のモデルです。しかも天賞堂謹製と言う、鉄道模型界のレジェンドから発売された、最高級品が今回のお題になります。
天賞堂のC62形は1972年に初版が発売されて以来、常に最高級品の名を欲しいがままに、高嶺の花として鉄道模型ファンから一目置かれた存在でした。また初版から2号機を指定番号としてモデル化される程『スワローエンゼル』の人気は高く、羨望の眼差しでコレクターに注目され続けて来ました。
今回の私が所有する物件は1985年に発売された改良形で、サウンドシステムが装着可能になった頃のモデルです。既に他銘柄の優れたライバルも出揃っていましたが、天賞堂製には何物にも代えられない風格が漂います。精密なディテールは当然、全てにおいて丁寧な仕上がりは、最高級ブランドの名に恥じない素晴らしいもので、もう貴金属の類と同等の価値があると言っても過言ではありません。
この個体は今は亡き伯父から引き継いだ物で、既に私の手元に来て10年近くになります。
1986年の正月、伯父宅に年始の挨拶に訪れた時『この前出た天賞堂のスワローエンゼルを買うて来てくれへんか!』と、いきなり10万円をポンと渡され、1週間後に大阪市内の有名模型に出向き購入。伯父宅にそのまま直行して持って行くと『これはええ買い物をしたわ!』と、伯父は目を細めて満足していました。
伯父はその時以来、ショーケースに収納して展示していましたが、付属のパーツも取り付けず、カプラーもケーディーカプラーは未装着で、私が買って来た時の姿のまま保存して来ました。そして10年前に伯父が亡くなってから暫くして、今度は私のショーケースにそのままの姿で並ぶ事になりました。
各パーツを取り付ければ更に見栄え良くなるのですが、購入した模型店も廃業してしまった事だし、1986年で時が止まった様なこの状態でも良いかなと思い、平成を超えて令和になった現在でも、19歳の私が買って伯父の家に持って来たあの日の姿で保存しています。
1985年発売 発売当時価格 73.000円