5年生になった頃

母が優ちゃんの家でやっていた

内職を突然辞めると言い出しました


どんな事情で辞めたいのかわかりませんが

優ちゃん母に辞めると言いにくいらしく

辞める話をしに行くのに私について来いと言う


心細いとかではなく

母は優ちゃん母が子供の前では

嫌な態度を取れないだろうと考えたようだ 


母と2人きりの時の優ちゃん母の様子は

わかりませんが私は優ちゃん母が

嫌味を言ったり悪態をついたりしたのを

見た事がありません


むしろ母が私に悪態をつくのを見ると

母に気付かれないように宥めてくれてました




手土産を持った母に優ちゃん家に

連れて行かれました




突然辞めると言われた優ちゃん母は

困惑していましたが母は一方的に話をして

逃げるように優ちゃん家を後にしました



家に帰ると上機嫌の母


「やっぱりお前がいて良かった〜

 辞めるって言ったら

 ムスッと凄い顔したでしょ?

 だけどお前の前だからさ

 何も言えなかったんだよ

 すんなり辞められてスッキリした

 やっぱり連れてって良かったわ!」



誰だって突然辞めると言われたら困る

よほどの急病ややむを得ない事情ならともかく

自分の単なる都合や感情で

もう明日から来ないなんて


しかし母にはそれがわからない

どれだけ非常識なのかが

むしろ被害者のような態度なのです



上機嫌の母に凄い嫌悪感と

優ちゃん母が気の毒でならなかった



そして母に私が必要とされるのは

こんな時だけなのが

悲しいのと腹立たしいので

感情が処理出来なくなっていくのです





この頃から字が下手だと言う母の代わりに

書類などの記入をするようになりました


母の感情で一方的に怒鳴られ

無視されている時でも

何か記入しなければならないものが出来ると

手のひらを返したように猫撫で声で


「なな、もう怒ってないから安心して」


擦り寄ってきて


「ところで、ちょっとこれ書いて」


書き終わると


「助かったわ」


と去って行く






母の機嫌が悪い時に書かされると

書き終わった書類をまじまじと眺め


「お前さあ、習字習ってるのに字が汚いな

 ◯◯は(その都度変わる従姉妹達の名前)

 もっと上手に書くんだけどな!」



傷つくように吐き捨てる


じゃあ自分で書けよ!

都合のいい時ばかり擦り寄るな!

と心の中で叫びながら

「そう」

と返事をするのが精一杯でした