去年6月に ”Panasonic SL-PS700 再生不良の原因” で取り上げ、前々回もウチのエースとして紹介したが、また書く。

 

1990年の長岡鉄男 FMfanダイナミック大賞でAccuphase やLUXMANの超高級モデルを抑えて39,800円の廉価モデル SL-PS700 が大賞に選出されたことは有名だが、長岡鉄男云々はともかく実際に使用してみると、しっとり&繊細で音に華があり、広がりと奥行きは文句なし、品のある低音、スイングアームメカの優雅なトレイ開閉 ... あえてケチをつける点が見当たらない。

 

当時たくさん売れたせいかヤフオクやメルカリでのタマ数は多い。価格も再生不良ジャンクだと1,000円(+送料)~ と手を出しやすい。

 

と、さんざん褒めといて何だが。

 

SL-PS700 は買いか否か?   と問われれば、

 

答は   ” 否 ”

 

理由は、

① 再生不良ジャンクと言っても、レンズクリーニングとベルト交換で直る類ではなく、ピックアップ下にあるサーボ回路の電解コンデンサを交換しないと復活しない。しかもこの作業のためだけにハンダと10種類15個の電解コンデンサを用意するのは現実的ではなくハンダ付失敗の可能性も高い。

”正常動作品”もお薦めしない。現在は正常というだけであって電解コンデンサの容量抜け・液漏れにより御臨終間近なのは明らか。PS700, 840, 860を計25台修理してきたので状態は見なくても分かる。

では ”電解コンデンサ交換済”と謳っている出品物はどうか。ウソ偽りないなら”買い”だが、交換後画像もなく悪い評価が多い人、”処置済” や ”対策済” という言葉だけを鵜呑みにするのはリスクが高い。肝心なのは「交換した際に取り外した古いコンデンサをプレーヤーと一緒に送ってもらえますか」と質問すること。「すでに廃棄したので手元にありません」と返ってくるようじゃね … まあ、いろんな人がいますから...

 

② トレイ開閉とピックアップメカの上下動作を制御するスイッチ内部に生成されたカーボンを除去した出品物はほぼ皆無。しかしこれがなされていないとトレイが勝手に閉まったり等の症状が出てかなり厄介。

 

左:薄い銅板2,3枚を接触させる一般的なリーフタイプ

右:SL-PS700等スイングアーム用のリミットスイッチ

 

リミットスイッチの分解掃除をしていないとディスクをトレイに載っける直前、勝手に閉まってしまう。 ↓ あぁ~ やっちまったー

ディスクがガッチリ挟まって開閉ボタンが効かない。トレイと開口部に挟まっているので中のブリッジを外しても解決しない。

となると擦りキズが付くのを覚悟で引き抜くしかない。予想通りディスクにはしっかりと深いキズが入った。が、どうでもいいCDなのでここは不幸中の幸いw

 

予告なしに突然起こるから怖い。トレー開閉がぎこちなくなってベルト交換をする際はリミットスイッチの分解掃除とセットで行なうのが無難。

とは言っても ...

スイッチ内に付着したカーボンを無水エタノールを浸み込ませたベビー綿棒で除去し、また逆手順で元通りに組む。

と書けば簡単だが、

DのバネをEの球に乗せつつ、Dの矢印スイッチ板外側をEの矢印ガイド内側に入れ込んで押し込む。かなり厄介なので時間と根気のある方限定作業となる。しかも球は直径2mmと大変小さく、作業中ポロッと床に落とそうもんなら探し出すのは非常に困難w

 

 

CDプレイヤー好きの私は4台のアンプに2台のラインセレクターとを絡めて15台を稼働させている。古いのは1985年発売で最も新しいのは1992年発売モデル。価格は39,800円から18万円まで。さまざま入れ替えを繰り返しながら残っているお気に入りの15台の中でのエースが 39,800円のSL-PS700。

 

クラシック、ジャズなどを主に愛聴する人をも満足させるに十分な松下の廉価モデルだが、上述の通り電解コンデンサ交換とスイッチ掃除がされているものに限りのお薦めとなる。

 

1988年発売の SL-P555, 777, 999等はピックアップメカ下の電解コンデンサ交換必須。1991年以降の SL-P900, PS700, PS840, PS860はスイングアームなので、ピックアップメカ下の電解コンデンサ交換に加えてリミットスイッチ分解掃除が必須。

 

ということで、

とても魅力的なモデルながら、修理にこなれた人でもない限り、近くて遠い存在の SL-PS700 と言えそうだ。