半世紀に渡るオーディオ愛好歴(ブランクも長いが)の中で身の丈に合わない買い物をしたり、やたらと取っ替え引っ替えもした。しかし分かったことは評論家やマニアが語る御託ではなく自分が本当に好きな音・顔。ドライではなくウェット、透明感・清涼感より押し寄せる重量感、しょうゆ顔よりソース顔、清潔感より汗臭さ、若い頃より今の薬師丸ひろ子(← 関係ないな)

 

オーディオは「部屋を聴く」と言われるくらい機器以上にその環境が音を左右するという。が、例えば我が家のオーディオルーム(オーディオ機器がある部屋というだけの意味)は、真四角の8畳和室、襖あり、ガラス戸あり、天井はペラペラの化粧板。大量のレコード、CD、床には工具や修理用部品などゴロゴロしていてまともに歩くスペース無し。

 

だから、音響工学に基づいたリスニングルームで聴いてますなんて人は私に関わらないでもらいたい (以前、高級外車を買える位の費用をかけて専用ルームを作ったという人に長文コメントを何本もされて辟易したことがある)

 

 

スピーカーだらけの「部屋」がウチの音だ。これで好きな音楽を聴き分けている。この中で一番の新入りはデカJBLにちょこんと乗っかっている ONKYO D-202AⅡLTD。と言ってもこれは 16cmウーファーの2way 幅205x高さ333x奥行きはなんと318mm 重量11kg。決してミニではない。D-102, D-202シリーズはどれも人気者で実力者だがウチでは中低音に厚みがあって重低音を出せるのが条件なので D-202AⅡLTDでなければならない。中古を買ってボロボロエッジを交換した。

 

同時期に買ったサンスイ S-α7(ボロエッジは交換した) も2way16.5cmウーファー10kgの重量級。音質はびっくりするほどさわやか清涼系の三ツ矢サイダー。 そして気品にあふれた顔。手放したくなかったが、豊かな低音で壁を震わすタイプではないのでマンション暮らしの長男の住環境でこそ活かされるかなと思って、あげたw

 

ウチで唯一の穏やか系は画像中央下の英国スペンドール。

どんな性格のアンプ、プレーヤーでもこれにかかると透明かつやさしく深みのある音になる。「手嶌葵/テルーの唄」を聴くと心が洗われる。

 

オーディオは「部屋を聴く」どころか、ウチでは強引にスピーカーにものを言わせている。やっぱりオーディオの肝はスピーカーでしょ。いい音楽が五臓六腑に染み渡るのも耳~脳~体を反応させるある意味官能的なスピーカーあってこそ。

 

20代前半、私や友人達の多くはパイオニアの30cmウーファー・スピーカーで70年代ロックをバカスカ鳴らしていたのだが、一人だけ我が道を行く静かなる男がいた。

 

アンプはサンスイ AU-D907F Extra

スピーカーはJBL 4311WXA

レコードプレーヤーは ???

明らかに他の友人達より数ランク上をいっている。

 

彼はこれで、サード・ワールド(レゲエ)を中低音の厚みなく乾いたパーカッションをヤケにパンパン弾けさせていたし、ゴドレー&クレーム(10ccから分裂した2人)は妙に無味乾燥なシンセを部屋中に充満させていた。

 

サード・ワールドは好きだがそんな音で聴くのは初めてだったのでちょっとびっくりした。絶望的な貧困生活の中にも明日への希望だけは失わないジャマイカ人の笑い声・怒り・汗などがレゲエには含まれている。ティンバルの弾ける音だけでは薄っぺら過ぎる。

 

4311の後継機4312も低音が弱いと多く語られているが、デザインが抜群にカッコいいだけに、肩透かしを食らった感。JBLにもこういうスピーカーがあるんだなぁと思った。 

 

ところが、その友人に連れられて彼の先輩が住む木造ボロアパートに遊びに行った時のこと。

汚ねえ四畳半はLPレコードぎっしりで床が抜けそうだったが、それ以上に度肝を抜かれたのが、A5だかA7だかは知らないがアルテックのバカでかいスピーカー。

アルテックですよ、四畳半に。

スピーカーと耳の距離は1m未満という大胆さは音響云々関係ねー って感じ。デイヴ・メイソンをガンガン鳴らしている様は正に昭和。

 

やっぱ、スピーカーはデカくないと・・・(ヒヨコはそう思った)

あくまで良き70年代の話である。いま同じことをやったら警察が飛んでくる。

 

しかも今は小さくても個性豊かなスピーカーがいっぱいある。大してオーディオに興味のない男でも30cmウーファー3wayスピーカーをフツーに買った時代ではないのだ。

 

が、正しい音(?)を聴くための環境整備よりも、雑多な狭い部屋で好きな音楽をガンガン鳴らすことが肌に合っているのでどうにもならない。音なんかどうでもいい・・・とは言わないがw 

 

ボッボッボッボッとアイドリングだけでもド迫力ハーレーのあちこちのネジが振動で緩むように、古い木造平屋建はJBLが吠える度にどこかが緩んだり傾いたりしていることだろう。この歳になって得られた最大の幸せは田舎に移住したことによって、デカJBLを誰に気兼ねすることなく吠えさせられること。近所に家はあるけれど住宅密集地とは全く異なる。田畑ばかりが目立つ。散歩中にキョン(鹿の一種)、ハクビシンをよく見掛ける。猿やイノシシに遭遇したこともある。毎年春になるとスズメが我が家の軒で子を産んで育て、美しいキジが庭を闊歩する。

 

まあ、そんな環境なのでデカい音を出せる贅沢を満喫している。

一方で、以前メルカリで知り合った京都の50代独身男性は、集合住宅に住み、ステレオ部屋の隣りには高齢の親が床に伏しており、さらにちょっとでも音を大きめに出すやすぐさま階下の住人からクレームが付く、といった具合。だから大好きなナンノちゃん(たぶん南野陽子のことだろうと推察する)などはヘッドホンで大きな音で聴くのだそうだ。みなさん好きな音楽を楽しむために御苦労されておられるんだなあと頭が下がる。

 

乱文はさらに続く