もうずいぶん前になるが、

CDプレーヤーの安値ジャンク品を素人修理して遊んでいて、好みの音に出会い大感激したことがある。

 

PIONEER PD-6070

1987年発売 42,800円 DACはPCM56Pが1個

 

ヤフオクでは相変わらず人気が低く、相場は100~1000円(通電確認のみ・リモコンなし・送料別)位。当時、ちょちょっと弄ったら少しの間だけ正常動作したがしばらくして修復不可能な遠い人となってしまった。しかし束の間のその音が衝撃的だった。音の原風景とでも言おうか、いわゆるオーディオに詳しいお方が耳を留めるようなものではなく、解像度云々で語るならばお話にならないレベルなのだろうが私にとって最高に心地良いものだった。

 

あの音をもう一度とばかりにジャンクのPD-6070を再度落札してみた。が、ディスクを入れても反応なし。よく見るとそもそもレンズがない。パイオニアの持病で有名なピックアップレンズの脱落だ。本体を傾けると基板の下からコロコロと転がって出てきた。瞬間接着剤でくっつけると再生したが音飛びがひどい。修復すべく素人ながらに出来ること全てやってみたが敗北。

 

お恥ずかしい話をひとつ。

↓はピックアップとメイン基板を結ぶフラットケーブルで、中央にVRが付いている。いろいろ弄って直らない場合、最後の手段としてここをほんの少しずつ回しながら様子を窺う。当然、小さなマイナスドライバーを使って根気よく作業を進めるべきところ、しばらく試行してなかなか思わしい結果が出ずイライラした私はペンチで挟んで回した・・・ポロッと取れた。はい終了。笑い話にもなりません。なんという愚かな行為。

 

私のような大バカ者が言うのも憚れるが、

この頃のパイオニアのメカは単純が複雑に絡み合っていて素人が扱うには少々手強い。

 

だが、はっきりと分かったことがある。

その人にとっての良い音とか心地良い音というのは、生まれ持った感性や記憶と無縁ではなく、つまり十人が十人、百人が百人、異なるということ。これが良い音なんですよと他人様から教えてもらう類ではないということ。

 

形や匂いのない「音」を売るためにメーカーはありとあらゆる言葉と見た目でユーザーの心を擽ってきた。

 

レンズ製造や半導体などの技術的進歩を「音」の進化にすり替え、音響工学上の数値で「良い音」や「正しい音」を決めつけた。

 

早い話が「高額商品 = 良い音」と洗脳させる戦略だけの売り手と、それを買える所有者の優越感だけで成り立っている不思議な業界なのだ。

 

天板を開けたら中がスカスカでがっかりした・・・などと宣う輩がいい例だろう。基板に電子部品がぎっしり詰まっていれば「おお~、素晴らしい!」と満足するお方を憐れむ。アンプのツマミがプラスチックではなくアルミ削り出しだから何だというのか。重さが10kgを超えるCDプレーヤーがそれほど偉いのか。オーディオショップの試聴室で聴いた音が良かったからと同じ機器を自宅の6畳和室に持ち込んだところで何になる。

 

CDプレーヤーはPD-6070があれば事足りるのだが残念ながら2台共良縁に恵まれなかったので翌年発売された同クラスのPD-515に来ていただいた。

 

つづく。