2012年にエブロから発売されたまさかのモデル、フジキャビンが今回のお題です。

フジキャビンは1955年のモーターショーでメトロ125の名でデビュー。後にフジキャビンに改名し23万円で市販されました。カテゴリーとしては軽自動車ですが、実態は3輪のキャビンスクーターと呼ばれる物で、ドイツのメッサーシュミット等と同じカテゴリーの乗り物と言えます。

この当時の軽自動車は、スバル360やスズライト以前の、とかく普通車のミニチュア版と言った貧乏くさい、情けない乗り物が殆どだったのですが、フジキャビンは丸味を帯びた、宇宙船の様な新しいスタイルで話題となりました。
そのボディはFRP製一体設計のモノコック構造で、まだまだ自動車のボディの素材として、利用される事が稀だった時代、かなり先進的な構造を採用していました。エンジンはガスデン製の空冷2スト121CCから、4.75PS/4750rPmを引き出していました。

しかし新しい外観とは裏腹に、操縦性や走行安定性は悪く、また空調は全く考慮されておらず、夏は暑く冬は寒い、本当に屋根があるだけのスクーターでした。ワイパーは装着されていましたが手動で、面倒な操縦をしながらの手動ワイパーの操作は困難を極め、特に夏の雨の日は大変だったと、想像に難しくありません。
最高速度は60km/hとされていましたが、実際に到達する迄に、相当時間が掛かったとの事で、本当に実用に使えたのか心配になります。また自慢のFRPのボディにクラックが入るクレームも聞かれる様になる等、よってクルマとしては残念ながら未熟であった事から、生産は85台で終わり、商業的には失敗に終わりました。

モデルは2012年にエブロから発売されたもので、まさかの製品化に驚いたものです。
スケールは無論1/43、実車が極小なので、可愛らしいさが強調されます。特徴的なスタイルをそのままスケールダウンした、素晴らしい仕上がりで、細かなディテールも完璧に再現した、流石現代のモデルと感心させられます。インテリアも窓から見る限り、十分な再現度と見えます。カラーはこのライトブルーとレッドがありましたが、やはりライトブルーの方がフジキャビンのイメージに近いと思います。

この個体は極最近入手した物で、格安の中古品を一撃で購入した物です。新発売当時から欲しかったのですが、それなりに高価なので購入に二の足を踏んでしまい、気がついたら市場から姿を消していました。しかし待った甲斐があり、新品当時の半額以下の価格で入手出来ました。

この手の乗り物としてはメジャーなフジキャビンですが、他からは出そうにも無いモデルなので、こうして製品化されただけても『ヨシ』としなければならない、貴重なモデルと言えましょう。

2012年11月発売 発売当時価格6.090円(税別価格)