8月24日からAmazonプライム会費が税込月額500→600円、年額4900→5900円に値上げされる。現行会員は9月24日以降、次の更新日に新価格が適用となる。

 

何から何まで値上がりしている最中、半分は便乗だろうと疑っても「ご理解いただけないなら解約していただいて結構」と返されるだろうから癪に障る。買い物ではいろいろ恩恵を受けているし映画も結構観るので仕方あるまいと泣き寝入り。

 

先日そのプライムビデオで今村昌平監督作品がいくつか公開されているのを見つけた。巨匠今村作品といえば「楢山節考」で、人間の生き様をキレイごとなど一切排除した作風に言葉を失い、日常生活での性を美化せずフタもしない生々しさに息を飲んだものだった。

 

現代と違って男も女も一皮むけば「好きもん」だった昭和以前の日本。姦通(既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係をもつこと)がフツーに横行していた。古来、お祭りといえば神社の裏林で好意を打ち明けて性交したり密かに夜這いの約束を取り付けるなど男と女が性を楽しむ場だった。また農作業の途中にこっそり抜け出して草むらで交わったりした結果、あちこちで夫のタネではない子が生まれる。だが子は宝。だから公然の秘密を分け隔てなく地域で見守り育てたその昔。

 

ま、それはともかくとして、

Amazonもやり方が上手いなあと感心しつつ1959年作品「にあんちゃん」を観た。ちなみに長男が「あんちゃん」で次男は2番目だから「にあんちゃん(にゃんちゃん)」。

 

他に、

⚫︎1963年「にっぽん昆虫記」左幸子、北村和夫

⚫︎1964年「赤い殺意」春川ますみ、露口茂、西村晃

⚫︎1966年「エロ事師たちより 人類学入門」小沢昭一、坂本スミ子

⚫︎1979年「復讐するは我にあり」緒形拳、倍賞美津子、小川真由美

⚫︎1983年「楢山節考」緒形拳、坂本スミ子、あき竹城

⚫︎1987年「女衒」緒形拳、倍賞美津子

⚫︎1989年「黒い雨」田中好子、北村和夫、市原悦子

⚫︎1997年「うなぎ」役所広司、清水美砂、柄本明

⚫︎1998年「カンゾー先生」柄本明、麻生久美子

 

上記は数多い今村作品の中でわずかながら私が観たものだが、

1989年「黒い雨」まで全てに出演しているのが殿山泰司(1915-1989年 73歳歿)。

 

言うまでもなく昭和の名優。五社協定とは無縁のフリーなので映画だけでも300本を数える超売れっ子俳優だった。どんなチョイ役であっても仕事に対する真摯な向き合い方が評価され、新藤兼人、内藤誠、小津安二郎、黒澤明、今村昌平、大島渚監督らに愛されたという。

 

また一方で、

無類の女好きである彼は大変な読書家でもあり、「殿山調」と評される軽妙なエッセイストとしても知られ、その文才と探求心と女好きを活かした「日本女地図/自然は、肉体にどんな影響を与えるのか」(1969年)はまさに名著である。

 

***** オレは、自然が人体にあたえる深い深い影響を独学でつきとめた。この本は、そうした40年間の研究成果の集大成である。出身地によるセックス診断として読まれてもよし、純粋性科学書として、はたまた結婚相手選択の参考書として読まれてもよし、全てはアナタの自由であります! *****

 

 

 

要は47都道府県の女性との性交で得た「アソコのあんべい(塩梅)」を学術的検証を織り交ぜて書き上げたエッセイ。北海道の女はアソコが剛毛、秋田の女はANAが小さく挿入後の感じは必ずしも良好ではない、静岡の女はなぜたっぷり濡れるのか、島根の女はなぜパイパンが多いのか、長崎の女はなぜ巾着なのか等々。

 

さらにそれぞれ地元での女性器の呼称も紹介されている。例えば岩手ではオ〇ンチョ。もちろん〇ではなくそのまんまの言葉で紹介されている。ご想像通り、〇の中は、アイウエオ順だと31番目に当たる。性交を北海道・青森では「へっぺ」と言うなど、現代では地元の若者は使わないであろう呼称が多く登場するので、各々地元の古き良き時代言葉を楽しめる意味では貴重な資料である。なお25歳まで津軽で生まれ育った66歳の私が保証します。たしかに「へっぺ」と言ってました。

 

余談だが私は1970年中学1年生でこの本を読了している。理解度は甚だ?だが。当時友人の家に遊びに行くと10歳上の兄の部屋にあるレコードプレーヤーで「いしだあゆみ/ブルー・ライト・ヨコハマ」や「ビー・ジーズ/アイ・オー・アイ・オー」や「レッド・ツェッペリン/移民の歌」など聴いたのが懐かしい。が、兄貴の本棚にあったこの本のタイトルを中1の好奇心旺盛なガキが見逃すはずはない。遊びに行くたびに少しずつ読んでいた。レコードよりこっちの方が楽しみだった。

 

第1章の北海道から第47章沖縄の女のアソコまで詳細に検証しているが、

↓で北海道から茨城県まで試し読みできるのでお好きな方は是非どうぞ!

 

 

役柄上、実際の性格・生活ぶりとは真逆の人間を演じるのも役者という職業だが、殿山泰司の場合は自ら女好きと称していて潔く正直な人だ。武勇伝?には事欠かないまさに昭和のおやじ。

 

1986年の滝田洋二郎監督・内田裕也脚本「コミック雑誌なんていらない!」を御存じの方も多いと思う。豊田商事の詐欺セールスおばさんに「おねえさん、胸大きいねぇ」と手を伸ばす殿山泰司のエロじじいぶりが地で行ってるようで正にハマリ役。いや、観る側にそう思わせる殿山泰司の演技が上手いのだろう。

 

 

エロおやじぶりばかり書いてきたが、「にあんちゃん」では、炭鉱夫の父親を亡くして残された四兄妹たちを仕事や生活面で支える正義感あふれる人情派近所のおじさんを演じている。

 

 

 

評論家田嶋陽子氏は「男にとって女は穴と袋」と言い放った。

それを言っちゃーお終いヨ。

じゃあ女にとって男は何なの? まさか竿と種だけじゃあるまい。

 

「日本女地図」を終わりまで読めば分かるが、これは女たちへの殿山流愛情表現であり、女がいて男がいる不思議で複雑で心地良い人間の営みの一端を描いている。

 

1969年という時代が書かせたとも言えるが、言葉狩りや同調圧力で委縮している現代人がぶっ飛びそうな、特に女性目線による「にっぽん男地図」なる勇気ある本の登場を期待したい。コミック本やゲームやスイーツを食うことばかりに夢中な若者ばっかりじゃあ無理か、今のニッポン。